ローテーションは大事
裏方さん視点とでも言うべきか
なんか“ふっとばし基”の方で一騒動あったらしい。うっかりしてて補充役やってた子どもの一人を補充品代りに空き宝箱にふっとばしちまったんだとか聞いた。
おいおい、確かに宝箱の中には魔物が擬態した宝箱とか魔物を召還する機能が付いたのとかもあるんだろうけどさ、“お試しの迷宮”でそれモドキ再現しちゃ駄目だろう。
本物だったら一つ間違えれば宝箱開けたのが死ぬぞ?今回は別な意味で死に掛けた奴は出たがな。
まぁ幸いにも“迷宮”の利用者じゃなくて子どもふっとばした原因の奴だけだったからまだマシか。
とりあえず子ども送っちまった宝箱開けたパーティーには申し訳無いが子ども連れて迷宮出て貰った。
お詫びの品も一応説明文と一緒にふっとばして置いたけど、出迎えた時に適正レベル以上の“宝箱”開けた経験を積んだと思ってくれって言ってなんとかお詫び倒した結果笑って帰っていかれた様で良かったよ。
迷宮の出口に掛け付けた世話役の娘に抱き上げられたその子と合流した仲間の子達もその後全員機嫌よく空いた荷車に載せられ帰って行ったしな。夜になる前位には“村”にちゃんと着くだろう。
因みに“薬草”や“毒草”等と云った“素材”は別に一つの“村”からだけ搬入している訳ではない。偏った採り過ぎは不味いから何箇所かの“村”で順番と期間を設けて納入して貰っている。一箇所で纏めて魔法を使って速成栽培するなんて方法も無くはないが、効率や予算や設備の維持管理だなんてものはやはり“村”単位でもないと長期の安定供給は不可能に近い。そういう意味でも一つとはいえ“村”の住人の臍を曲げられるのはかなり痛い。どんな理由であれ後腐れが無いに越した事はないのだ。
「すいません・・・そろそろ回復魔法とか・・・掛けてくらはぃ・・・」と脚の斜め下辺りで情けない声が聞こえて来たが元凶にはまだその所業を許すとまでは言ってやってない。そもそも昼間なんてポカやった挙句に例の世話役の娘に体術みたいなもの喰らいまくって悶えてただけじゃないか。
裏方やってる様な連中は普段から身体鍛えてるのと一緒なんだ。本格的な技でもない素人の技なんてまともなダメージ入る訳なんて無いのはちゃんと分かってんだよ。そいつの身体のダメージの大半は周りにいた男連中のからのものだ。目の前で年頃に近い女の子と組んず解れずなんて羨ましいご褒美見せ付けられた事に付いての罰なんだぞ?少し位は痛みを我慢しろよ。
あ。いい事思い付いた。そこまで回復してくれって言うんなら、“魔法”をわざわざ使う事も無い。“薬草”をたっぷりとその身体の傷口に摺りこんでやろうじゃないか。なんだよそんな嫌そうな顔をして。回復する事には違いないんだからいいじゃないか。
優しく塗りこんでやるとまでは言ってないけどな!
その日夕方近くに“迷宮”に挑んでいた者達は何処からともなく聞こえてくる悲鳴や怒号を特に気にする事は無かったという。どうせどっかで誰かがトラップとかに引っ掛かってるとか位にしか思わずに。
「ひぃぃぃ。お助けをーー!?」「まだまだー!!」「ぎょぇぇぇえっ!?」
今日も“街”の夕暮れは平和理に紅く染まっていくのだった。
「変ねぇ・・・私の技そんなに効いてたのかしら?なんか受けてたダメージが結構大きかった気が。」
一方その頃“村”の家の自室で世話役の娘ミラは“迷宮”からの引き上げ時に垣間見た自分が技を掛けた相手の怪我の様子に首を捻っていた。「・・・ま、いいか。大事には至って無かったみたいだし。」
ミラさんがやってたのは卍固めとかそういう身体密着型の奴って事でここは一つ