卒業・・・そして“ギルド”登録へ
卒業式の内容はかなりぶっ飛ばしてました。
4年間通った学び舎から次々に卒業生達が旅立って行く。一旦“寮”に戻って荷物を纏める者、“都会”の自家へと帰って行く者等様々だ。
卒業式の内容に関してちょっと触れておくと彼女の前世知識のそれとそんなに変わらなかった。校歌に当たる物が無いので校歌斉唱は無いし国旗掲揚とかも無い。長ったらしい学園長の訓示はあったけど。
違う事と言えば卒業証書を一人一人手渡す際に“魔力カード”を出してカードにも記録を写して証書と共に受け取るという作業が追加されている程度だった。
狐耳の少女の場合、纏めた荷物の大半は既に“村”のミラさん家へと一旦預けたかったのだが、元々少ないのも手伝って現在は“都会”に予約した宿の部屋に置いてある。
防犯上荷物を宿屋の部屋に置きっぱなしなのは余り薦められないが背に腹は代えられない。後で倉庫でも借りるか“無限箱”みたいな物のが無いか探す心算ではある。
例の竜の卵は常時温めていなくても平気そうだが抱えて歩くのもなんなので荷物と一緒に部屋でお留守番中。一応偽装はしてあるので卵があるとは気付かれないだろうが、かなりヒヤヒヤものではある。
いっその事専用の卵フォルダーでも造ってお腹にでも抱えて移動出来る様にするしかないのかも知れないな。と思いながらも少女は今日の目的地へと向かう事にする。
その“ギルド”は利便性も兼ねて“学校”の直ぐ近くに居を構えている。隣接して建っていないのは余りも近いと土地の価格が上がるからとか裏で癒着してるのではないかと疑われるの防ぐ為とも囁かれていたりするが、そんな事は彼女には関係ないのでこの際置いておくとしよう。
因みに“学校”の生徒の一人として良く“ギルド”を利用していた彼女にとって“ギルド”の1Fは既に見慣れた物となっている。
基本的な構造は“街”に在った“詰め所”とそんなに変わらない。入って直ぐの壁には様々な“クエスト”の書かれた紙が貼り付けられているし、受付けの横にはちょっとした休憩所を兼ねた控えがあったりして貼られている“クエスト”を観に来たり報告をした後の一息を付いている者や持ち込んだ“素材”の鑑定を待つ者等が居る。
一見普通の“クエスト”請負人達ばかりに観えるが、中には“新人潰し”やらを見慣れぬ者に仕掛ける者も普通にいたりするので一般人が“クエスト”や“ギルド”登録をする場合には注意が必要だったりする。
様々な人々が入れ替わり現れたりする機会の多い“都会”では人前では滅多に仕掛けるタイプのはいないが、裏で妨害工作等を仕掛けてくるのが完全にいない訳ではない。
だが“学生”ともなれば“ギルド”に入って来た時点で彼らは寄ってはこようともしない。予めここに事は通知されているし、初回訪問は必ず先生同伴だからだ。
顔は覚え切れなくても雰囲気なんかは直ぐに分かるだろうしワザワザ向かっていっても“ギルド”の職員に警告されるし聞かなければ直ぐに排除されてしまうだろう。
それでも卒業直後で気の緩みきっている元学生相手に突っ掛かる者が出ない訳でもない。“都会”で受けれる“クエスト”も無限では無いし気軽に移住出来る程の余裕のある者ばかりという訳でもないからだ。
だが、受付で元学生が出す“魔力カード”に関する受付の対応やらで彼らが絡める者であるかどうかが判断出来ない程切羽詰っている者はこの“都会”にはまず居ない。
よって聞き耳を立ててなくても聞こえてくる狐耳の少女と受付嬢との和気藹々とした語り合いの様子でうっかり絡める相手では無いと判断した者はまず幸運であったと云えるだろう。
例え絡んだ相手が格下であったとしてもギルド職員と仲のいい者等に下手に絡んだらどうなるかは自明の理であるのだから。
ギルド受付にやって来ました。お約束なフラグは旗から叩き折る方向で。




