遇えざる者達
支援の仕方にもいろいろあるという事で
何時よりも騒々しい空気が漂う“街”を背にひっそりと目的地に先行する幾多の“影”があった。
良く観るとその影には“けも耳”があったり“人”だったりするが、彼らは“魔物”にすら気取られない様に急速に速度を上げつつまるで蜘蛛の子を散らす様に草むらの中に消えていく。
私も出来うる限り気配を消しつつ≪危険感知≫をフルに利用して小走りに草むらの間を走る。2足でなんて言っていられないから手も使っての機動力重視の隠密行。ガヴリンの“巣”近くまではそんな事しなくても良さそうな気もするんだけど、向こうも結構敏感になってるからこの方が効率が良いんだとか。
詰め所で「ガヴリン退治とか」って聞いた時はてっきりソロで戦う“クエスト”なのかな?と思ったんだけど、「とか」が付いた時点でそれ以外の意味も含まれてる事に気付くべきでした。まぁ受けたんだけどね。
私の役目は要するに戦闘の際の裏方の人達の支援。何段階かあるんだけど、まずは“露払い”役のヒトの支援をする。〝露払い”のヒトは本体たる討伐隊よりも先行して現地に行きマッピング。最低限何処に何があるのか把握して罠があればその位置を網羅しつつ本体たる討伐隊が現地に着くまでの時間稼ぎや救護班の集合地点の陣取りとかをしなきゃいけないそうなんだけど、私はそういう係の人の集めた情報を受けとりつつ彼らへの回復薬等を補給する係りとして一定の区間を走り回らなきゃならないという。・・・因みに見つけた〝罠”やガヴリンの〝見張り”は基本放置。避けては走り避けては走り。避けるのは面倒だけどうっかり引っ掛かったりしてたら迷惑だし作戦も元の木阿弥だしね。
そうこうする内にちらほら先発の人達が〝村”に到着しだしたみたい。討伐隊に合流する前に情報収集をしたいヒトや先走って暴走しそうなヒト等の対応は村人に任せておくしかないんだけど、それでも先走るヒトもいるので彼らの行動も逆に利用する。こっちも全てを把握出来る訳じゃないから例え捜索範囲外で〝罠”に掛かろうがそれはこちらの責任じゃないしね。先走り過ぎてぶっ倒れた人をこっそり回収するのも私らの役目だったりw。まぁ流石にソロで“巣”を攻略しちゃう様なLV高い空気読めないヒトなんかは出なかった。出たら出たでこっちは楽なんだけどね。
「よーし、全体止まれ!ここでもう一度討伐に参加する者を募集する!!」
そうこうしてる内に本隊たる“討伐隊”が“村”に到着し改めて参加を募集してる様だね。こういう場合は討伐隊ですら囮としてこちらは配置し直された罠の位置や今回の敵の行動パターンの変化を見守り随時報告していくスタイルを採る。無論この“クエスト”が終了するまで私ら支援は“村”には正面からは入れない。交代で“村”にひっそりと入り補給をしたりしたらまた外で巡回しつつの見張り役支援をする。
今日の所は討伐隊も村にお泊りの様だね。ガヴリン達が果たしてどう出るのか・・・。
戦闘シーン期待した人は肩透かしだったかも。次はもう少し踏み込めるかな?




