Ver2.14
そんな中でさらに『魔王』が動いた。
「マツリさん~外で話すのもなんですから、中に入って話しませんか~? またハーピー達も出てきそうですし」
マオウガ・・・。
「そういえばさっきは凄かったねえ~ まさに群がるハーピー達をチギッテは投げチギッテは投げって感じで」
んでお前は人の回想さえもぶっちぎるだろうが・・・
「なんていうか・・・相変わらず空気を読まないというか・・・マイペースというか」
そうボヤキながらソナタが誘う、出てきた横穴に入っていく。
「空気をよむ? やだな~マツリさん。 私は風使いではないからエアエレメントなんか見れませんよう~」
そういや・・・こいつが異世界に移動した時代って、KYとか言うのは無かったか・・・最近の流行り言葉だしな・・・
「そういえば・・・気になったんだが。 ココにいるお前は本当のソナタなのか?」
たしかソナタ達『魔族』と呼ばれた殆どの者達と『ランカー』は、『魔王』と共に魔王の世界・・・元『ブレイカーズ』の世界に旅立ったはずなんだが・・・
「私は・・・そうですね~・・・意識は『思念体』・・・幽霊みたいなものですか」
コメカミを指先で叩き・・・検索・・・ん、思い出した。
「観自在菩薩~行身般若~波羅蜜多時~」
「イキナリ祓おうとしないで下さい」
「昔は性質が悪かったから悪霊になったかと思った。 ・・・まあ冗談はさておきそれがなんでココに?」
「何だ~冗談ですか~この体はココで言うNPCの『伝説の吟遊詩人』という役割のキャラクターの物を借りています。
中身は厳密に言えば本人のようで本人ではない・・・端末、電話の子機みたいなものです」
ある意味どんなことでも素直に人の話を信じるお人よしは健在か・・・
あ~しかし・・・なんとなく久しぶりにジライというか・・・フンだかもしれない・・・
「解かり易く説明すると・・・」
そう言って解かり易く・・・と言いながら、電気ショップの新製品の説明を専門用語で説明する店員の如く、分かり難く解説していくソナタ・・・
そう・・・こいつはやたらと説明好きなのだ。
長いので簡単にソナタの話を要約すれば・・・
『ブレイカーズ』で使っていた『思念体』の複製、加工技術を応用して無機物・・・この場合『ブレイカーズ』のデータ情報をしていたサーバーにとり憑かせた。
これが今目の前にいるソナタの中身。
外側はNPCの本来は『伝説の吟遊詩人』としての役割を持ったキャラクター。
何でもランダムに移動する特性を持ち、ほぼどのエリアにも進入できるキャラらしい。
使い勝手がいいので外見を自分にし(かえ)て乗っ取ったとのこと。
このソナタ自信も本体と『霊的』リンクをしている為、本人と会話してるのと同じ・・・使い魔を作る時の技術の応用とも言ってたが・・・
現実世界にもこの『ソナタ』と同じような端末が各地に『いる』らしい。
この魔将の本来の恐ろしさは、『呪歌』や『魔曲』等の魔法的なモノではなく。 異世界をアストラル方面で繋ぐ『同位体』同士のネットワーク構築と、それぞれの世界に散らばる『使い魔』と言う『目』を通して収集される情報や記録だと思う。
つまりは・・・
「さっきの空気読めもしっかり分かってて惚けたわけだ・・・」
ギリギリ・・・
「ごめんなさい~やめて~今のマツリさんの『アイアンクロー』はシャレにならないからやめて~」
頭を掴まれてジタバタするソナタを見て思い出す。
あのころ昔はよくあった日常の事だと・・・
思えば混沌とした狂った時代でもあったがな・・・
『魔王』が『漂流者』とその過去の『漂流者』の血縁や縁者を守る為に表に出だした頃が、一番混沌としていた時代だろう。
日本やそれ以外の各国の宗教圏での魔女狩りや異端狩りのニュース。
各地の魔法使いや呪術師達の『古参』団体の介入。
異能の力を授かったのは人間の進化だとデモ活動する人々。
ソノ逆に異能は人類を滅ぼすすぎた力と抗議する者達。
『ブレイカーズ』の『ランカー』達による、リアル異能バトルを楽しむ各チーマーや族の抗争。
終末を謳う新興宗教団体に混じる『旧神』『外津神』の使徒の暗躍。
それらの抗争によって最終的にハルマゲドンが起こる! ・・・とか言われてたが結果。
どっかのバカが撃ち出した核ミサイル群は『古参』と『魔王軍』がまさかの共同プレイで排除。
『宗教兵器』『神器』級の暴走・・・まあ、使ってた奴らが暴走してたのも『異能者組織』や『企業の裏』が処理・・・この時『三光』の巫女や『十塚』の商品・・・強化人間、人造人間辺りが特に暗躍してたが・・・
最終的には1999年7月・・・表立った戦争が起こる前に世界人口が5分の1減って終結した。
大まかに内容をいえば『魔王』が『新世界』を造り、『漂流者』等の『異端』の受け皿にした。
人に紛れていた古くからある『魔族』の血筋の多くは同意の下移住。
『ブレイカーズ』から派生した『ランカー』の多くは、好き勝手してたが力の源が『新世界』に隔離されると『異能力』が衰える、使えなくなると知りこれも移住。
その時、当時付き合ってたヤツに供に行こうと誘われたが、オレは残ることで終った。
まあ、フラレタ訳だ。
『新世界』の魅力と『異能の力』があいつにとってオレよりも重かったってだけだ。
そんなこんなで『大移住』が終った後は大変・・・でもなかった。
『アストラル』サイドで記憶等を弄れるソナタには、一定のキーワードに対する『好奇心』『詮索』『疑問』等他を起こすことを制御するのは簡単だった。
翌日には「そんなことあったなあ・・・」程度の瑣末なことになっていた。
残った『ランカー』の中には、持っていた力を取り戻そうとやっきになってたり。
その力をまだあるようにふるまったりして失笑を買ったりする者もいた。
ムー民や今で言う中二病みたいなモノと同列扱いされてたわけだ。
オレ等の一部関係者以外は、『古参』『企業の裏』等の要人や『耐性』持ちの術者等例外はあれ、記憶は時間の忘却の波に消えていくことになる。
・・・だけなら良かったんだがなあ・・・
記憶の残った一部の者達は、経済や世界規模の矛盾の清算に追われることになった。
表に出ることを決意した『古参』団体は、亀が首を引っ込めるみたいに裏に戻ったり出ばったり。
『魔族』の残留者も少なからず裏で貢献してたとか・・・
何だかんだでアレから20数年・・・今に至るわけだが・・・
話に聞くと当時の表裏出てきた技術の残骸で、現在の技術レベルは確実に数百年先を行ってるモノもあるらしい。
何を基準にして先行してるかは分からんがこのVRもその一つだろう。
後、変わったと言えば・・・混乱時にソナタが昔に張った世界を覆う結界が壊れた事。
これについては色んな陣営が責任の擦り合いをしている。
どんな結界だったかよりも、壊れた事の弊害を言った方が早いだろう。
まず、ライトノベル等によくある異世界召還等の影響を受けやすくなった。
結界はどうも異世界からこの世界を隠していたらしい。
ソナタ風に言えば『大切な子供達を他所にあげれません』とか・・・ソノワリに結構放任主義なお父さんだと思うが・・・『子供達のケンカに大人が出るモノではない』ともいっていた。
ともあれ・・・逆もしかりで、『漂流者』意外のモノも流れてくることも出てきた。
まあ、『帰還者』にしても『漂着物』にしても『異世界』に触れたモノは『汚染』されていると認識される国もあるが、それは個人の思想云々でここは割愛。
全てがゼロクリアされたわけでは無いが混乱からは落ち着いた。
何にせよ表向きは混乱前と変わらず、ヘイオンナヒビをおくっている世界だ。
オレは事情を他より知っているだけの一般人。
多少変なコネクションを持っているが、単なるゲームオタクであり、格闘オタク、アニメオタクに毛が生えた程度の資格マニアな趣味人なのは変わりない。
人生まだまだ・・・折角生まれたんだ。 人生楽しんで何ぼだろう?
「ん・・・?」
『アイアンクロー』で持ち上げてたソナタが、猫が伸びるように『プラーン』と揺れている。
「ああ、忘れてた・・・」
「気付いてくれて良かったです・・・」
脇に出してたスキルウィンドウを操作するのにジャマなので『ポイ』する。
「『筋力増加』がMSTしてるな『竜の爪』もか・・・派生技で『竜の顎』・・・技的に形は『アイアンクロー』そのマンマか・・・」
「ヒドイです・・・なんか私の扱い雑じゃありません? ・・・なんですかソノ目は? なんか『新技を試す標的』を見つけたような目は止めません? ねえ?」
抗議してたソナタに視線を向けると、少しずつ後退りながら離れていく・・・
「・・・まあ、いいか・・・それで? ソナタはなんでココにいるんだ?」
「一瞬の沈黙が怖いですが・・・ずっとパソコンに篭ってるのも暇なんで。 今話題のVRを楽しんでみようと・・・あ、なんでまた頭をつかむんですか? あ・・・ミキミキ言ってるんですが・・・それ以上は割れちゃいます~・・・あ」
『ぺキョ!』
・・・と、やったらいくらか胸がすくかもしれんが後が面倒なので止めとこう。
「それで・・・ここはVRで基本的に『ブレイカーズ』みたいなことは起きないよな?」
「以前あった『思念体』の混合による超人化のことなら起きませんよ~そもそもデータのみを脳に送るだけなんで弄りようが無いですし・・・あ、多少の『能力』開発はできるかもしれませんが」
・・・なんか・・・またややこしいことでも起こるってか!?
「あ、でも~デジタル化した精霊や悪魔のデータを、混合して脳に送れば人を超えれますね♪」
「するなよ? どっかのデジタルでデビルなお話じゃねえんだから・・・絶対するんじゃねえぞ」
「ああ、『押すなよ=押せ』ってフリ・・・なぜ首をはさm・・・だめ~それ以上はらめ~首はそれ以上まわらな・・・」
「さて、冗談はこれくらいにして・・・おまえさんが暇つぶしにココにいるのも100歩譲って良いとしよう・・・だが、いいのかソナタ?」
オレの問いに首をさすりながらキョトンとするソナタ。
「何がですか?」
「多分だがオレのこのキャラはシステム側から監視・・・って~か記録をとられてると思う。
そこにお前が移ってて大丈夫か・・・ってことだ」
「おお」
ポンと手を打つソナタだがにこやかに笑うと
「そこは安心です」
「ほう・・・?」
こいつがこんなに自信満々に言い切るときは何かある・・・
「あなたにあった時点からココの倍速を上げておきましたから。
外からは少しノイズがハシッタくらいでしょう」
「ほう・・・ちなみに聞きたいが何倍ぐらいだ?」
「ちょっと軽く256倍dはうっ」
「てめえ、オレを殺す気か!?」
能天気に言うヤツの頭を両手で掴み上げる。
「大丈夫ですよ~あなたなら~信じてますから・・・だから降ろして~」
「ソノ根拠の無い信頼がいっそ清々しいほどに信用できんわ!」
「根拠ならさっきハーピーの群れをやっつけてた時16倍速の思考加速下で、15以上の並列処理を軽く行なえてるから平気ですよ~現に今もフツウに行動できてるじゃないですか~・・・だから放して~」
15以上?
ジタバタもがくソナタを放してやる。
「さっきは良いとこ4つの並列処理だったと思うが・・・なんで15? 盾本体と刃の2つずつの計4つだろ?」
「違いますよ~盾を合わせたのを1として二つ。 二枚刃のノコギリを逆回転に操作で2x2で四つ。 糸2本で二つ。 そこに視覚を封じて嗅覚、触覚、聴覚の三つに統括して視覚変換に一つ。 全体の空間把握に一つ。 攻撃する優先順位選択に一つ。 統括した情報に『心眼』の情報を合成するのに一つ。 オマケに感覚強化や感知系のON・OFFや強すぎる感覚の強弱のボリューム調節まで自然に処理してるのを合わせれば20に届きますよ?」
あれ・・・そこまでは考えなかったな・・・『ヨーヨー』は・・・確かに8つだわ・・・イメージしやすいモノは案外容易く動かしやすい?
「人の脳は私が言うのもなんですが結構優秀なものですよ?
普段でも並列処理を多数行なってるんですから。
処理速度と同時処理限界数は個人の素質と使い方次第なところですが、マツリさんはそこんとこ凄く成長したんじゃないですか?」
なんか我がことのように喜んでいるソナタ・・・ こいつの美点は人の成長を心から祝福できるところだろうな。
悪いところはそれが善悪関係ないところだ。
たとえばオレが殺人等、人を害する技を高めていても同じように賞賛するだろう。
『人殺しが上手になりましたねえ~』とか笑顔で言うだろう事が想像できる・・・
それはさておき・・・
「なら、感覚強化系とかを弄らなければもっと『念動』の処理を増やせるってことか・・・ってか、やたら細かいとこまで詳しいな?」
「それはそうですよ~私はこのVR世界の根源であるサーバーに昔から憑いてるんですから」
えっへんと胸を張ってる。
「まて・・・パソコンっつってたよな?」
「はい、当時の最新機種のパソコンを私の本体が魔改造した一品『MS○2』です」
「このゲームはそんなモンをサーバーに動いてるんかい!?」
衝撃の事実だった・・・
今回のスキル
UC『竜の爪MST』SW
鍛えに鍛えたその指は竜の爪の如く強靭になった
『鉄の爪』の上位スキル
素手、指での攻撃力LV分中補正
貫通能力 斬撃能力 アンチマテリアル
『裂傷』付加
条件・・・『鉄の爪』をマスターすれば自動習得
『裂傷』5秒持続 2秒ごとに『裂傷』を受けた時のダメージの5%の持続出血ダメージ 血液の無い敵には無効
LV6派生技
AS『竜の顎』消費SP15
その握力は竜の牙の如く敵を貪る
素手で掴んだ相手に握撃で持続ダメージを与える
投稿遅れてごめんなさい
先週も休みが無かった・・・
年末にかけて仕事の都合で更新が遅れます
休みの日前日から書き始めるのでそこのところはご勘弁を・・・
今回は久しぶりの2日お休みなので、もう1話頑張りたいと思います
後は年末年始はできれば前の連休のように連続投稿したいものです




