Ver1.17
『やはりセイは勇者だ・・・あんなに簡単に我等が苦戦した黒い獣を翻弄し倒してしまった。』
ガグの手ばなしで褒める言葉がむずがゆい・・・だが・・・
『この歳でそう褒められると照れくさいな・・・が心からの賞賛だと誇らしいな』
『ガ族は無骨なれど戦士の一族ウソやセジを口に乗せるを災いを呼ぶと教えられる』
『なるほど、誇り高く純朴な部族なんだな・・・そんな部族の戦士に勇者って言われれば悪い気はしないな』
もっとも・・・リアルで勇者プレイはしたくないし呼ばれたくもねえが。
先ほどまで敵ではあったが考え方に好感がもてる。 それに強さを求めるモノとしてお互いに相通ずるものを感じる。 ゲームのモンスターでもネームド(名前持ち)はしっかりと自我を形成しているようだ。 ペット・・・もとい守護精霊になった十一もだが豪く高性能なAI(人工知能)を割り当ててるようだ。
「さて、仕上げと行くか・・・離れててくれ」
そう促して、巻物・・・でなくスクロールを軽く咥え九字の印を二つ結び『キュアポイズン』を発動。 巨狼に淡い光が灯り身体の有毒なものを浄化していく。 『猛辛』のアイコンもほどなく消えた。
「って言ってもどう起こそうか・・・」
サイズ的に殴って起こすのも手かと思いながらスキルで良いのがないかを見ていくと・・・『盗賊』スキルの『ピックポケット』が目についた。
「全く関係ないが・・・おあつらえむきに気絶してるし、やってみるか・・・」
『ピックポケット』所謂スリであるが・・・このゲームではモンスター等からアイテムを掠め取ることができるスキルのようだ。
そしてここに高LVッポイモンスターさん一匹が無警戒で寝てらっしゃるということで・・・
「ちゃ~んす♪」
「キュウウ(ますたーまた悪そうな顔)」
「ぐ、ぐる・・・(う、うむ・・・)」
二匹のツッコミは聞かなかった事にして・・・
『ピックポケット』を使おうと意識した時APが10減って両手が淡く青く発光した。
「これで攻撃すりゃいいのか・・・よっと!」
右手で軽く叩く
『チャリ~ン♪』
手加減したのでダメージ皆無だが、叩いた手の平が巨狼に埋まった。 何か掴んだ感触。 とたんになにもしてない左手も光が消え、なんか小銭落としたような音がした。 確認にシステムログを開けて見ると・・・
『802Cを奪った』とあった・・・何気に今までの収入では高いんだが・・・納得いかんな・・・
『ピックポケット』スキル使用不可アイコンが消える。
「今度は・・・両手やってみるか」
両手が光だし巨狼の体の奥にあるものをつかみ出すように両手を突っ込んだ。 こんな無防備には戦闘中は絶対できんな・・・と思いつつ手探りで探す手に何か感触があったので掴んで引っ張り出した。
『『曲刀の設計図』を奪った』開きっぱなしのログにそう表示された。
曲刀の設計図 ☆×7
必要アビリティ 器用 知力
必要スキル 鍛冶
曲がった剣、曲刀を作るための設計図
斬ることに特化した剣を作る作成ツリーを取得できる
レア度7って結構お高いんでは・・・?
狼さんはまだ起きる気配なし・・・巨狼が起きないか伺ってると視界になにやら赤い点が薄く見えてきた。
「もしや死の点!?」
なんてことは無く長い戦闘時間の経過で漸くこいつの『ウィークポイント』が分かったようだ・・・さっきレア出たとこも赤いな・・・もしかして・・・
「よっ・・・はっ・・・ほっ・・・とっ・・・たっ・・・ふりゃ!」
一心に『ピックポケット』を赤い点に繰り返すオレの横には、開きっぱなしのスキル欄とシステムログが変動していく。
レベル差がありすぎるためか『ピックポケット』を繰り返す度に『盗賊』経験が上がる上がる。 それに伴って『鉄の爪』が素手攻撃判定もあるのだろうすでにマスター寸前・・・今マスターした。 それと共に新しいスキル『竜の爪』がメインスキル欄にセットされた。 上位スキルらしい。
そのまま失敗も何度か連続で繰り返すようになってきたので打ち止めか?
言っても10分ぐらいで巨狼は身じろぎ一つしない。 そろそろ起きてほしいところ・・・最後に考えてたことを試す。
20m弱離れて横たわる巨狼に振り返る。
やることは飛び込みからの変形『双掌打』左右両手での両手突き。 本来は胸の下辺りに両手を添えるような掌底打ちなのだが、空手の『山突き』のように上下に手の平だけでなく軽く指を鉤にして『鉄の爪』『竜の爪』が入るようにする。 最終的な形は勇者の王様の地獄と天国のダッシュからの竜玉の某南の島の大王の名を冠する技の発射体制・・・所謂遊び心な技・・・だが!
「本気でいく!」
スクロールを開いて二つ口に咥え自然立ち。 左手で『エンチャントウェポン』MAX『ディレイ』 右手で『ファイヤーウェポン』もMAX『ディレイ』で印を切る。 元々同時発動は無理だったしディレイを使うから多少の時間的誤差を入れてもロスタイムは30秒ほど。
神の左手に輝く魔光
悪魔の右手に燃え盛る魔炎
それを手を組み合わせることで反発しあうのを強引にからめる、お互いの威力が押し合い揺らめくが消えることも無く交じり合う。
前方の標的に向かい全力疾走
『ピックポケット』発動! 白と赤の両手に青が混じりより混沌としたマーブルが蠢く。
前方「ステップ」圏内半分でキャンセル。 丁度弱点の腹の赤が眼前に見える。 自分の技のみの『震脚』そのまま勁を手へと流し発を高める。 今のゲームキャラのアビリティーもあるのかリアルでは失敗するであろう体勢維持がしっかりでき変形でありながら発勁が成る。 それだけでも威力は出ているが爆発力の開放前にAS『発勁』発動。 現在6LVのこの技は両手に山吹色エンチャント光が混ざり次の攻撃にゲーム内不思議技の『発勁』の威力が出される。 そのまま突き出す動作にのせて『重心移動』で全体重を軸足の踵から上方に突き出される手の平に向け高速で撃ち出す。 接触の瞬間組んだ両手からAS『インパクト』発動。 最後の仕上げに組んでいた両手をめり込んでいく中で開放。 反発してた両手が弾かれる様に広がり『鉄の爪』『竜の爪』の効果を追加した・・・
『ビクン!!!』
巨狼が反射的に震え今までに無い凄い手ごたえ。
巨狼の残ったゲージが一気に半分減った・・・1cmチョイ。
しかし瞬間的に腕が大半埋まり、両手に確かな何かの感触を得た! 咄嗟に両手に掴む。
「ウオオオ~~~~リャア!!!」
大物を釣り上げたような感触。 抵抗をモノともせず引き抜く!・・・前に巨狼が吹っ飛んでいった!?『ピロン!』
「あ・・・もしかして『ノックバック』って威力が低いとダメだったってことか!?」
派手に飛んだ巨狼は、ゴロゴロと転がって数本の木をなぎ倒して派手な音を残し止った。
そして手にはゾ○ダーの核では無く黒い一握りの玉が鈍く光っていた。
「なんにしてもこれでヤツも目が覚めただろう」
巨狼が止まったであろう場所に近づくと狼が横たわっていた。
黒い狼・・・多少知ってる動物園とかに居るような大きさとは一回り大きい気がするが先ほどの『巨』が付くほどではない狼。
『シャッテンウォルフ』と青い文字
「あれ? LVが下がってる・・・!?」
「キャイン!?」
巨狼改め黒狼は何かに怯えるように悲鳴?をあげる。
「・・・ああ・・・オレが怖いのか?」
一歩二歩と近づくが怯えた目でこちらを見つめ敵意は全く見えない。
「キュ・・・キュウ~ン・・・」
縋る様な目で見つめてきて咄嗟に腹を向けて寝転がった。 服従のポーズ?
「ふむ・・・」
腹を撫でようと思ったが両手のエンチャントが持続してるのにいまさら気付く。 さて、己を翻弄して吹っ飛ばして両手をこんなにしたオレを見て怖気付いたってところか・・・おそらくさっきの巨狼なんだろうな・・・こいつは・・・
効果時間が消え『ペットの首輪』を使おうとしたがやはりこいつは『野獣』ではなく『魔獣』に類するもので使用できなかった。
仕方なく諦めるかと思ったがチョット思いついたことを試すことにした。
寝転がってる黒狼の腹に手をのせると『ビクリ!』と硬直するのが分かる。 さて・・・
『負けを認めたか?』
突然の『念話』に『ビクッ!』とした狼は不思議そうにキョロキョロしてこちらと目があう。
『オレがお前に勝った・・・わかるな?』
『まけた』
狼はシュンとして耳を伏せ尻尾を巻いた・・・犬みたいだな・・・モーションとかは犬で代用・・・なのかな? なんにしてもあまり知能は高くは無いだろう・・・それならそれで・・・
『ならお前はどうする?』
『かったモノにしたがう』
やはり動物的な思考のみ・・・念話ができただけこいつも種の中では賢い部類なのかもしれんな。
『よし、ならばお前は食わずに生かしてやろう。 オレについて来い』
『わかった』
黒狼はノソリと起き上がるとオレの顔を舐めてきた。
『『シャッテンウォルフ』は仲間になりたそうにしています どうしますか?』
イロイロツッコミたいシステムのセリフだが、はいと決定する
『シャッテンウォルフをペットにしました』
『エリアボス『シャッテンウォルフ変異体』を初討伐プレイヤーに称号と宝箱が贈られます』
『エリアボス『シャッテンウォルフ変異体』をソロ討伐プレイヤーに称号と宝箱が贈られます』
『強制クエスト【邪神の戯れ】がクリアされました』
『【ゴブリンの安住の地】がクリアされました』
『チェーンクエスト【森の異常調査】のクリア条件が達成されました』
『チェーンクエスト【森の脅威】のクリア条件が達成されました』
『強制チェーンクエスト【血流の伯爵】を開始しました』
選択した途端開きっぱなしのログが一気に流れる。
まあ、それは後回しかな・・・
『セイ・・・改めて礼を言う。 まさかあの巨狼を手なずけるとは思わなかったが・・・』
『いや~前から犬を飼いたかった・・・それだけさ』
『はっはっは! あの苦戦した巨狼を犬扱いか、セイらしいというべきか・・・最後のあの技を見るに手を抜いていた・・・それはないか』
『ああ、あれは思いつきの一回こっきりの技だ・・・まあ、これからは用意すればいつでも使えるがな』
『思いつきで・・・あれか・・・』
ガグが抉れて荒れた森の一角を眺め感嘆のため息をはいた・・・呆れてでは無いと思う。
『セイ・・・頼みがある』
いきなり緊張した雰囲気を出したガグ。
『聞こうか・・・』
こういった改めて頼み事をしてくる態度は何かある。 ゴブリンの集落の復興の手伝いか? なんにしても真剣に聞かないといかん雰囲気だ。
『頼む、弟子にしてくれ!』
『しかたねえなてつだ・・・デシ?』
『ああ、その技の強さや罠の見事さ・・・自分のものにして皆に伝えたい』
『あ~その弟子ね・・・モンスターって弟子にできるのか?』
『ガグが弟子志願してきました受けますか?』
できるよ・・・おい・・・はいっと・・・
『ガグが弟子になりました』
『おお、セイ・・・感謝する』
いきなりガグが五体投地のように倒れ感謝の意を示す。 ゴブリンの礼ってこれなのか? 聞いてみたら最高の礼の表わし方で部族のシャーマン等が精霊に対する礼等もこんな感じらしい。 とりあえず弟子になって一緒に来るなら人間の普通の礼も教えとかんとな・・・と思っていたが先にゴブリンの集落を再興するために戻るとのこと・・・ほっとした反面残念な気も半分はあった。
それはそんな弛緩した雰囲気を壊すには十分なことだった。
本能というか危険感知が警鐘を鳴らす。
上?
開けた広場の木の上の一角がヤケに気になる。
ソコを凝視していると
「あら、私の存在に気付くなんて人間もやるものね・・・いえ、あなたが特殊なのかしらね冒険者さん?」
眩しい月明かりの中に黒い人影が滲み出し女性の声で問うてきた。
今回の取得スキル
UC『竜の爪』PS
鍛えに鍛えたその指は竜の爪の如く強靭になった
『鉄の爪』の上位スキル
素手、指での攻撃力LV分中補正
貫通能力 斬撃能力 アンチマテリアル
『裂傷』付加
条件・・・『鉄の爪』をマスターすれば自動習得
『裂傷』5秒持続 2秒ごとに『裂傷』を受けた時のダメージの5%の持続出血ダメージ 血液の無い敵には無効
UC『鉄の爪MST』SW
今回マスターしたPSはSWに変化
スキル用語
貫通能力
刺突系AS仕様可
視覚的にこのスキルで止めをさした敵は体を貫通します。
貫通後攻撃方向に敵が居た場合命中判定適用でき当たればそのまま攻撃となります。
斬撃能力
斬撃系AS仕様可
攻撃軌道上に敵が複数居た場合全ての敵に命中判定を適用でき当たればそのまま攻撃となります
アンチマテリアル
構造物にもダメージを与え破壊する。
敵防御力の減少
敵武具への耐久ダメージ増加




