箱入り狐
裏方にはこんな作業もきっとある!?
どうしてこうなった・・・。
目の前にはびっくりして固まってる“旅人"さん達のパーティーが居たりしてます。目の前の宝箱開けたら中からいきなし狐耳な子が出てくりゃ固まるよねー。別にふざけて宝箱の中に居た訳じゃぁないのよ。宝箱の正式な中身って訳でもないし、宝箱に入って寝てた訳でもないんです。
「すいません、私、“誤配”なんです。」とパーティーの方々に一応謝っておく。
ついさっきまでミラさんに連れられて皆と一緒に“お試しの迷宮”の裏側見学ついでに“宝箱”の中身補充のお手伝いって奴をやってたんだよね。
・・・例の“ぶっとばし基”とやらで。
どういうカラクリになってるのかは良く分からないけど、ここの“迷宮”じゃその“ぶっとばし基”で宝箱の中身を補充してるんだって。前世知識を引用すると“『エアシューター』”だかって物が近いみたいで投入口に発送したい物入れてボタンを押すと壁の中とかに設置された管を通って空になった宝箱の中に自動的に配達されて補充されるんだとか。ボタン押すと補充品が管の中にふっ飛んでく様子を観るのはあれはあれで何か面白かったので良しとしましょう。
で、なんで私が“誤配”されちゃったかというと、皆それぞれ“薬草”とかちょっとした“武器”や“防具”やらを“ぶっとばし基”の投入口に入れるだけの簡単な作業のお手伝いをしてる時にたまたま“補充品”を持って来た人がつんのめってドミノ式に補充品が煮崩れを起こし、私が投入口に押し込まれたのとほぼ同時にスイッチ押されちゃったと。その結果私が“補充品”の代りに空の宝箱の中に出現したと言う訳で。
いやーどうしましょこの気まずい雰囲気。因みに私の腰に付いてる筈の紐はふっ飛ばされた際に途中でぶち切れちゃった状態。ミラさんや仲間までふっとばされて来なくて良かった。のかな?
とりあえず“宝箱”に中身の回収機能があるのかまでは私は知らないので、宝箱の外に出てどうしようかパーティーの方々と一緒に頭を捻ってると宝箱の蓋がパクンと閉じてゴトガタ箱が揺れてたかと思うと今度は自動で蓋が開いた。そんな機能もあるんだ。
中を覗くと何やら一杯詰まった袋と紙が一枚入っててパーティーのリーダーらしきヒトがそれ回収して読んでため息付くと私に紙に書いてある内容を教えてくれた。私の“共通語”レベルじゃまだ読めない部分があるし代りに読んで貰えると助かるよ。やっぱ“宝箱”には回収機能は無いらしくて“迷宮”の進ませ具合によっては引き返すかクリアする位しか脱出方法は無いらしい。メンテナンス用の隠し通路もあるんだろうけど今回の様なケースじゃ使えないと思う。“迷宮”を運営する側にとってはそうそう利用者には教えられない類いの機密事項の一つだろうし。
ただ運がいいのか悪いのかここはけっこー終点の方に近いらしくてそのまんまパーティーにくっ付いて一緒に出口まで行けばいいんだとか。最も今回は特別に残ってる仕掛けを全部止めてくれるらしいので最後の試練とかいうのもひっくるめて全部パス。その代りこのパーティーの人達の“訓練”には目標としていた経験地の不足になるとかでまた“迷宮”の攻略をやり直ししなきゃ。とか嘆かれてたけど、袋の中身はその補填の品だそうだから一応損はしてないとは思う。
とっとと“迷宮”クリアしちゃいましょって事であっというまに地上に戻って来れたよー。
予想以上にドタバタしちゃったみたいだけど今日の社会見学はひとまずこれまで。仲間と一緒に“村”に帰る荷車の背に載せられてえっちらおっちら帰る事に。夕日は綺麗だったけど振動でお尻痛くなっちゃった。
“ぶっとばし基”の正体を街と街とかの移動用ポータルみたいな物にするかどうしようか迷いましたが時期早々と判断し“迷宮”ネタを出したついでという事で用途を補充用機構に仕様変更してみました。