Ver1.02
ここからが本編?
古い木造建築特有の何ともいえないノスタルジックな匂いを感じ、明り取りの窓から射す弱い光に闇に慣れた目が眩しさを感じる。
匂い・・・嗅覚まで再現してるのかと関心していると
「冒険者ギルドへようこそ!」
いきなり目の前に現れたカウンターと、20代前半ほどのカワイイ系のお姉さんに一瞬戸惑う。
「・・・うむ」
多少虚を疲れたが人前では外見にあったロールプレイを・・・と、プレイスタイルにしてるので年配らしく落ち着いて返事を返す。
「私は案内係りのリンといいます。ここでは流浪の末たどり着いた者たちに職と技能を習熟~つまりは慣れてもらいます~お~け~?」
なんとなく間が独特な話し方の受付嬢だが・・・
「ん、わかった。 オレは政十郎という」
頷く
「まず、あなたの適正を見ます~よろしいですか?」
小首をコテンと傾げる。
その仕草に思わず微笑し「ああ、どうぞ」とこたえると・・・
「ではここにすでに用意してある水晶がありますどうぞ手を当ててください」
目の前にいつの間にか腰ほどの高さの飾り台にソフトボールぐらいの水晶玉が鎮座していた。
とりあえず手のひらを乗せると『ブウンン・・・』という低い音がして目の前に浮かぶ3Dモニターにオレのステータスが浮かんでいる。
普段は『オープンウインド』と強く考えるか口に出すかで出るとのこと
それをフムフムと眺め・・・
「政十郎さん? あなた・・・まったくスキルにポイント振ってませんね・・・」
「ああ、そうだな」
深くうなずいてみる。
「そうだな・・・ってせめて職業を持ってないとクエストとか斡旋ができないですし・・・ええ?! 能力値オール0ってそこも振ってないんじゃ・・・ナニコレ・・・ウソ?!」
なんかまくし立てているが・・・まあ、気持ちはわからんでもないが~ステータスの後半まで視線が行くと声も止まった。
「ラック99?!! え、うそ?! どうしたらこんな数字出るんですか!」
「む? それは・・・ほら、ダイス振ったらこう・・・ね?」
顎髭をなでながら苦笑。
「折角だから残ったポイントもブッコンだ・・・ってところかね?」
「ブッコンだ・・・ってあなた現在ステータスの上限は99・・・つまり最高値たたき出してるんですよ!」
興奮気味に詰め寄ってくる彼女をドウドウといなしながらもNPCってAIっていってたがここのAIの自由度と感情表現は人間くささを感じるくらい凄いと妙なところで感心してしまう。
「ほう、そいつは知らなかった。 なるほどな~勉強になった」
「勉強って・・・まあ、いいです。 でも~クラスも無く武器スキルさえ全く取ってないって、もしかしてユニークスキルとか称号ねらいですか?」
いいながらため息をつくリンさんに
「ん? あ~なるほどそれは考えてなかったな。 単にリアルな造りだというから素の自分と技術でどれぐらい通用するか確かめたいってのもあったんでな。」
笑う俺にリンさんは呆れるような顔をしている。
「はあ~・・・わかりました。 とりあえず恐らくユニーク称号はこのチュートリアルエリアを出たら手に入ると思われますよ~。 願わくば戦闘にプラスになる能力がある称号だと祈っておきましょう。」
「うん、ユニークが・・・? 何故そんなことがわかるんだ?」
特にナニをした~でも無いはずだが・・・まあラック極振りはしたことになるか。
「ここだけの話、キャラメイク時に何かにSTPを全振りする人は何人かいると予想はスタッフもしていたんで~、そのステータスをある域まで上げれた人にはレア称号が贈られると聞いてます。 また、そのスキル最高位と初回限界値達成でもあるはずですから~」
「すでにラックでMAX到達してるオレは3つは条件をみたすわけだな・・・」
「その通りです~。 でも、たぶん~それ以上入る条件を満たしていると思われますが~そこんとこは業務内容的にヒ・ミ・ツってことで~。」
いたずらっぽい仕草で人差し指を口元で立てるリンさん・・・かわいいだけに子悪魔っぽく似合ってらっしゃる・・・
「あとは~アイテム欄に初級武器が一通り入ってると思いますが~」
説明会で教わったキーワード『インベントリ』と小さく呟くと、目の前にアイテムがアイコン化した一覧があらわれる。
片手剣 短剣 盾 両手剣 棍棒 片手斧 槍 弓 矢X99 と幾つか並ぶアイコンを指で触るとタッチパネルのような感触でふれた場所を基点に角張った吹き出しの中に説明と武器の能力が現れる。
ビギナーソード ☆x1 耐久値 99/99
片手剣
攻撃力 +5
必要アビリティ 筋力
両刃の直剣
初回に冒険者が持っている装備
初心者が持つには軽く扱いやすい
「念のため説明しますと~項目の最初は武器の名前。 ☆はレア度、数字が大きいほど希少になります。 一般に1~3コモン 4~6アンコモン 7~9レア 今のところ最高で10でユニークになります。 コレはアイテムは全て同じ表記です。 耐久値は使うと減っていき0になると壊れますので早めに鍛冶屋や道具屋で修理をお勧めします。 壊れちゃうと直せますが耐久値の最高値が減っていきます。」
「ほう、つまり0になる前に修理すれば減らないと?」
「そのとおりですね。 次に使用スキル兼種別なんですが、コレは片手剣スキルを持っていれば+補整が付きます。」
「+が付くってことは、別にスキルを持ってなくても使えるってことか?」
「はい~、そこはリアルを追求する仕様でアイテムや装備品は全て職業、スキル関係なく装備等可能です・・・が、」
「・・・が?」
不自然なタメに問い返してみる。
「職業スキルに注意書きされた制約に沿わないものや重量過多な装備は表立っては見えませんが~結構シャレにならないマイナスが付きますよ~。 後、この種別はそのアイテムを使っていけば偶に0または1LVを取得することがあります~。」
「0LV・・・スキルの最低値は1からじゃなかったか?」
たしか説明ではそう言ってたはず・・・。
「確かに、初期スキル取得と店で買えるスキルは1LVからですが我流スキルや派生スキルは戦闘時やいろんな行動を行ってるときに取得します~。 偶に寝てる間や歩いてると取得なんかもあります~。 取得条件はそれぞれプレイヤーで見つけてください。」
なかなか奥が深そうだ無言で頷いておく。
「攻撃力はそのまんまその武器の基本プラス補正値で高ければその分相手に対するダメージが増えますが・・・武器によっては扱いが難しいので気をつけてくださいね~。」
確かにこのVRで武器を使うと実際に使う時と同じことになる。
細かく言えば剣一つでも最高ダメージを出すには刃や切先の部分で刃を通すか突き刺して攻撃しなければならない。 棒でただ殴るのとは違うわけだがその細かい扱いを補正するのが武器スキルといったところだ。
「必要アビリティはその装備をつけて-にならないための最低限そのアビリティが使うために必要かを色に出します。 現在白表示なので普通に使えますが、足りない場合そのアビリティが灰色に表示されますのでそこを鍛えれば使えるようになります~。」
ちなみに、ステータスもそのステータスに関連した行動を取ることでLVアップ以外でも上がることがある。
「あとは~そのアイテムの説明文ですね」
「ん、わかった。」
「あと、武器に慣れる為にギルドでは初心者訓練所が使えますスキルLV3まで安全に上げれますんでご利用ください。 ここでは現在クエストは受けれませんが訓練所では簡単な武器クエストが受けれますんで少しでもスキルを取得しておくことをお勧めします~。 以上~チュートリアルでした~。」
セリフと共に扉が現れ空中に『NEXT』の文字と矢印が浮かぶ。 どうやら出ろとの指示らしい。
武器スキルのクエストねえ・・・まあ後で見てみるか。
「わかった、気が向いたら行ってみる。」
そう言いながら外に出る扉に向かう。
「それでは良い旅を~」
にこやかに手を振るリンに背中越しに軽く手を振って扉を開けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
扉を開けると太陽の目を射す光と人の雑音と雑多なノスタルジックな香りに包まれた。
「パーティー募集~@3~!!」
「回復職志望もしくはプリスキルもち募集~」
「タンクOR火力ササよろ~」
主に周りからはMMOによくある大勢のPT募集の叫びが聞こえる・・・ああチャットでなくリアルタイムでのボイスオンリーだから呼び続けてるのか・・・。 これはその内対策要望だされるだろうな~と、他人事に思いながら回りを改めて確認。
眩しさに慣れてきた正面は街の中心部らしき結構大きめの広場で更に目立つ大きめの噴水が目を引く。 なんか中には泳いでるやつも何人か見えるが・・・。
オレの背後には出てきた扉は無く、更に後ろに先ほど出てきたと思わせるチュートリアル用と違うギルドらしき大きな建物が伺える。
町の作りは後期中世ヨーロッパ風で中心の噴水を挟んで向こう側に大通りらしい広い一本の道、後ろにはギルドの建物の横の大通りと一直線になっている。噴水の左右には大通りより少し幅の狭い・・・と言っても大型車がすれ違える程の道幅に露店が幾つも並んでいた。
それにしても流石一斉に約100人がログインしだしてるだけに、最初のスタート位置であろうこの広場は活気が凄い・・・というか人口密度高いな!
最初のクエ用のNPCらしきキャラの周りなど人で埋まって有クエスト表示の『?』のマークしか見えんな。
あれと大多数は現れたと同時に走って出口らしき大きな門に向かっている。
うむ・・・何にしても身体の慣らしと、手っ取り早くここでの戦い方や敵の強さを見ようと思う。
早速人の流れに乗って歩いて門らしき方へ向かう。
歩いているが・・・何となく周りの熱が伝播したのかいつの間にか走っていた。 ナンダカンダ言ってもオレも相当この瞬間を楽しみにしてたんだ!
広場からは他の民家らしき建物で見えなかったが、門に近づくにつれそれに繋がる高い壁が見えてくるこの街は結構高い壁で覆われているらしい
門に着くと外側に門番らしき兵士が二人並んでいる。
しかし大きな門だ・・・三階建ての建物と同等の大きさで約10メートルほどか?
その横は見張り台の小さな塔があり壁は大きな石のブロックで作られ内からやや外側に向かって傾斜したかんじの壁が街を囲む様に続いているみたいだ。
ふとそこで気がついたが、ここまで全力で走っても息一つ乱れてないのは流石ゲームと思った。 そして一番喜ばしいのは、全力で走ると痛む膝や若い頃無理がタタッて傷めた各種の古傷がなんとも無い引き攣るような違和感が全く無い新品のハンデの無い身体は若かりし頃を彷彿とさせる。
それだけでもテンション上がってきた~状態だ!
何となく目に付いた壁に向かい『コンコン』と叩き強度を見てみる・・・うん、ビクともしない。
強めに蹴ってみるが別段壁に恨みは無い。
思わずニヤリと笑みがこぼれる。 このとき自分の表情を見ていたら悪ガキが新しい遊びを覚えたような笑みと喩えただろう。
「壁の傾斜良し! 強度問題なし!」
壁を右斜めに見据えて軽くダッシュ!!
速度が乗った頃に壁に向かってジャンプ! 右足が壁に着くと速度を落とさず左足を前に~2歩3歩~5歩で重力に引かれて落下する前に体勢を整えて足を下に落ちる。
オレが子供の頃はやった『壁走り』 何歩まで壁を上がれるか競う遊びだった。 誰よりも多い歩数、誰よりも高い所まで行くのが当時のステータスだったっけ・・・。
まあ、流行ったは良いが調子に乗って無理をして落ちて怪我した子がいて危険と言われ禁止されたという顛末だったが。
普通の大人ではやるのは恥ずかしいし体力的に無理があるが・・・ここはゲーム! ジジイキャラではあるがオレ自身で無いから恥も軽減! 行動に制限なし!!
と、言うことで何度か繰り返し歩数を増やしていく・・・昔は9歩で限界だったっけな?
「さて・・・本気で行くか!」
今度は壁を真正面に捉えゆっくり下がっていく・・・良し、ダッシュ!
地面を蹴り小股で壁に向かう勢いを殺さないように走る!
前傾姿勢を崩さず手の振りは余計な反動を生むので固定!
7歩、8歩・・・子供の頃と比べて足の筋力が付いた分まだ余裕はある!!
9歩~10! 記録は塗り替えた!! ・・・だが、上には目前に迫った壁の終わりが!! まだまだいける!!! 最後の踏ん張り・・・12、13・・・15でラスト!!! 幅50cmほどの壁の頂点に足がかかった『ピロン!』ん?
「「「おおお~~~~!!!」」」
「いきやがった!?」
「爺さんやるな!」
大勢の声に思わず振り返ってしまった。 何か5~6人に見られてたようだ・・・あれ?
体勢を立て直す前に振り向いたのが悪かった、グラリと視界が傾いていく。
「きゃあ!」
「ダメ!」
「「あ!」」
何人かの悲鳴。 背中から落ちると考えるより先に足が壁から離れる~瞬間、右腕を身体に引き寄せ巻きつけるように、左を背中方面に回すようにして・・・思い切り身体から離すように振り反作用で半回転! 落下を始める前に壁を思い切り蹴って前方に縦1回転で落ちながら飛距離を稼ぎギリギリ民家の屋根に足が届いた! 片足づつ屋根に着き足だけで受身、5m落下の威力を落とす。 身体のバネをそこでタメ後ろを確認、着地点の安全確認をして人がいない所目指して後方に跳ね上がる。 後方伸身回転で足を下に向け着地!! 『ズザザーーー!!』勢いが余って半分片膝立ちの形で着地後に後ろに滑るが無事着地!『ピロン!』
「「「「おお~~~~~!!!」」」」
また、変な音がしたような・・・それにしても・・・
「ビックリした~死ぬかと思った!」
ギャラリーを前に額の汗を拭う・・・ゲームだから汗は出てないけど・・・
「いや~悪りいな、集中してるとこ邪魔しちまったみたいで・・・」
見物人の一人の男が声をかけてきた。
ゲームのキャラらしい整った顔立ち・・・悪っぽい鋭い目をした銀髪碧眼の男~だがしゃべり方のイントネーションがどこか愛嬌があり悪役になり切れてないお兄ちゃんっぽくなっている。
「ああ、いや・・・こっちもこんなとこで遊んでた訳だし~まあダメも何もなかったし気にせんでいい」
そう笑いかけてやると
「そっか、じゃあ良ければ「すごいな~爺さん!」おい?!」
「シーフ系スキルですか?!」
「俺もやってみるかな?」
囲まれた。
~~~~~~~~~~
「え?! スキル振ってないってホント?」
「じゃあ、さっきのってリアルスキル? ・・・ハンパねえ・・・」
「結構壁に挑んでたけど何かスキル取れた?」
「スキル・・・ああ『ピロン!』って音はもしかしてそれかな?」
システムログとスキル欄を開いて見る。
「ん~あ、あるな幾つか取れてる」
『ダッシュ』『ジャンプ』『重心移動』『アクロバット』か『壁を越えし者』なんて称号もあった
「おお~良ければ教えてくれ!」
「おいおい・・・スキル取得方法聞くのはこの手のゲームで聞くのはどうかと思うぞ・・・賞金のこともあるし」
さっきのチョイ悪さんが他の人を諌めてくれる・・・案外面倒見良い人かも?
「別に最初に取れるスキルだし大したことないだろうしいいぞ」
「「「いいのか?!」」」
何人か驚いてるけど楽しめて何ぼだしいいよな?
~~~~~~~~~~~~~
ちょっと移動して人通りの無い路地裏の空き家。 こういう雰囲気は何気に秘密基地っぽくてオレも好きだったりする。 何でもこの連中ゲーム仲間らしく違うゲームでもギルドで一緒だったとかで、始まって早々たまり場を探しててここを見つけたそうな
「じゃあ、言っていくぞ~まず・・・」
スキル欄のスキルに指を這わせ説明を見る。
こうすると取ったスキルの情報と取得条件が表示される
UC『ダッシュLV1・05』PS
瞬間的に一歩移動して回避する『ステップ』使用可能になる
走る速さにLV分の小補正
スタミナにLV分の小補正
条件・・・短時間で全力疾走を数回行う。
AS『ステップLV1・05』消費AP2
ステップの距離は敏捷とSLV依存
「ステップが着くスキル!? 私ステップって無敵時間あるから必要って思って単体で最初に取っちゃったよ・・・」
「あ、僕も・・・」
「いきなりUCか~小とはいえ複数補正とAS付きは良スキルですね」
「スキルの表示見る限りダッシュとステップLVのあがり方同期してないか?」
「あ、そんなかんじだねえ~と言うことは・・・」
「走っても『ステップ』使っても上がるんじゃね?」
「政さん・・・教えてもらって何だがここだけの話・・・このスキル公開しない方がいいんじゃないか?」
政さんとは俺のこと結局この場所にいた6人とフレンドになって現在PTC中で外部とは音声遮断してたりする。
ちなみに政さんと呼んだのはチョイ悪風のお兄さんことガイさん・・・二文字名ってMMORPGじゃ取りにくいんだよね・・・と、変なことに関心してたが連中のギルドでマスターをしてたそうで・・・隠れた苦労人っぽい。
「そうか? オレはどっちでもいいが」
「取得方法が何気に特殊で滅多にやらない行動でしょ陸上部の練習でなければやらないって・・・全力疾走の連続って。」
「『ステップ』だけ取るの廃れるね~むしろ僕『ダッシュ』取り直して『ステップ』外して売る!」
ちなみにこのゲームにはスキルスロットと言うものが3種類ある。 メインスロットは5つあって、スキルを入れてスキルに関する行動をすると、スキル経験が上がる。
経験はLVの小数点以下の数字で表していて小数点以上に上がればLVアップ分の補正がつく。
スキルのLVの最大値はスキルによって違いASはLVMAXになるとマスターしたことになりカードスロットから消える代わりにそのスキルはキャラに残る
サブスロットも5つここにスキルを入れていても経験は貯まらない。
ただスキルの補正は装備スキルとしてつく。
そしてスロット図鑑。
正確にはスロットではないが手に入れたスキルを全種類一個ずつだけストックできる。
このスロットに入れてるスキルは効果も発揮せず経験も貯まらない。
ただいろんな条件がありその条件をクリアすることでいろんなギフトと呼ばれるアイテムを貰えるとのこと。
なお、習得スキルはメイン>サブ>図鑑の順にストックされるがこの中に入らずあぶれたモノはアイテムボックスにスキルカードとしてストックされるらしい。
次に・・・
C『ジャンプLV1・15』PS
ジャンプしたときに飛ぶ距離や高さに敏捷とSLV小補正
条件ジャンプをしたときランダムで入手
「ああ これのおかげかな~?」
「んあ、何が?」
「ほら、オレが壁から落ちそうになった時妙に跳躍距離が伸びた気がしたから・・・家の屋根蹴った後も勢いつき過ぎて着地したし。」
「あ~それだろうな。」
「まあ、これはCだし初期で取れる珍しくないものだね~使いどころがまだ不明?」
「ジャンプ・・・SP使って取ったのに・・・orz」
「「「ごしゅ・・・」」」
R『重心移動』AS
身体の重心を任意で操る
条件・・・短時間で重心を何回か移動させるとランダムで取得
「ほお・・・」
こんなものまであるのか~これは、もしかしてあの技もスキルにあるかもな・・・あと試しに・・・
「おお~初めてレアキタコレ!・・・でも・・・」
「え、説明コレだけ?」
「ええ!Rなのに説明これだけ?」
「取得条件が意味不明」
「これ・・・意味あるの?」
両手剣を出して軽く振ってみる・・・結構、振り替えすときに負担が大きい。
振りかぶってから振り下ろすタイミングで重心を腕に剣に移動するイメージ・・そして瞬時に重心を戻しピタッと剣を止める。
「やはり・・・そうか。」
「え、何々?」
「これ持ってるものでも重心変えれる・・・つまり攻撃力を上げれそうだし他にも使えそうだな」
「でも取得条件が元々自分で重心とかを移動できないとダメって・・・。」
「卵が先か鶏が先か・・・みたいね。」
「壁を走ってたときに取れたみたいだからな・・・やってりゃ取れるかも?」
「俺はやってみるかな・・・」
C『アクロバットLV1・78』PS
空中での体術、平衡感覚、バランスをSLV小補正
条件・・・0G機動を成功させるとランダムで取得
「0G機動?」
「なんぞそれ?」
「あ~多分跳躍中とか落下中に体勢を変えることだろう。」
「政さんが落ちそうになった時やってたみたいに?」
「だな、猫が落ちるときやるあれだ・・・」
「無理!無理ッス!!」
「Cナノに何故に難易度高いかね・・・。」
「・・・簡単な取り方あると思うがやってみるか?」
多分0G機動ならあの方法でいけるはず・・・
「何?! そんな簡単に言えるほどの方法ってあるの?」
「「教えてください!」」
「ししょ~!」
「判ったから興奮せんで・・・いいか? まずは・・・」
「「「フムフム・・・」」」
「まっすぐその場でリズムを取るようにジャンプを繰り返して・・・慣れたら上半身をある程度捻ってジャンプ、すかさず上半身を逆に早く捻る。 すると空中で身体が回る。 コレを繰り返してみてくれ」
「ホントにコレだけでいいの?」
「どうなんだろう~~~あ、今『ピロン!』って言った・・・『アクロバット』とれた~!」
「うそ?! あ、私も取れた! 『ジャンプ』も一緒にゲット~!」
「案外簡単なんだな・・・さすがC」
『『ダッシュ』とれたど~~~!!』
PTCの遠距離通信の少しマイク越し風な女の子の声
「「「「なにい?!!」」」」
そういえば話してる途中フレ交換してた一人が居なかったが・・・
「いや~43回目でようやくゲット~政さんよくあんな短時間で取れたねえ~」
空き家のドアを開いて入ってきたのは『ぴこぴこ』 赤毛の小柄だが活発そうな女の子。
「それで『アクロバット』の簡単な取り方って?」
いいながらオレの背中に抱きついてくる・・・もとい、おんぶをせがむ子供のように飛びつき背中をよじ登ってる。
「これこれ、教えるから人を登りなさんな」
このゲーム性別は変えれないから、まあ女の子なのだろうが身長とかは変えれるから外見はあまり当てにできない。 見た目には中学生ぐらいなんだが・・・まあ、オレより歳を食ってることは無かろう。
「え~いいじゃん! 政さんも若い女の子に抱き着かれて嬉しい・く・せ・に~」
「はいはい、お年寄りをからかうんじゃありません疲れて苦しいんです~」
あの後ぴこ(ぴこぴこの呼び名)を引き剥がしたり、剥がされたぴこがブーたれたり、
「そんでもって~こうやって~トウ! こうかな?『ピロン!』・・・あ、とれた!」
「「「「おめでと~」」」」
んう? ぴこがジャンプして空中で体勢を変えた瞬間『ピロン!』というシステム音がまた鳴った。 はて、なんだろうとシステムログを見る。
【『教え上手』を取得しました】
【『師匠』の称号を取得しました】
UC『教え上手LV1・00』PS
弟子のキャラクタースキルの取得率SLV分UP
弟子の人数で経験値取得に小補正
称号『政十郎の弟子』の貸与システム取得
条件・・・規定人数にスキルを教える
「こんなのが入ったな・・・」
「え~何々~・・・おお~政さんはおっしょさん!」
「ぴこさんや・・・それだとオレは坊さんみたいなんだが・・・」
「『師匠』ねえ・・・あれ? チョットみんな・・・さっき取り方教えてもらったスキルよく見てみろ」
「あ!? 一番下に伝授『政十郎』ってある~」
「へ~ここまで凝ってるのか・・・」
とりあえずシステムウインドウを出し増えた『弟子指定』を見てみる。
「弟子指定ってシステム試したいんだけど・・・誰かやってもいいか?」
「「「「「はい!」」」」」
オレ以外の全員が手を挙げた。 チャレンジ精神あるのが集まってるな・・・いや、好奇心か?
「あんたら・・・変なところで息があってるよな・・・っと全員っと~ほい送った。 みんなはいけるがスキルを教えてない人は対象外になるそうな」
各自がシステムを見出して確認している。
「へ~・・・あ、きた・・・『政十郎があなたを弟子と認めました』・・・って一方的になるんだな。」
「よく見るとこっちのシステムにも政さんをタゲ(ターゲット)ったら『弟子志願』って出てる・・・押してみた『あなたはすでに弟子と認められてます』だって。」
「ほう・・・今度弟子からやったらどうなるか試してみるか・・・」
「称号『政十郎の弟子』ゲット!」
「効果は・・・師匠よりSTが低いSTに+補正ね結構師匠になる人によっては効果ありそうね・・・うええ?!!」
女の子の出す驚き声にしては色気に欠けるな・・・と変な感想。
「確かにな、高LV者が初心者に・・・っていう初心者救済称号ってかんじだなってどうした?」
調べていた一人が何かに気づいて騒ぎ出すと他の者も気づいた様で目を見張っていく
「ラック・・・補正(+10)ってなってる!」
「「なにい?!」」
「あ、ホントだ! らっき~♪」
ぴこは相変わらずマイペースだな。
「おいおい・・・ラックって最初サイコロ振ったステだろ?」
「うん、幸運値ってあるけどまだ何に効果があるかわかんないよね。」
「そうだな、今までのゲームから考えられるのはクリティカル率アップとかか?」
「ドロップアイテムのレア度または純粋にドロップアイテム数に関係するとかもあるんじゃ?」
皆が幸運値について検証しだす。
「オレはたまたま振った値がでかかったから一点集中しただけなんだよな~後々上げれないようだし鍵開けとかシーフっぽいとこで役に立ちそうなんでな」
「へ~でかかったって・・・聞いてみたいがスキル教えてもらってステ振り聞くのもなんだし、俺よりムチャ高いのはわかる気はする。」
「ネタだからいいぞ、ナント幸運99だ!更にオールステ振り0という徹底ぶり!!」
フッと笑ってネタバラシ
「721!?」「ええ~!!!?」「ナンデスト!?」「きゃははは~~~~ネタネタ~!」「おいおい・・・」
うむ、皆驚いてるな。 いいリアクションだ
うんうんと我が思惑どうり! と、頷いてると『ピンポ~ン』と運営のお知らせメッセージが流れ出す。
『みなさん今日は。 今回は当社の『ブレイクワールド』クローズドベータテストに参加いただきありがとうございました』
「お、運営キタ~~~!!」
『先ほど参加者全てのログイン、またキャラメイキングが終了しました』
「ほう、最後のサイコロオンラインが終わったか・・・」
「振りなおし廃ステキャラ乙?」
「ここで、運営の告知ってデスゲームフラグきた~~~?」
「「「ないない・・・ww」」」
『今回はキャラメイキングでのステータス上位者、各ステータス最高数値の方等にユニーク称号やスキルが送られます』
『おおおおおお~~~~~~!!!!』
周りから歓声が上がる。 まあ200人がこの付近に集まってるわけだしねえ。
『ピロン』
「お!? きたな・・・」
「おお!! 流石ラック99の猛者!」
「やったね師匠~!」
「ってか・・・師匠も十分廃キャラじゃね?」
皆がウンウンと頷いている・・・ヒドイヤ
「何を言う、オレは振りなおし無しのリアルラックキャラよ?」
「「マジで!?」」
「政ちゃんうそつかない!・・・事もある・・・が今回はマジダ」
左掌を前にしてあげる。
「それで、それで? どんなスキルきた?」
「ぴこさん・・・ぶれねえな・・・」
「はいはい、ジジイを急かすな・・・えっと・・・」
改めてスキルを見るが
UQ『禍福は糾える縄の如しLVMST』SW
現在OFF
スイッチをON状態にするとフィールド限定で周りにクリーチャーが溢れ出す!
条件・・・幸運値がプレイヤー中トップの方に贈られます
「「「「「・・・。」」」」」
皆、無言・・・
「なにこれ?」
「敵が溢れてって・・・ダレトク?」
「つまり・・・あれか? ドンドン倒せ、ジャンジャンドロップ?」
「LV上げスキルってとこかな?」
「もしくは金策スキル?」
「敵の溢れ出す数も見ないとMPK増殖スキルになっちまうな・・・」
UQ『ウィークリーラッキースターLVMST』AS
ゲーム内時間において一週間に一回使用可能、幸運値に携わる全てのジャッジの成功率等が大きく上がる
条件・・・幸運値が50を上回った方に贈られます
「・・・こりゃ~使いどころ迷うな」
「何気に万能スキル?」
「夢が膨らむユニークスキル♪」
「テイミングに生産に強化とかかな・・・」
「チョット待って・・・今気づいたんだけど初期スキルポイントって幸運値が大幅に関わるよね?」
「ん~~~たしか基本の50+0.5(『知力』+『器用』)+『幸運』だっけ・・・・すげえ! 少なくとも平均の倍近くは初期ポイントあるじゃん!?」
「しかし・・・ステオール0・・・政さん経験稼ぎとか大丈夫か?」
「まあ、やれるとこまでやってみるつもりではある」
「とりあえず無理そうならてつだうよ?」
「ん、そんときゃよろしく頼むか」
UQ『ドロップアップ オブ ラックキングLVMST』PS
アイテムのドロップ率のアップ
低確率でドロップアイテムのランク上方修正
高確率でドロップアイテム取得時の個数上昇
条件・・・幸運値が99以上になった方に贈られます
「王道スキルきた~~~!」
「何気にしょぼくね?」
「いやいや、確率ってのが気になる」
「高確率って考え方変えたらほぼドロップ増量ってならない?」
「低確率の方は・・・偶にレア出やすくなるってこと?」
「政さん・・・このスキル場合によっては表に出すとPTで引っ張りだこだね」
「能力低いがドロップ保障のアミュレットってか?」
ガイのセリフに皮肉げに肩をすくませる。
「お守りって言うには色気はないな」
「そりゃ、ジジイに色を求められても困るわな」
おどけるように交わす会話にはおごりも無く、いい意味で小気味好い掛け合いが心地いい。
ジンさんなりに気を使っているようだ。
「さて、ネタのお披露目も終わったことだしそろそろ行きますか~~~」
伸びを一つ・・・するほど疲れないのがゲームだと実感する。
「お?そうか、付き合ってくれてありがとう。 俺達はこれから町の拠点になりそうなとこをもう少し探すつもりだけど、政さんは?」
拠点=皆で駄弁る場所とも言う
「オレはちょっとこのままのステで敵を狩れるか試してくる」
「そうか、ほどほどに無理しないようにな」
ちょっと心配そうだ・・・顔によらず結構良い人だ・・・
「ああ、気をつけるさ・・・ところで皆は狩には行かんの?」
「うん、僕たちは拠点見つけたら休憩に入って夜狩をする予定なんだ~」
「そうそう、今は多分街の外は初心者・・・まあ、俺達もだけど・・・溢れて取り合いになりそうなんでな」
「ほら、運営さんが『疲労』が溜まってきたらペナルティあるから適度に休憩や睡眠をとる方がいいっていってたでしょ?」
そう、このゲームは疲労ゲージなるものがあって連続で戦ったりしてるとゲージが減っていきイロンナペナルティをくらうシステムがある。
回復するには宿で寝るとか二時間ログアウトするとか街でノンビリするキャンプする等がある。
基本ゲーム内で半日も狩続ければ疲労マックスらしい
「今出張ってるやつらも半日もすれば引けるだろうし~?」
ぴこが得意そうに胸を張ってる・・・自己主張するほどにはないが・・・
「なんか言った?」
「なにも」
『読心』とか『サトリ』なんてスキル無かったよな?
やけに勘が鋭いぴこ・・・恐ろしい子!
「とりあえず、そういうことなんだが・・・政さんいっしょにPTしない?」
「ガイさんのお誘いは嬉しいんだが今回は色々試したいんで止めとくわ」
「そうか? 気が向いたらメールでもウィスでも送ってくれ」
残念そうだがサバサバとしてる分気が楽になる。 ある意味ガイさんの人柄かもと思いつつ、このメンバーだとリーダーも大変そうだとも思う。
「じゃ、またな! 今度よければ誘ってくれ」
「ああ、そんときゃよろしく!」
「政さんバイバ~イ♪」
「おつ~」
「師匠~またねえ~」
「また~」
各自の見送る言葉に背中越しに手を軽く振ってこたえ、一時目当てのフィールドを目指すのだった。
話の長さは書いた時のテンションに比例します