見極める為に
集会所に集まった裏方支援職の卵達。獣人から“けも耳”や“人”といった具合に様々な種族が集い、各々がこれから配属される現場を想像しつつ次なる号令を固唾を呑んで待っている。ここに集まってから既に“街”の取り締まり役の挨拶は終わっている。各店の代表者達の紹介も終わった。だがこの時点では誰がどこにどう配置されるのかすら分かっていないのだから不安にもなろう。希望している所に配置されれば良いが全然別な所へ配置されるかも知れないのだから。自分では合ってないと思ってても雇い主がそうは思わなければ配属されて行ってみない事には仕方が無い。
「えー。それでは、これから皆さんには班編成を行って頂きます。今身近に居るヒト同士で4人ずつ固まって下さい。」どうやらいきなり個々にどこそこへ行けという配置命令ではない事にやや安心しつつ大体が知り合い同士で班を作っていく。「班が出来ましたね?では発表します。これよりAからC班は“お試しの迷宮”、D班からF班は“街”に仮配属となります。」余りにも大まか過ぎる配属方法に顔をしかめる者、狙っていた配属先にいけそうで目を輝かせる者等悲喜交々な反応をする者達。あからさまに不満の声を上げる者もいた様であるが「ゴホン!・・・これはあくまでも仮配属です!!ある程度仕事に慣れたら配置を逆にしますのでご心配なく!!」という解説に押し黙る。要するに両方の仕事をやらせた上で適性な方に改めて配属させるという方法を採っているという事だ。まだ狙っている所への道が閉ざされた訳では無い。
「それではA班からC班は“お試しの迷宮”に移動して下さい。D班からF班はこれから“街”の中の各店舗の業務内容と配置について移動しつつ改めて説明します。尚、就業用の“魔力カード”については各自仮配置後に配布しますので今暫く配布をお待ち下さい。」
ぞろぞろと雛のごとく大きく分けて2班に分かれて外に出て行く彼らの後ろ姿を“街”の取り締まり役が見送る。この中に果たして使い物になりえる者達がどれ位居るのかは彼にもまだ分からない。種族によっては外見や特徴で好まれやすい者もいるだろう。そういう意味では“うさ耳”や“ねこ耳”等が顕著な例だが需要と要求される能力が必ずしも一致するとは限らない。だからこそこの“街”では入れ替え制を採用している。
今回の例で言えば大きく分けた2班も時々その中で配置先を入れ替えて様子を観る仕組みだ。誰が何処でどういう風に働けるのかを観る為の仕組みではあるが、それでも時には配置された側からの色仕掛けや賄賂等といった裏取引や配置する所での囲い込みといった様な裏工作が飛び交う事もありえるだけに監視の目を付ける事も忘れぬ様にしなければならない。“都会”からも能力の高い者の引き抜きをしにくる者が居たりするのだ。流石に乱暴ざたは無いが用心に越した事は無い。
そういう意味では準“旅人”になった子も気に掛かけなければならない。このまま“街”に居付いてくれるかどうかまでは流石に強制出来ないものの“街”の貴重な“戦力”の一人である事には違いないからだ。
ちょっと毛色の変わった“犬耳”の女の子。彼女の成長もまた影ながら見守らなくては。
“街”を維持する方法としてはこういうのもありだとは思う。




