-世界の片隅で-
テンプレなVRMMO転生物です。VR要素は低め
-VR-それは全世界に席巻する究極の仮想現実異世界体験機。ある者は魔法を。またある者は現実の兵器を携え異世界で縦横無人に駆け巡る。急速に発達するそれはやがて日常世界を巻き込み働き方さえ変えていく。現実にログアウトし現実世界で働く事の方が珍しい位になるまでに。
そんな日本の片隅で一人の青年が今VRの世界に初デビューしようとしていた。これから何が起こるかも知らずに。VRが起動し青年が設定画面とにらめっこしていた頃。VRを統括する巨大コンピューターはその巨大なプログラムを整理する為の定期デフラグを行おうとしていた。無論デフラグをする為のスペースは余裕であるし、管理者達も特に気にする事無く管理室で各々に割り振られた仕事を行っている。ある現象が大気圏外で発生するまでは。
管理室に警報が鳴り響く。一週間前程予報されていた太陽フレアによる電子嵐の到達による電磁気の乱れが予想よりも大きかったのだ。管理者達はあわてる事なく回路やプログラムのチェックを行っていく。予め余裕を持たせてある以上は混乱は最小限に抑えられる事は分かっているのだ。だが、一人の管理者の目の前のディスプレイに浮かんだ小さな警告表示はその作業により見過ごされてしまった。
結局、青年は誰に見取られる事無く、この世を去った。
装着していたVRマシンが暴走し彼の脳に負荷をかけ過ぎてしまった事等は無論死んだ彼を発見した大家や家族にすら悟られなかった。被っていたVRマシンは転がり落ちていて既に被ってすらいなかったから。彼は結局単なる病死として葬られた。
-家族には部屋に隠してあった黒歴史を知られた上に遺品の大半ががめられたのは云うまでも無い-。
・・・これは一体どういう状態なんだろうか?・・・
(・・・なんで自分は横になってる?あれ?今気が付いたけど耳が頭の横じゃなくて上の方についてるみたいだし。形は“猫”・・・?いやなんか“狐”ぽいし?なんで?・・・あれれ?俺はれっきとした“人間”だったよね?)
分からない事だらけだ。出来る限り冷静に、現状を整理しよう。 まず身体はと・・・(むにゅ)。げ。マジかよ。じゃ、じゃぁこっちは・・・いやん。
あーこの感じじゃ[女]だよねー多分。なんかちまっとしてるけど胸はあるみたいだし代わりにあれが無いみたいだし・・・。まぁ前々から余り人前じゃ喋らない様にしてるし、この身体なら[私]なんて言った方がいいのかな。女性の私が[俺]なんて男性の様な言い方したら変かも知れないし・・・)等と取りとめも無く考えてみる。
・・・いや一応突っ込んでおくが俺は体が女に変わっていることにさっき動揺したばかりだぞ???
まぁ性別は後回しにするとしても、なんで目が視えているのだろうか?ここはどう考えても持ってる知識としては洞穴の中であって、おまけに光源となる物は無いはずなのに。流石にフルカラーで視えているわけではなく、白黒だが全体的にうっすら青い小さな洞穴内は薄暗いながらも何処か神秘的だ。何故見えるのか自分の知識の中で思い当たる単語を探ってみると≪暗視≫と言う単語が脳裏に浮かんできた。
・・・さっき一通り体を調べた限りでは記憶の中にある暗視ゴーグルとかいう道具やらは着けていなかったはずだ。何故見える。ちなみに記憶では眼鏡をかけていた覚えあるが今は裸眼である。視力は元の状態以上の様だ。
獣人という事で<<暗視>>が使えてる・・・ん?使えてる?
それどういう意味なのかな?スキル???種族の特性???何それ。・・・
・・・なんかさらに訳分からない事になってきた気がする。
散々記憶と持ち合わせている知識を頭の中でこねくり回し自己診断した結果、どうやら自分は別の世界の知識を持ったまま何処かに“狐の獣人”として“転生”したらしい事を理解した。
「それにしても・・・ここ何処だろ。何か眠いし・・・まぁいいや。寝る。」
狐の獣人の女の子は誰に語るでも無くボソボソ呟きながら枯れ葉や抜け毛で整えたであろう粗末な寝床の上で丸くなると再び眠りに付いたのだった。
ちまちま修正しました。