名付けの刻
ようやくにして主人公?に“名前”が付きました。
“狐耳”の少女は今まさにある重大な“問題”を目の前に頭を抱えて悩んでいた。
彼女を大いに悩ませているその“問題”の正体とは、“学校”の試験問題ではなく、渡された書類に書く自分の『名前欄』の事だった。彼女には未だ『名前』が付けられていなかったのだ。彼女にも一応あだ名位はあるにはあった。『焦げ耳』とか『ミラさんちの娘』とか兎に角そんな程度だったけど。
別に保護者たるミラさんが嫌がらせで“名前”を付けなかった訳でも与えられた役が忙しかったからとかいう訳では無い。唯単に今まで『正式な“名前”を付けてそれで呼ぶ。』場面に出くわさなかっただけ。
普通に暮しているだけなら『○x村に住んでいて何をやっている○×である』等といった具合にワザワザ名乗る場面なんぞ滅多に無いのがこの“世界”の“常識”だったから。
だが“名前”はこの“学校”に通おうとする者にとってみて“それ”は決して避けて通れない難関の一つであった。何故ならここで名前欄に書く“名前”は今後一生付いて回るからだ。無論、中には別名でギルドに登録している者も居ない訳では無い。だがそれでも公式に記録される“名前”の一つである以上はそれを気軽にほいほいと替えれる訳ではなかった。だからこそ書く“名前”は慎重に選ばなければならない。
だがそれが故に彼女は大いに悩む結果となっていた。ミラさんやミリーやマリーが“村”に居た時点で“名前”を持っていたりするのは何かの“職”やらに就く事等を“前提”としているからだったが彼女はそれが無い。せいぜい『村娘A』位でしかない者にいきなり“名前”を自分で考えて付けろというのだから大いに悩むのも無理は無かった。
「・・・弱った。自分の“名前”どうしよう。“あだ名”で今後通すのも何かアレだし、書類に書いちゃった後は変更の手続きとかかなり面倒なんだっけ?・・・今からミラさんトコ帰る余裕も無いしなぁ。」
彼女の引き取り手であるミラさんから“名前”が付けて貰えてないという事は、逆に言えば自分で自分の名前を考えて良いという“お墨付き”を貰っているという事ではあるのだが、彼女自身はその“実行”の“許可”に関してはミラさん自身から教えて貰ってはいない。以前ミラさんらが何か忘れている気がしていたのはその事だったりするのであった。
-本当に『自分で勝手に付けてしまっていい』のかどうか。-
『ええぃ。ままよ!ミラさんには後で報告する!!私の“名前”は。こうだっっ!!!!』
それこそ一大決心をした彼女は覚悟を決めて名前欄に自分の名乗るべき“名前”を書き始めた。
『フォーレスタ:ミセェリナード』。それがこの“世界”での彼女の“名前”。
主人公なのに『名無し』だったのを逆手に取ってこんな事にorz 名前はもっといいのが浮かんだら変更する事になると思います。




