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外伝03 ~クリスマスの奇跡~

Merry Christmas!

今回は、いつものに比べて長めです。

「・・・人・・え勇・・きて・。ねえ、勇人起きてってば」


 俺は、玲奈に起こされていた。


「う~ん。今日はクリスマスだろ?ゆっくり寝かせてくれよ」


「そんなこと言ってる場合じゃないんだってば。良いから起きて」


 そう言いながら玲奈は俺から布団をとった。


「さむい・・・」


「おーきーてーよー」


 俺は体を揺すられて、仕方なく起きることにした。


「ふぁ~。おはよ、玲奈」


「うん、おはよ。っじゃなくて!周りをよく見てよ!」


 目を擦りながら、玲奈に言われた通り周りを見渡す。


「盛大などっきりだな」


「どっきりじゃないってば!よく見てよ!

 あっ、やっぱりダメ!

 下に行って!というか顔洗ってこい!」


「なんだよ。コロコロと話のかわるやつだな~」


 俺はまたあくびをしながら、洗面所へと向かった。




ーーーーーー玲奈sideーーーーーー



 危なかった。私の部屋を勇人に見られるところだった。


 今朝私は起きたとき勇人の部屋にいた。


 なぜかはわからないけど、からだがもとに戻ったみたいだった。


 私はその事を勇人に早く伝えたくて、顔も洗わず髪も整えないまま、勇人を起こしに行ったのだった。


「勇人、起きて勇人」


 体を揺すっても起きないのでどうしようかと困っていると、ふと自分の部屋が目にはいった。


「どうしよう。すごく散らかってる」


 たまに、疲れているとよく散らかったまま掃除もせずに寝てしまうことがある。


 昨日は着ていく服をどれにしようかと考えていたら、散らかしっぱなしで寝てしまったらしい。


 よく考えてみると、ここには勇人が私の布団で寝ている。


そのまま起きると、この部屋が見られてしまうのではないだろうか。


「たいへんだ。早く片付けなきゃ」


 私は急いで片付けを始めた。



 それから数分後、私の部屋は一通り片付いたのだが、


「やっぱり急いでやったから、まだ散らかってるな~」


 細かいところまで片付けることができずにいた。


 だが、勇人にこの事を早く伝えたい。


 そう思った私は、布団から見えるところだけ片付け、起こすことにした。


「ねえ、勇人起きて。ねえ勇人。ねえ勇人起きてよ。ねえ、勇人起きてってば」


 どのくらい起こしていただろうか。


 こんなことなら、しっかりと片付けちゃえばよかったとも思ったが、そんなことを考えているうちに勇人が起きたようだ。


「今日はクリスマスだろ?ゆっくり寝かせてくれよ~」


 そんなことを言われても、ゆっくり寝かすわけにはいかない。そもそも、その布団は私のなのだから。


「おーきーてーよー」


 そんなこんなで、起こすのに時間がかかったが勇人は起きた。


 寝ぼけているらしく、目を擦っていたがここが別の部屋だと言うことに気がついたようで、どっきりと勘違いしていた。


 自分の体や部屋を見れば気がつくと思い、それを促した。


 が、私がふと机の上を見ると片付け忘れた勇人の写真を集めたアルバムがあるとに気がついた。


 私は慌てて勇人を下へと追いやり、再度片付けをするのだった。



ーーーーーー勇人sideーーーーーー


 俺は洗面台へと向かっていた。


 せっかくの冬休みそれもクリスマスだと言うのに、ゆっくり寝かせてもらいたいものだ。


 俺たちの高校は23日から冬休みが始まる。


 早いのかどうかはよく分からないがやっと冬休みになったということで、他の家ではまったりしているやつが多いのだろう。


 だが、俺たちは親が仕事でいないのでクリスマスの支度などを自分達でやらなければならない。


 そのため今日まではかなり忙しかったのだ。


 昨日終わったときには二人してこたつでゆっくりと休んでいた。


 今朝もかなり遅めに起きる予定だったのだ。


「だりー」


 そんな声をだしながら、洗面台へと到着した。


「あれ?これって俺のからだ?」


 鏡を見ると、数ヶ月前までは鏡の前で毎日見ていた顔があった。


「えー!戻ってる!?」


 俺は現実かどうかを確かめるために、ほほを思いっきり全力でつねった。


「いたっ!」


 いたかった。かなり痛かった。


「おっしゃ~!戻った~!」


 からだがもとに戻ったということに興奮し、大声で喜んでいると


「勇人うるさい!」


 と、玲奈に怒られた。


 てか、玲奈の方が声大きいんじゃね?



 洗顔を終えた俺はリビングへと向かい、机の上に一枚の紙を見つけた。


 その紙は封筒に入っており、周りにはなにも書いてなかった。


「玲奈~、机の上に封筒があったから一緒に見ようぜー」


 なぜか、一人で開けてはいけないような気がしたため、玲奈を呼んだ。


「わかった。今行くねー」


 少しすると、玲奈は降りてきた。


「お待たせ。で、封筒って?」


「ああ、これのことだ」


 手に持っていた封筒を玲奈に渡す。


「なんか、二人で開けた方がいいような気がしてな」


「そうだね。じゃあ、開けよっか」


 玲奈は封筒をゆっくりと開けた。


 封筒の中には1枚の紙が入っていた。そこにはこう書かれていた。



  この効果は今日1日だけである。



「「今日だけかい!」」


 二人してつっこんだ。


「あ、この手紙裏にもなにか書いてある」


「何て書いてあるんだ?」



  1日だけでも戻れたことに感謝しろよお前ら


  なお、この手紙は読了後30秒後に消滅します。


       サンタより



「「無駄なオーバーテクノロジー!」」


 また、二人してつっこんだ。


 そして、30秒たつとその手紙は消え、その代わり封筒のなかに新しい紙が出現した。


「このサンタってかなりお茶目な人なのかな」


「そうかもしれないな」


 そういいながら、新しく出てきた紙を取り出し書いてあることを見ると



  なんでも願いが叶う券(ただし、些細なことに限る)


    譲渡不可・消耗品



「「子供っぽい!」」


 小さい子が親に誕生日プレゼントとして渡す肩叩き券のような感じのものが出てきた。


 まさに手作り感満載の券だった。


「やっぱり、このサンタさんはお茶目な人なんだよ」


「そのようだな。それも、肩叩き券みたいな感じなのに、ものすごく豪華だし」


 この些細なことの条件がよく分からないが、今は特に使う予定もないので一応玲奈の財布にしまっておいた。


「こんなことしてる場合じゃない!勇人早く出掛けようよ!」


 そうだった。


 サンタの手紙のことで忘れかけていたが、今日1日はもとの体に戻ったままなのだ。


 周りの目を気にせずに、外出ができる。玲奈もそう思ったのだろう。


 だが、俺たちは


「玲奈、その前にご飯食おうぜ?腹へった」


「あ、そうだったね」


朝食もとっていなかった。


「じゃあ、久しぶりに一品作ろうかな」


「ああ、お願い」


 本当はもうすでに作ってあるのだが、もとの体に戻れたということで作りたくなったのだろう。



 朝食を作るのは数分で終わった。


 玲奈と一緒に食事をとったが、それもいつもと比べるとかなり早く終わった。


 その途中


「今日の夕食は私が作るからね」


と玲奈が言っていた。たぶん、久しぶりに思いっきり作りたいのだろう。


 そして、食事のあと俺たちは身支度をして昨日言っていた駅前へ行くことにした。



 身支度が終わり、玲奈を待っているとスマホに電話がかかってきた。


「はーい」


「あ、もしもし勇人くん?高瀬です。今だいじょうぶかな」


 かけてきた人は、梓だった。


「梓か?久しぶりだな。だいじょうぶだけど、どったの?」


「今日って、クリスマスでしょ?

 久しぶりに会えないかなーって思ってさ」


「ちょっと待ってくれ。今、玲奈にも確認とるから」


「うん、わかった(本当は、二人っきりが良いんだけどな)」


 俺は玲奈を呼ぶため、耳を離した。


「玲奈~、梓から電話があったんだけど、久しぶりに一緒に会わないかってさ~」


「梓ちゃんから~?」


「そーう、一緒に会おうって言ってるけどどうする~?」


「良いんじゃな~い?」


「じゃあ、そう言っとく~」


 俺はスマホに耳をつけた。


「もしもし、だいじょうぶだってよ」


「よかったー。時間どうするの?」


「昼くらいでいいんじゃないか?

 俺たちは今から玲奈と駅前に行く予定だし」


「そう・・だね。うん、そうしよう」


 梓の返事にあった妙な間が少し気になるが、本人はなんともないようで、そのまま他に誰を呼ぶかという話になった。



「じゃあ、またあとで」


「うん、またあとでね」


 そう言って、俺は通話を終了した。


「おわった?」


「ああ、おまたせ」


 玲奈は、支度が終わっていたようで近くで待っていた。


「で、結果的に他に誰が来るの?」


「佳人と星輝(せいき)(つばさ)それと佐藤さんと委員長も来るってさ」


 別々の高校に行ったやつもいて久しぶりに会えるってことでかなり楽しみだ。


「へー、結構人が集まるんだ」


「待たせてたのは俺だけど、昼に集まる予定だから早くしないとツリー午前中のは見れなくなるんじゃないか?」


 俺がそういうと、玲奈は腕時計を見て驚いたような顔をした。


「勇人、急ぐよ~」


「はいはい」


 こうして、俺たちは駅前へと向かった。


 玲奈の服装はかわいかったとだけ書いておこうと思う。



「人多いね~」


「そりゃクリスマスだからな。毎年こうだろ」


「そうなんだけどさ、もうちょっと気の利いた返しはできないわけ?」


「なんだよ。気の利いた返しって」


「知らない。自分で考えれば」


 玲奈は、そっぽを向いてむくれていた。


 駅前のクリスマスツリーは昼も夜もおおぜいのひとが集まっていた。



「ほら、こっちの方がすいてるよ」

「あっ、ありがとうしゅんくん!」



 少し離れたところからこんな話し声が聞こえてきた。


 玲奈が言っていたのはこういうことだったんだろうか。


 そう思ったがいざやろうとすると、この人混みのなかだとはぐれかねないと考え、俺は玲奈の手をとった。


「ほら、こっちの方がすいてるだろ」


 玲奈は俺が手をとると少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり


「うん!」


と、返事をした。


 玲奈が笑顔になったのは、手を繋いだからなのだが、そんなことは勇人が知らない。


 からだがもとに戻り少しでも目線が上がってよかった。と思った瞬間でもあった。


 ツリーの近くまで来ることができた俺たちは、来る途中の雑貨屋で買ったツリーの飾りをつけることにした。


「あ、ここが良いんじゃない?」


「そうだな」


 こんなふうに、飾りを付けると


「ねえ勇人」


玲奈が急にトーンをおとした。


「なに?」


「こうやって二人でやるの久しぶりだよね」


「そうだな。高校生になったらいきなり親が海外へ仕事でいなくなってからは、基本なんでも分担してやってたもんな」


「うん。いつまでできるのかな」


「たぶん、これからもずっとだと思うぞ。

 今は違うけど、中身が逆転した双子なんてそういるもんじゃないしな。

 ばれたらたいへんだ」


「そうだね。

 でも、勇人も私もこの生活に相手の体になれてきてる」


「だとしてもだ。

 バレるとかバレないとかよりも、俺は玲奈のことが心配だ。

 このままだと、いつか玲奈は壊れる。

 俺は玲奈をそばで支えてくれるやつが出来るまでは、絶対に玲奈を守り続けるから」


「ありがと」


 ふと、玲奈の方を見ると涙が目からこぼれそうになっていた。


 俺は、その涙をすくいとり、玲奈の頭をなでこう言った。


「だから安心しろ、姉ちゃん」


「うん」


 次に見たときには、玲奈の目には涙はたまっていなかった。



「やっほー」


「すまねー、遅れた~」


 俺たちは中学の頃の俺の部活仲間 山本(やまもと) (つばさ)の両親が経営しているラーメン店山本に来ていた。


 そこには、もうすでに全員集合していたらしく


「おせーぞー」


「もう食べてるよー」


「いらっしゃーい」


「やっときたよ。最後の二人が」


「早くしなさい二人とも、5分前行動は重要よ?」


「久しぶりー」


 佳人、佐藤(さとう) 愛梨(あいり)、翼、鈴木(すずき) 星輝(せいき)、委員長こと宮本さん、梓の7人がいた。


「わりーな」


「ごめんねー」


 俺たちはみんなに謝り、席に着いた。


「玲奈いつもので良いよな」


「そうだね」


「おっちゃん、Aセット2つ一個は大盛りで!」


「あいよ」


 俺が注文を終えると。委員長が話しかけてきた。


「ねえ、いつもと感じが違うんだけど?何かあったの?」


「ああ、今日だけはもとに戻れた」


「急にどうしたのよ。それも今日だけって」


「サンタクロースからのクリスマスプレゼントみたいなものだ」


「へー」


 話が終わると、星輝が俺と委員長のことを茶化しはじめた。


「なにそこで二人っきりで内緒話してんだよ~。

 あれか、付き合ってたりすんのか」


「なに言ってるの。そんなわけないでしょ」


「ああ、ただの学校の話だ」


「なんだよ、つまんねぇの」


「そうだぜ星輝。勇人のシスコンはまだなおってないからな。

 あいつらが付き合ってるなんてことは、絶対にありえないって」


「佳人!俺はシスコンじゃない!」


「で、玲奈、本当のところはどうなの?なにか進展でもあった?」


「しっ進展ってなにが!?」


「もう、わかってるくせに~」


「そんなことしてないってば!」


「そんな事ってなにかなー」


「もう!愛梨ったら!いい加減やめてよ~」


 俺たちは、そこから夕方になるまで話し続けたのだった。



「あー、楽しかった」


「星輝たちとも久しぶりに会えたしな」


 夕方になり、俺たちが解散する頃には、辺りが暗くなっていた。


「良いこと思い付いた。ねえ、あの券使おうよ」


「ああ、そうだな」


 この時俺たち二人は、同じことを考えていたと言う確信があった。


 双子ゆえのシンクロがごく稀にだがあるのだ。


 玲奈は券を取り出した。


 そして、反対の手で俺の手をとり、二人同時にこう言った。


「「雪よ降れ!」」


 願いの叶う券は輝きだし、空へと飛んでいった。


 その輝きが見えなくなった頃、雪が降りはじめたのだった。


「これからもよろしくな」


「こちらこそ」


 そして、玲奈が上を向きポツリとこう呟いた。



「クリスマスの奇跡」



今回も投稿させてもらいました~。

時期ネタと言うことで、2日連続投稿となりました。

時期がかぶり、このような外伝が増えるかもしれませんが、しっかりと本編も書いていく予定です。なので、今後ともよろしくお願いしますm(__)m

最後にひとつ、感想やレビュー、ポイントなどもよろしくお願いします!

それでは、よいお年を~


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