開始前
今回短め
午前の予定を消化して11時半、自室に帰ったオレは少し悩んでいた。
散歩がてらに入った24時間アミューズメントのキャッチャーにハマッテ別段いらないものを取ってしまった。
オレの悪い癖で取ることに夢中になって気がつくと要らないおもちゃとかぬいぐるみの大量に入った袋を抱えてたりする。
今回も『変身ベルト大集合Ver1』なるモノをみて懐かしいな~昔はよくごっこ遊びしたよな~とか、小さい頃爺さんから以外に格闘技の道場に通うようになったのもこういったヒーローに憧れてってのが原形だったな・・・と過去の思い出に浸っていると・・・いつの間にか5種類コンプリートしていた。 ・・・何やってんだ・・・オレ・・・
しかもこれ対象が子共だから大人で肥満なオレには絶対入らんし・・・いや付けようとしたとか遊ぼうとしたんじゃないんだからね? ・・・ちくせう・・・
なんにしても帰りのバイクを考えてかさばるこいつらをどうしてやろうか・・・と考えを巡らせていると部屋の呼び鈴が鳴った。
「ん、だれだろ?」
覗き穴から伺うとしげさんで部屋に迎え入れる。
「ども、しげさん、朝は説明会お疲れ~」
「ああ、一つ肩の荷が降りたよ。 ところで今から少し時間あるかな?」
しげさんの誘いにのって開発陣に面通しとちょっと話に付き合うことになった。
「と、言うわけで今回、限界加速領域テストのモルモットを連れてきた!」
「しげさんひでえ!?」
周りから憐憫の視線とか売られていく子牛を見るような哀れみの視線がオモイ・・・そんな中
「主任! こんな外部のしかも歳をとった男を使うより若い人材の方が効率も成功率もあがるのでは? 僕は反対です!」
20代前半のメガネをかけたイカにもエリートっぽいのが抗議してきた。 歳食ってて悪かったな。
「倉持君・・・それはすでに決を取って決まったことだろう。 それに今回は全年齢で稼動する予定なんだ、ある程度高齢の方が制限がかかって良いともあっただろう?」
倉持か・・・はグッと言葉に詰まるとオレを睨みながら更に言い募る
「で、でも限界加速のテストはどうなるんですか!? 記録を打ち立てる機会がふいになります! いっそのことテスター達で適応するものを秘密裏に「人体実験しろってか?」んな!?」
「あんたには話してない!」
突っかかってくるのにため息が出る。
「契約書の文面を良く見たか? それで事故があったら誰がどう責任を取る?」
「それは、僕が!」
「どう責任を取るかは?」
「このプロジェクトから撤退する!!」
まわりが苦笑しているのも気づいてない・・・だめだな・・・
「どうだ? 僕だってコレぐらいは覚悟があるんだ。 いっそのこと僕が被検体でやったほうが「それで?」何?」
「撤退してからどうするかと聞いている」
「さっきから後から後からだしやがって・・・それで終わりだろ!!」
こいつは段々ヒートアップしてるがホントにわかってないようだ。
「一つ言っておくがオレは後から質問を繰り出してるんじゃない。 倉持と言ったか? あんたがちゃんと答えてないからだ「!? ちゃんと!」まあ、最後まで聞け」
手で待ったをかけ話を続ける。
「加速の記録を伸ばすと言ってたが検体がそれに耐えられなかった場合の後遺症は知らんのじゃないか?」
「ふん・・・そんなこと知ってるさ、情報酔いで三半規管や感覚が麻痺するぐらいだろう!!」
鬼の首をとったようなといったところか? 得意げに言う倉持はやはり知らないみたいだ
。
「表向きの情報はな・・・実際はそれが数年続き、精神失調をおこし自立神経障害、加速した脳の情報で心拍数の異常が起こり・・・最悪血流が脳を圧迫して毛細血管に大ダメージ、死亡または脳死。 さあお前はどう責任をとる?」
周りがざわざわとしだす
「そ、そんなのなるかわからないじゃないか・・・」
顔を引き攣らせた倉持が苦し紛れにはいたセリフに頭に来た
「わからないじゃない! そんな曖昧なことで覚悟なんて使うな!! いい加減な情報で仕事すんな!! 曲がりなりにも人を使うなら責任を取るなんて軽々しく言うな!!! 責任だっててめえが取れない分上司のしげさん、果ては会社の上層部が取るんだろ! てめえの言ってる責任ってのは逃げと同じだと気づけ!!」
「まあまあ、まっちゃん部下が失礼したのはすまなかった私の方からも謝る。」
しげさんが間に入ってオレと倉持を遮る。 しまったな年甲斐も無く怒りを面に出しちまった。
「あ~オレも怒鳴って悪かった。 皆さんお騒がせしましてすいませんでした」
深く頭を下げるオレに
「いや、良いこといった!」
「怒鳴るのはいただけんがもっともだ」
「逆に勉強になったよ」
とかのフォローの一言一言ありがとうございます。
「おっと時間かな? ちょっと過激な紹介になったが彼の人と也は良くわかったと思う。 しっかり見てやってくれ!」
「「「「「はい!」」」」」
しげさんの言葉に皆が答える・・・いいねえ息が合ってる・・・って倉持がいつの間にかいねえ? まあいいか。
「では、よろしくお願いします。 じゃあ時間無いし飯食って会場にいくわ」
「ああ、また後で」
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「主任、実際彼のサポートはどのようにするのですか?」
「普通のプレイヤーと変わらんよ」
「特にサポートAIを付けたりLVやダメージ操作をしないんですか?」
「ああ、そういうのはあいつは嫌うからな・・・追加でだが」
「はい?」
「あいつのインスタンスアクセルは初回16でやってくれ」
「!? 16・・・倍ですか!? ムチャでしょう! さっきの彼の言った後遺症が「大丈夫だ」へ?」
「あいつは16倍の経験者だ、それに・・・」
重本はポケットからコピーした四つ折の紙を部下にわたす。
「適正チェックの写し・・・!? この数値ってホントなんですか!?」
「ああ、まっちゃんは昔あの前作『ブレイカーズ』のランカーで生存者の一人だ」
「あの・・・悪魔のゲームといわれる・・・なるほどわかりました」
「あとはバイタルチェックとプレイ中の身体の監視とプレイ行動の記録を頼む。 上手くすれば広報部に貸しを作れるぞ」
「? はい、わかりました」
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会場はホテルから5分ほど歩いたVRホールと言われる多目的イベント会場だった。
「でっけえなあ~学校の体育館2個分ぐらい400m四方ってとこか?」
すでに列ができていて最後尾に並ぶ。 そういえば会場の人数が少ないと思ったが実際の募集人数追加の100人は明後日に合流するらしい
そのまま何事も無く列も進み受付にパンフの番号を掲示するとネームプレートをもらった。
「それを付けて矢印の案内に従ってください」
はて、矢印? と思ってると足元の廊下に矢印が浮かび進んでは消えまた浮かぶを繰り返している。
「これに付いて行くの?」
「はい、お楽しみください」
にこやかに送り出されて矢印に付いて行った。 しかし・・・余談ではあるがここの受付嬢は美人が多いな・・・。
「っと・・・この部屋かS-1と」
両開きの自動扉にS-1と大きく赤字で書いてある。
扉の前に進むと音も無く開いていく。
部屋には医療用カプセルのようなものの横に一人の男がいて、タッチボードを操作していた。 先ほど開発室にいた人物だな名前は・・・
「あ、先ほどはどうも、桐生と言います。 これからあなたの担当になりますのでよろしくお願いします。」
医者独特の雰囲気を持った30代のやさしそうな人と言うのが印象か
「こちらこそよろしくお願いします」
挨拶もお互い終わり説明を受け服を脱ぐ下着でも良いが服は全部脱いだほうがいいらしい。 なるほど個室になるわけだ。 ちなみにカプセルはホントに医療用でバイタルチェックのためと保温、保湿の為。 VRに必要なのは脳から身体に流れる電気信号をカットするチョーカー型の遮断機と頭にかぶるメット型の脳波変換機だ。
今回ここまで大仰な設備をやってるのはオレだけらしい・・・やっぱなんかやだな・・・もるもっと・・・
微妙な顔をしているオレに桐生さんは笑って体感的には快適な睡眠空間で半身浴に浸かる感覚でリラックスできるとはげましてくれた・・・
そんなこんなで素肌に電極らしきものをたくさん付けられカプセルにねころがる。
「内部から開ける方法はわかりましたね?」
コクリと頷く。
「では、僕らの作品、存分に楽しんでください! 御武運を」
そしてカプセルは閉じられ適温の温水のようなものに浸かりつつダイブした。
次ではいります?