とある受付嬢の不満
“顔”である以上は素気無くする訳にもいかないでしょうしね。
今日も今日とて詰め所にはいろんな人達がやってくる。文句を言うためだけに来るヒト。受付に居るのを確認するだけのヒトから告白紛いの事をするヒトや“クエスト”を受けに来るヒト等様々だ。時にはトラブルが持ち込まれる事もあるがそうそう代わりは無い。せいぜい落し物とか迷子とか程度ね。“迷宮”のトラブルは“迷宮”で処理されるので滅多な事が無い限りはこちらには回ってくる事はないし。今日の予定では山合いの村から準“旅人”候補の子が1人やって来る事になってるからその手続きをするのが何時もと違う点位かな。
“旅人”にもいろいろ居てただ単に己の腕で生きていく為だけに各地を転々とする者やどこかの有名所や富豪やらの庇護を目指す者等その目的もまた多種多様だ。その子も多分そういった類いの目標を目指すのであろう。女性という事だったが古今とりたて珍しい事でも無い。ただ単に今回はこの“街”に関わる仕事に直接就かないという選択肢の一つを選んだだけ。合わなければ合わないでこの“街”を去って元の村に戻るか、はたまた別な所へ行くかこの“街”の住人として溶け込けむかすれば良いだけの話なのだから。
そうこうする内に詰め所に“犬耳”の獣人の女の子が詰め所に入って来た。事前の情報通りちょっと変わった毛色の子だから多分あの子で間違い無いだろう。きょろきょろ誰か探してるみたいだったが居ないのを確かめるとこちらにやって来た。山合いの村から来たのね?と声を掛けたらちょっと驚いてた。別に彼女の顔を知ってた訳ではない。これも相手の反応を観る手法の一つ。・・・伊達に受付やってませんよ?
反応の仕方で嘘を付いてるかどうかを判断出来る様訓練受けてるし。まあそれでも判断出来ない場合に備えて受け取った紹介状を“鑑定石”の上に置く。世間には知られてはいないがこの紹介状を誰か別なヒトが使ったとしても判定は“赤”。委任された形なら“黄色”となる。今回は青く光ったので本人である事は間違いない。確認した旨を伝えて注意事項に付いて説明すると後方にある部屋への入り口を指差すと、何故か恐々と扉を開いて中を覗いていたので多分別な部屋への扉を開けたヒトの話を誰かから伝え聞いているのだろう事も伺える。大丈夫よ?“ギルド”に放り込む訳でもなし、ここじゃいきなり実戦とか無いから。
では、今回はこの私めが特別に説明をばしてあげましょうかしらね。詰め所で暇そうにしてた人に受付を一時押し付けるとさっきの子用の“魔力カード”を持って部屋へと入っていく。
注意事項の説明といっても比較的簡単な物ね。ただ“貢献度”によるポイントがそのままでは“都会”の“ギルド”のポイントと共用出来ないという説明を聞いて“ギルド”に関心を持った様だけど、ほんとこの制度はどうにかならないのかと思う。何が不満なのか知らないけど、一々“都会”の“ギルド”に行ってから向こうで“魔力カード”を書き換えた上でさらにこの“街”で書き込みしてからでないとポイントの共有が出来ない仕組みにされているのよね。しかも書き換えで徴収したお金の8割は“都会”の“ギルド”が回収してるんだとか。まったく、どんだけがめついのよ。
後は地図渡して宿の場所を教えてあげたり“街”の店舗の位置とか教えてあげたり“魔力カード”を渡して説明は終了。名前を教えても良かったけどまだ“クエスト”やこの“街”に慣れてからという事で今は止めて置く。“クエスト”始めたばかりでえこ贔屓してると誤解されるのはお互い良くないから。
さぁ、これでまた受付に戻らなきゃ。「これからどうぞ宜しくね。また受付で会いましょう。」
にこやかな営業スマイルも決まり私しはその子を送り出すとすました顔で彼女を見送った。
あの子の尻尾モフりたかったな・・・。
次回はこの“街”の“クエスト”に少しは触れられるかな?




