Ver2.021
「おや、ご休憩ですか?」
桐生さんがログアウトしたオレに気がついて残念そうに声をかけてきた。
「?・・・ええ、時間は昼前だと思うんですが早めにね」
「そうですね~ビュッフェは昼に混みだしますし・・・それにもう明日からの参加者がちらほら来てるようですしね」
「ああ・・・第二陣の100人ですか」
説明会での事を思い出す。 追加人数の100人は後日参加と言ってたな。
「そうです・・・だから今日からビュッフェ以外にも飲食店街が昼から営業してるはずですよ。 あ、テストとしての営業ですから割安になっててアンケート用紙を記入して出せば無料になりますよ」
「・・・めんどくさくなければ値段によって書こうかな?」
「・・・確かに値段が安いのに書くのは面倒ですか・・・」
微妙な顔をして答えるオレに苦笑いで答える桐生さん。
「それにこれも使える場所なんでしょ?」
今朝に部屋のカードキーを預けるときにフロントで貰った昨日の1位賞金である1万円のマネーカードを服架けの上着から取り出し示す。
「あ、そうですねここの一部を除いた全施設使えますよ。 後・・・遅ればせながら1位獲得おめでとうございます」
「ありがとう・・・と言うべきかなんか釈然としないんだが・・・」
オレの返しが微妙だったからか微妙な顔で笑われた。
何にせよ人のいる施設や自販機はほぼいけるそうだ。 ただアミューズメントにある昔のゲーム機体やコイン投入型の乗り物にポップコーン等のスナック製造機、動物型ゴーカートやなつかしのヒーローにまたがる物は当時のままだそうな・・・懐かしいものもあるものと関心するべきか・・・?
「とりあえず昼飯に行ってきますわ」
「はい、私もついでにお昼にしときます。 いってらっしゃい」
やはり汗だくなので水を補給。 シャワーを浴び着替えて出る。 出る前に桐生さんがオレがつけてた首の装置とにらめっこしてたのを見るに出力を上げてもオレの身体反応が変わらなかったのだろう・・・さも無きゃ汗だくにならんしな・・・約2kg減順調なようだ。
所要も済まし入り口で待ってる。 暑い・・・影になってるとことはいえ日中の昼前エアコンのかかってる室内に比べると雲泥の差だ・・・そんな風に思ってると、甘いミルクみたいな匂いを感じ振り返ると同時シャツを引かれた。 その下方に目を向けると鮮やかな金髪のつむじとツインテールが見えた。
って・・・金髪? チカが髪を脱色して背が縮んだ!?
「please・・・Have the kindness to help me・・・タスケテクダサイ・・・」
~~~~~~~~~~~~~~
『それでキャロは兄貴を探してるんだな?』
『うん・・・』
歳の頃は中学生ぐらいのこの子の名前はキャロル・レイリア・フォン・ロンディアルと言い。 オレの頭一つ以上低いので140もうチョイくらいかの身長の金髪ツインテール・・・狙ってるとしか思えない?スレンダーな容姿である・・・ 今日兄と一緒にここに来たベータテスト参加者とのこと。 今は英語で・・・話し方からブリティッシュ・イングリッシュだろう・・・イギリス方面か上流階級っぽいお嬢さんのようだ。
日本限定のイベントじゃ無かったのか?・・・と思ったが国籍は日本で父親は日本人で母がイギリスの方らしい。 実際キャロは日本語も話せるが間が空くので得意なほうの英語 (『』内)で話しかけたら安心したように可愛らしく笑った。
その後はさっきまでのしおらしさは無く兄の事にことさら文句を言っている。
『大体兄様は面白そうな物を見かけたらすぐ走り出して消えちゃうし。 何時も落ち着きが無いし。 女の人にデレデレするし・・・』
淀みないマシンガントークにウンウンと苦笑して相槌をうつ以外できん・・・ 要するにキャロの兄上はここの施設に感動してあちこち走り回ってキャロを連れまわした挙句にいつの間にかいなくなってた・・・逸れたらしい・・・
その後は道を聞こうとしたのだが・・・キャロが話しかけると決まって挙動不審になって愛想笑いを浮かべながら逃げていってしまう。
おそらく英語で話せないからとか・・・まあ日本人ではよくある光景だ・・・恨んでくれるな、全てがそういう人ではないとフォーローしておく。 最後にオレを逃がさない為に先にシャツを掴んだのは良い根性してると思う。 幸いオレは英会話は英検はもとより知人にも英語圏内のモノはいるのである程度は話せる・・・多少スラングが入るのはご愛嬌?
『まあ、なんだ・・・キャロの兄貴もここに来るのを楽しみにしてたみたいだけど・・・今は流石にお前のことを探してるんじゃねえか?』
『・・・そうかしら・・・兄様のことだからまた女の子に声をかけてまわってるんじゃないかしら?』
『フン!』と、鼻息荒く言い切るが・・・キャロ兄・・・信用ねえな・・・
『まあ、お前さんの兄貴ならさぞかし女にモテルだろうな』
『?・・・そうでもないと思うけど・・・どういう意味?』
今までの怒りがウソのように引っ込み不思議そうに隣のオレを覗き込んで見つめてくる。 アメリカの方では顔を見て話すのが当たり前だが日本でそれをするとキャロの場合容姿が整ってる分勘違いする野郎が多そうだ・・・
『ん、他意はねえがお前さんが別嬪さんだから、兄貴もそこら辺はイケテルんじゃねえかと思っただけだ』
急にキャロの顔が赤くなる。 白人特有の白い肌は血の巡りが分かりやすいもんだ・・・って言い方がまずかったか?
『そ、そそそ・・・そんなことないわよ!? 私は母様似で兄様は父様似だし!』
それは暗に父親があまりモテナイと言ってるようなもんだと思うが・・・あえて言うまい・・・
『それに兄様はあなたみたいに紳士ではないから女性にはあまり興味をもたれないじゃない? あなたは逆に言葉使いは乱暴だけどね』
『話し方は勘弁してくれや。 会話を習ったのがあまり育ちの良いやつじゃなかったからこうなったんだ。 日本語じゃもう少し話し方はソフトだぞ』
『フフッ・・・OK~そういうことにしとく』
キャロは口元を押さえ含み笑いを浮かべつつも納得してくれたようだ。
『さて、そろそろツレが来てもおかしくないんだが・・・合流したらホテルのフロントで放送でもしてもらうって事でいいな?』
『ええ、こんな炎天下で探し回っても疲れるだけ出し。 泊まる場所は決まってるならそこにいれば間違いないでしょ?』
『そうだな・・・っと来たみたいだ・・・ん?』
「そんなこと言わずにさ~ランチでもいっしょしようよ~♪」
「だから約束してる人がいるから間に合ってます~!」
軽薄そうな猫なで声のキンパツだが日本人顔のなんかアンバランスな男。 そいつがチカに袖にされてる?
「そっちの子もねえ♪」
「去れ」
「しつこいですね・・・」
温海・・・他人には容赦ないな・・・ってか華乃がヤバげな雰囲気を纏ってきている・・・危ないな・・・男の方が心配になってきた。
『キャロ・・・スマンが・・・あ、おい!?』
横にいたキャロがイキナリ駆け出した。 金髪・・・もしかしてあれがキャロの兄貴か? ・・・確かに似てないなモロに日本人っぽい顔のつくりだ・・・ってか昨日もこんなことなかったっけ?
まあ、探し人が見つかって良かったな・・・~~~へ?
「ニイサマノ・・・バカヤロウ!!」
「グフウ!?」
駆け出したキャロがカタコトな日本語で叫びながら見事に加速していき、感動の再会がきりもみ式のドロップキックの炸裂で始まった。
イキナリのことに3人が加害者と被害者に、どう反応すれば良いか分からず硬直してる。 さもありなん・・・オレだってついていけん。
「サン・ブラスト!(息子破壊)」
「ノウ!」
ドロップキックでよろめく的へのキャロの低い身長を生かした低空肘打ち
「ゴールデンクラッシュ!!(金的潰し)」
「ぐへえ!!」
痛みに俯いた首に手をかけて抱き込みながらの膝蹴り
「エレクトリックサンダーーーバイブレーション!!!(電気アンマ)」
「のへええええ~~~~~~!!!」
くずおれた生贄の両足首を掴んでのフィニッシュホールド
どっかで聞いたような技名に流れるような技の数々・・・股間に対して一方的だが・・・
「正統派プロレス技は最初だけだったか・・・」
「感想はそこ!?」
「あ、師匠!」
「お待たせしました」
温海ナイスツッコミ・・・ではなく・・・この混沌とした状況をどうするべきか・・・
「よし、ほっとこう!」
「じゃあ、いきましょう」
「ちょっと・・・師匠!?」
「心情としては同意するけど・・・いいの?」
「冗談だ・・・そろそろ止めてくる」
流石にほっとけんしな・・・しかし華乃は素で同意したな・・・侮れんやつだ・・・
『はい、ストップ』
執拗に兄の股間を足蹴に攻め立てるキャロを羽交い絞めで引き剥がす。
「ハナシテ、コレジャトドメヲサセナイ!!」
『さしてどうする!?』
思わずキャロの頭を張り手ではたく。
『アウチ・・・オウ、ジャパニーズツッコミ? 父様にもぶーたれたことないのにと言う場面?』
『冷静になりやがれ・・・ほれ・・・兄貴が白目むいてるぞ・・・』
『大丈夫! 何時ものことだから』
ふんぞり返って誇らしげなキャロ・・・言動から見てオレと同類の趣味人らしいがギャグマンガでも無いのにリアルであんなことしてたら死ぬぞ・・・
『何時もあんなことしてるんかい!? ・・・確かに・・・なんか知らんが悦に入った表情で落ちてやがるな・・・』
そんなキャロ兄の表情は微かに笑っていた・・・案外丈夫だな~わからんやっちゃ・・・
「ビショウジョ二コカンヲセメラレルナンテゴホウビデス・・・ッテヨクイッテル」
『止め刺しといた方が世の為キャロの為になりそうな気がしてきた・・・』
思わずため息が一つ・・・
『そんな・・・私のために兄様と争う決意を固めるなんて・・・』
演技っぽくイヤイヤと首を大げさに振りながらヨヨヨ・・・とくずおれるキャロ・・・なんでそうなると思いつつ演技が堂に入ってるなと思う。 ・・・ってか猫かぶってたな・・・半脱ぎだったようだが。
『アホなことしとらんで兄貴連れてくぞ!』
『そしてそんな私は罪作りな女・・・アウチ!? 二度もぶったな!?・・・チョット満足・・・』
演技を続けるキャロに軽くチョップをかまし伸びたキャロ兄を担ぎあげる。
「さて、さっさと行くぞ・・・ってどうした?」
3人娘がそれぞれの表情でオレを見ている。
「師匠・・・英語話せるんだ・・・」
「凄く流暢にスラングを口にしてたけど・・・更に政さんの謎が増えたわ・・・」
「・・・・・」
三者三様の意見だが華乃からは無言の尊敬のまなざしで穴が開くほど見つめてくる。
「華乃は英語が苦手で唯一ダメな教科だからね・・・逆に話せる人がカッコよく見えるみたいよ?」
「英語なんて普通の人が話せる言語じゃないです!」
「それを話す人種の前でそういうこと言うんじゃありません!」
華乃にも軽くチョップのツッコミ・・・そこ・・・何故嬉しそうに頭を抑えながら頬を染めるかな?
そんなこんなでホテルに向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ハッハッハ~キャロは何時も容赦がないな~」
アルバートことアルが能天気に笑う。
こいつの股間は超合金ででもできてるのだろうか? そんな馬鹿らしいことを考えるくらい復活は早かった。
「ワタシヲホットイテナンパシテルアニサマがワルイ!」
オレも含め同席してる3人もウンウンと同意する・・・彼に味方はいないようだ・・・
アルを担いでホテルに向かう途中に気がついた彼は『どうせなら女の子の背中が良かった・・・』と開口一番ほざいたので無言で脛の痛いつぼを圧迫してやったのは躾の一つだ・・・
その後なんだかんだで後をついてきた兄妹と食事を取ることになって冒頭に続く。
「それにしてもアルの方は大丈夫かよ?」
小柄で体重も軽いキャロとはいえ、急所にあれだけ打撃を受けて今はケロッとしてる。
「鍛えてますから♪」
どこぞの鬼みたいな返答が帰ってきた。 いったいナニをどう鍛えてるんだ・・・この男は・・・
「アニサマハトウサマ二ヨクケイコをツケテモラッテル・・・ワタシハイツモノケモノナノ」
キャロがアヒルみたいに口を尖らせて愚痴を言う・・・こんなところは歳相応に可愛らしくはある。
「キャロ・・・いつも言ってるだろ~お前がやるには危ないからって・・・主に僕が(ボソ・・・)」
なんかアルの口から本音が出たようだが黙っていよう。 しかし何も師事を受けずにさっきの動きか・・・最後はなんだったが案外才能あるんじゃねえか?
「・・・・・・・・」
それにしてもさっきから華乃が何となく何か大人しい・・・というかアル達兄妹を睨むように見てる気がする。
「なあ・・・華乃?」
「あ、・・・なんですか政様?」
オレに声をかけられて初めて気がついたように姿勢を正す。
「ん~なんかあったか? らしくなく眉間に皺がよってたぞ」
オレがワザと眉間に皺をよせて大げさな表情を作ると、華乃は慌てて額を隠して真っ赤になった。
「!? そそ・・・そんなことは・・・」
「ははは、冗談だ・・・にしてもどうした?」
慌てふためきながらも落ち着きを取り戻し小動物のようにこちらを上目使いで見つめてくる。
「う~~~・・・いえ、私の思いすごしでしょうから・・・ご心配おかけしました」
「そっか? そういうならまあいいが・・・そろそろ戻らねえか? 時間も結構経ってるし」
「あ、ホントだ・・・そろそろここも混み出してきたみたいだし」
「そうね、今から行ったらランチ組みと入れ違いで空いてるかもね」
「そういえばもうこんな時間ですか・・・」
オレの言に3人が席を立つ。
「あ、皆行っちゃうの? これから話を盛り上げていこうと思ったのに・・・」
「スマンな・・・俺達は丁度ベータテストの最中なんでな」
「オウ、ソウイエバソウデスネ・・・マタアエル?」
キャロが少し寂しそうだが仕方あるまい。
「そうだなオレはゲーム内では政十郎って名前だ。 良けりゃゲーム内で遊ぼうや」
「ウン、ヤクソクネ!」
「その時は私たちとも遊ぼうね~キャロちゃん」
「ウン! ジャアネ!」
そういって兄妹と別れた。
「政さん・・・キャロちゃんに何気に懐かれて無かった?」
「そういえばそうだね~」
歩いてる途中思い出したように温海が問いかけてきた。
「オレが無害そうだからってのもあるんじゃねえかい? よく街中歩いてると道聞かれるし」
「何となくわかります・・・この人なら大丈夫って言うか・・・安心感があります。 これも政様の人徳というものでは?」
そんな立派なモンじゃねえだろ? いいとこ無害そうなおっちゃんだからだろうに・・・
「良い人そうで話しかけやすいんじゃないかな?」
チカが歩きながら前かがみでオレの顔を覗き込んでくる。
「なんにしても・・・これ以上ライバルを増やされても困るわね・・・」
温海がとんでもない事を言い出した・・・真面目な表情だけに始末が悪い。
「まて・・・何でそうなる!?」
「・・・女の勘・・・」
「「・・・・・・・・・・・」」
温海の言葉に二人が真剣な顔で黙り込む・・・おい・・・
「あいにくオレはそっちの趣味はねえ・・・その話は終いだ・・・さも無きゃお前らとの付き合い方を考えなきゃならん」
「あ、ウソウソ。 冗談じゃない~♪」
「私ハ政様を信じてますので」
「ウンウン!」
「イキナリ手の平を返すな・・・ったく!」
何にせよこれからも濃いヤツが増えそうな気配を感じながらも歩みを速めたのだった。




