コージ・ムロフシは異世界ダンジョン攻略者!?
コージと愉快な奴隷たち
「ああ、またあの頃の夢を見てしまったか」
手入れされた顎髭を触りながら、コージはひとりごちる。
「今となっては全てが懐かしいな」
二重螺旋構造を持ったタワー型ダンジョン「ゲノム」異世界転生させるに値する遺伝子を篩に掛るため、シュメール人がかつて作り出した異形の塔。
コージ・ムロフシは見事にタワー型ダンジョンを攻略し、その全てを内在性レトロウイルスとして一つ上の次元にある現代地球の日本に送り込まれた。実は、この日本には地下ピラミッド型ダンジョンが眠っており、コージは次の転生を果たすため入念な準備をおこなっていたのである。
「肉壁たち、この日本ではなかなか手に入らないからな」
コージは股間を熱くしていた・・・ダンジョン内でのコージの攻撃は、鎖のついた超質量の金属を放り投げるという、シンプルだが防ぎようのない技であった。魔法よりも早く、剣術よりも広い間合いで、確実に敵を屠る。しかし弱点もあった、二撃目を放つ際に隙ができてしまうのである。
「ミーシャ・クシャナ・オラリエ。誰も生き残れなかったな」
コージはダンジョン奴隷を使役し、肉壁として利用していた。彼らはもともとダンジョン攻略者であったが、体の一部を欠損したり病気にかかったりして降りることも登ることもできなくなった者達であり、ただ死ぬよりはとコージのダンジョン攻略のために命を投げ打っていったのである。もちろん肉壁としてのみ利用されたわけではない。転生するに値する異常な性欲を持っていたコージの下の世話も、彼女彼らの役割であった。
「こん世界には獣人も、魔族も、ましてやモンスターもいない。だが、この前ヤった熊はよかったね。久しぶりに滾ったよ」
モンスターの血肉を食らい、生殖し、子を育て、ただ塔を攻略していく。ダンジョンは成層圏を超えており、地表で暮らす者よりダンジョン内で生きる者の方が多かった。コージは肉体的にも精神的にも完璧と言える、彼は塔のモンスター以上に、人間を殺して這い上がってきたのだ!!
コージはベッドの上で眠っている神待ち女子高生を揺さぶり起こす。彼女もコージは紳士的だし、抱かれても良いと思い、この超高層マンションの最上階に来てしまった。しかもヘリで。彼女がこの部屋にいることを誰も知らない。
「起きたね。じゃあこの武器を持って挑んできてごらん」
「えー、ムロフシさん、これ夢ですかー?」
「はは、そっちから来ないならこっちから行くぞー」
めきぅ!!
「ひげぃ!!おえぇえええええ」
「ああ、骨が折れるとゲロを吐いてしまうからね。ほら、片手なんてなくても戦えるぞ、その銃を私に向けて撃て!!」
「あああ!!」
パンパンパン!!
「いだあああ!!」
「脱臼したみたいだね!」
コージは無傷である。秒速360mで飛来する弾丸を見切り、ボスモンスターの攻撃よりも遅いなとフラストレーションをためたコージは、超巨大な窓に向かって、女子高生をぶん回し、投げ飛ばす!!
「いやああ!!」
「頭が割れるか、窓が割れるか、見物だね」
その窓ガラスが割れるはずはなかった。ここは地図から隠された島。ダンジョン攻略者にしか立ち入ることのできないレストアイランドである。窓ガラス、これは実はガラスではなく、この島でしか生産することのできない透明アルミニウムでできたれっきとした金属なのであった!
グキリと頚椎の折れる音がして、コージはダンジョン攻略の準備を進める。この程度の耐久力では、肉壁としてまったく機能しない。せいぜい便器である。
「この世界の人間は甘やかされているんだね。この程度じゃあ、上の世界には行けないよ」
コージは窓を”掴み”ゆっくりとひしゃげさせる。鋼鉄以上の硬さを持つ透明アルミニウムが、まるで湯葉!これはひどい!!
「この世界に来て広がった脳の容量と、鍛えれば鍛えるほど増えていく筋繊維、そして豊富な食料。それなのに、どうして全員、こんなに脆弱なんだろう。あまりに退屈だ、骨のある奴が一人もいない・・・そうだ!!戦争を起こして、生き残りを使えば良い!」
こうして再び世界に戦争の火種が撒かれることとなった。この世界の支配者はコージ・ムロフシだったのだ!!