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Ver1.16

書けたので投稿

注意

本文の内容はフィクションです。

作中のモンスターへの対処法を現実で実行するとイロイロ大変なのでしないで下さい。

内容は分別の付かないお子様の手の届かないところでお読みください

「でけえ・・・龍○伝とか蒼○の拳に出てきた狼みてえ・・・っと名前はやはりマッカッカ・・・『シャッテンウォルフ』・・・影の狼ね」



 樹上の枝にて『潜伏』しつつ観察を続けるまだ気付いてない? 巨狼はその体躯からは信じられないほど無音でこちらに近づいてくる。 オレに視線は向けずただ前を向いて進む姿は無警戒にも見えるが・・・何か変だ。

 何かがオレに警鐘を鳴らす・・・危険だと・・・!?


 巨狼はオレのいる木に近づくと一瞬止まった後その影に沈み込むように消えた。

 おかしいと感じたのは一瞬! 身体は反応し枝を力任せに蹴ってジャンプ! 背中の布地が何かに引っかかるような感触を振り切り空中に躍り出る。 空中で体勢を捻って後ろを確認すると、木の影から巨狼のものと思われる大きな前足が生えていた。


 「流石・・・影を名前に付けるだけに影に潜む特殊能力か・・・大きさといいボスクラスかよ!?」

 それを見て漸くおかしいと思った事に思い至る。

 そもそもここまで異常なくらいの速度で接近しながらも近場で速度を落とし、無警戒で攻撃範囲に歩み寄る・・・ブラフとしか思えん! 通り過ぎる事を願った一時前の自分を笑いたい気分だ。 大体・・・自分が匂いで感知してるのに狼が匂いに気付かない訳が無い。


 そして着地と同時、右剣を前に軽く突き出し距離を測り。 左剣を身体で隠しカウンターのブラインドアタック(見えない攻撃)を狙う構えをとり待ち受ける。


 そこに巨狼の圧し掛かるようなジャンプアタック。 鋭く大きな爪一つ一つが鋭利な曲刀に見える。 それを右剣を添えるように当て、『重心移動』でソコに全ての体重を集め自分の身体の中の重さを完全に消す。 そして軽い身体を相手の内側にズラし、身体の影から左剣を速度優先で振り上げる。 空中に居る巨狼の追撃の噛み付き攻撃が迫るが・・・その弱点と予想する鼻先に不意打ちを喰らわせる。 手ごたえはある・・・が! しかしそのまま痛み等無いかのように、攻撃はそのままのスピードに乗ってこちらを襲う。『ピロン!』

 『バクン!』と言う感じでそのあぎとがとじられる。


「あぶねえなあ・・・攻撃途中でキャンセルしてステップ回避してなかったら巻き込まれてたわ・・・」


 0・5秒の無敵時間で巨狼の牙をすり抜けたオレは通り過ぎる巨狼を横目に軽口を叩いて落ち着きを取り戻す。 実際だったらあんな化け物狼と対峙してるだけでも心臓バクバクものだろうに・・・しかし・・・



「おもしろい!」



 こんな早く巨大モンスターと殺りあえるとは思わなかったが・・・アクション主体ならやりようもあるし小手先と知恵でいけそうだ。 後は・・・どこまで集中力を途切れさせないかか? 今10LVいってるオレで真っ赤なネームと言うことはおそらく25LV相当・・・しかもボス系? 違ったとしてもレアかユニーク、相手にとって不足無し! さっきの攻撃はやつのHPゲージを少し欠けさせた程度。 逆に1発当たれば・・・十中八九・・・

「運が悪けりゃ死ぬだけさ・・・ってね」

 昔好きだったドラマのセリフ。 死を軽く見るようなセリフだが・・・黙っては負けねえ。 満足な結果を出すために足掻くだけ足掻いて笑って逝く。 ゲームだからこそそんな真似ができるのかもな・・・と自嘲めいた笑みがこぼれる。


 ゆっくり振り返る巨狼の動作はその力の自信の現れか慢心か余裕すら感じられた。


 それに比べてこちらは初期装備・・・

「くじらを果物ナイフで捌けっていわれてる気分だな」


 巨狼が飛び掛る体勢をとる・・・瞬間!

 オレはクルリと後ろに振り返り。

「行け!!」

「キュ!(ホーリライト!)」

「ギャウン!!」

 さっき使った目潰しの閃光コンボ。 そのまま一回転で十一は遠心力で飛び闇の中に消えていく。

「いくぜ!」

 『潜伏』を使い視界を光に潰されて戸惑う巨狼に無音での双剣攻撃! 『盗賊』スキルのおかげで軽い武器しか使えない今の現状では最大火力の攻撃法なのだが・・・1撃二撃惨劇・・・効いてねえ・・・ ダメージは入ってるみたいだが繰り返し怯んでる5秒間で11発・・・1mm削れた? 程度かい!?『パキン!!』


「グルワア!!」

 怒りの反撃をステップで回避。 折れた長剣をしまって『換装』でショートスピアの二槍に変更・・・正直勝てる気がしない。



 その後から1時間ほどは散々だった。



 回避は『オールセンス』の聴覚、嗅覚、の視界でフォローしつつ。 巨狼の不意打ちの影潜行と巨体を回転させる範囲攻撃は『第六感』の危険感知で回避可能。 それ以外は初期だからだろうが取り巻きのモンスターも無く時間と武器の耐久度が減っては壊れ『換装』で装備を繰り返す。 途中武器の威力が上がったが多分スキルが上がったのだろう。 ここまで武器の耐久が減りやすいんだ、そうでなくてはやってる意味も無い。 ちなみに『ノックバック』はONにしてるがこいつには耐性があるのか、ボスやユニークには効かないのか・・・少なくともこいつは一回もノックバックしなかった。


 そんな中、巨狼が低い姿勢になって唸りだす。

 範囲攻撃の前兆をバックステップで距離を取る。

 最後の使用可能武器の短剣を見るとそこかしこにヒビが入り武器破壊の前兆が見える。 ならば・・・

 いままで範囲攻撃が完全に終わるまで待っていたが始まる直前に鼻先狙って一投。 当たるがダメージは然程も無くゲージは今までの努力の結晶で4分の1は減ってはいる。 自動回復がこいつに無くてよかった・・・ 二投目左の短剣が回転が終った巨狼の鼻先に命中する。

「ギャン!」

 そんな悲鳴を上げクリティカルの表示とウィークポイント発見の表示・・・あれ? ゲージが2mmほど減った!?


「巨~体が唸るぞのたうつぞ~♪ ってなるほど・・・鼻の・・・穴ね」


 弱点攻撃で苦しみ紛れに暴れまわる巨体から更に離れ『マジックアローLV3』のスクロールを二枚取り出し口に咥えずそのまま左手で保持。 右手で片手印を組み一回目発動片手でもイメージがしっかりしてればOKなようだ! 三発のエネルギーの矢が鼻に当たりゲージを3mm減らす。

 すかさず二つ目も発動させ命中するのも見ずに背後に逃走。


「魔法攻撃は有効みてえだな・・・他に武器はない・・・な、ん?」


 スキル欄を見ると『ダッシュ』『両手利き』『オールウェポンマスタリー』が10LVに達しマスターしてメインから外れてた。 だから威力が上がったのか・・・あいつにあんまり効果は無かったけど。 そして新しいスキル『浮身』とメインの空き二つ・・・ならまだ武器はある!


 走ってる間に後ろで起き上がる巨狼の気配。 


 走りながらシステム操作。 戦闘中にスキル変換は不可能なのだが空きがある場合のみ入れることだけは可能という抜け道がある。 そして入れるのは『念動』と『念話』。

 手にするのはケダマノからドロップした『丈夫な糸』とスクロール1つ。

 何故か中心に棒が刺さってて綺麗に巻きとった状態で手に収まる。 ゲームの不条理・・・しかし今はありがたい。

『念動』の作用距離 接触

 糸を手に持ってる時点で接触OK!

『念動』の限界重量 1kg

 この糸が500g以上あるようには見えないパス!


 システムを閉じる余裕も無くスクロールを咥え片手印!

 発動と同時に糸が魔法の光に輝きだす。


「エンチャントウェポン道具にも掛かること確認!」


『エンチャントウェポン』

効果時間3分

武器等に魔法を付与して攻撃力と耐久を一時的に上昇させる

威力は魔法LVに依存


 少なくとも3LV・・・これでこの糸の威力は短剣よりも上がったはず。


『念動』使って糸を操る。


 鋼糸やピアノ線、ワイヤーカッターと糸を使った攻撃手段はファンタジーに近年良くみる一つ。

 十一も使うのを見てオレもできないはずは無いと思ってたがこんなに早く使う羽目になるとは思ってなかった・・・

 しかし・・・使えるものは何でも使う!


 後退しながら追撃してきた巨狼の爪をかわしざま2mほど伸ばした糸で剣のように切りつける。 手ごたえは軽い・・・が、前足を薙いだ糸の一撃は目視できるくらいにはゲージを減らした。


「よし、いける!」


 口では軽口で誤魔化しているが1時間以上の戦闘はゲームとはいえ精神的に辛い。 エンチャントも3分の縛りがあり、スクロールのエンチャント系も数は無い。

『ますたーできた!』

 そんな時待ちに待ってた十一の『念話』が届いた。


「よっしゃ~~~その言葉待ってたぜ!」

 叫んで巨狼を振り切って全力ダッシュ!

『作戦名!』

『ふぁいな○ふゅーじょん!』

『『開始!』』


 作戦名ふぁい○るふゅーじょんとは、名前と作戦内容に別段関連性は全く無く。 オレが巨大モンスターを察知したおり、それ等と釣った集団が多すぎた時の対応として、退避作戦を事前に立てたものである。 作戦名はその場のノリでつけた。 知る人ぞ知る勇者の王様からである。


 これが勝利の鍵だ!

 『十一の知力極振り』



 巨狼の速度も速いがオレの全力疾走も負けてない。

 振り切ろうと思えば振り切れるようになったようだ・・・が、

「このままやられっぱなしはオレの流儀に反する・・・し、十一のがんばりの結果にも報いねえとなってな!」

 付かず放れず一定の距離で後ろに向かって牽制の光る糸攻撃を繰り返す。

 余裕ができたからか、ふとスキル画面を見る。 『浮身』の説明を流し読み理解した。 読んでる途中数字が変動するのを確認。 『第六感』はもうすぐ10LVに達するし攻撃するたびに『念動』の経験が面白いほど上がっていく。 そして秒ごとに全力疾走と『念動』で減っていくAPが糸攻撃が当たる度に回復したまに上限値も上がってる・・・

 一体この巨狼のLVは幾つなんだ?

 改めて自分がいかに無謀な戦いを行ってるか自覚した。


 途中何組かのゴブリン達を巻き込んで巨狼とゴブリンのトレイン状態。

 知覚範囲内にプレイヤーは居ないと思われるが・・・明日からは自重しないとMPK(モンスターを利用したプレイヤーキル)の恐れがある。


 そして目指す森出口手前の開けた場所を発見!

『ますたー見えた』

『そのまま待機、引っ張ってる奴らは全部入りそうか?』

『大きめに作ったから大丈夫・・・のはず?』

 十一に作業させたから成長したのか少し喋り方のしたったらずなところが抜けてきたようだ。 もしくはオレが戦闘中にスキルが上がっていったのと同じ理屈か?

 それはさておき糸の光もとうに切れ、開けた半径7mほどの広場の中心に立ち群がるモンスター達を迎え撃つ準備を整えた。

 月光に照らされ空に視線を向けニヤリと嗤う。


 本来はこの作戦が成功したら逃走する予定だったが引っ張る最中に更に空いた『第六感』MAXのあったスロットに『ディレイ』を入れる。

 片手にスクロールを持ち糸を背後の木に『念動』で絡める頃巨狼が到着。

 攻撃を回避しながら待つとゴブリンの集団が目算13体森から抜け出して来た。 良く見るとネームドモンスターらしきモノも居る。名前は『ガグ』でネーム色は青すこし上ぐらいか。 しかしここまで追ってきたのはこいつらにとっては運が無かった。


 こちらに群がってくるゴブリン達がオレに到達する前に丁度巨狼が姿勢を低くして唸りだした。 全体攻撃態勢、いまだ!

『ファイナル○ュージョン承認!』

 糸を念動で折りたたみちじませ同時に『浮身』で一瞬体重を0にする。

『ふぁ○なるふゅーじょんぷろぐらむりりーす!』

 十一は念話で答えながら、上空に設置作成した糸を編んだ網を投下。 半径7mの広場を覆う巨大網が振ってきた。

 その間糸の引きで離脱。 普通にバックステップでも良かったが何となく新しいスキルを使いたかったのが本音である。


 結果だけ言えば作戦は成功した。


 騒ぐゴブリン達を巻き込んで巨狼もろとも網の中の捉えた。

 ここで思わぬ誤算。 巨狼が網を食い破りだしたのだ。

「まず!」

 念の為に用意してたスクロールを片手印発動! 間に合え~~~!!

『バチバチバチ!!!』

「ギャイン!?」

「「「「「ぐぎゃあ!!?」」」」」

「「「「「「「ガバアッガッガガガ!!!?」」」」」」」

 火花の散るような音が連続と巨狼とゴブリンズの悲鳴が重なった。

 『サンダーウェポンLV3』の発動が間に合ったようだ・・・がそこで終わりではないよ。


 『ディレイ』続行威力拡大!


 元々エンチャント系の魔法は持続時間3分がデフォルト。 そしてこの『サンダーウェポン』は接触したものへの持続ダメージ2秒に一回か接触毎に追加ダメージ扱い。 その度に『電撃麻痺』(行動する度にランダムで硬直効果アンド行動キャンセル)×5秒がかかる。 一応一回掛かってる状態だと3秒間の『電撃麻痺耐性』が30%付くが・・・網全体に絡められた状態だと・・・


 二秒ごとのダメージ→抜け出そうと接触ダメージ→行動による『電撃麻痺』のダメージ→最初に戻る


の、泥沼コンボが出来上がった。


 それを今回一回15ダメージ(LV×5ダメ)くらいでこのLVの敵だと15分の1くらいのダメージ。 狼さんにはデバフくらいで1mmもへらねえが・・・10LVになってMP20から何故かMAXMP136になったオレの全力全開のディレイを喰らえ!

 MPの1の桁がドンドン減っていく中大体2秒で10の割合で減っていく・・・その10の位が下がるたびに15→20→30→40→50と持続ダメージが10上がっていき100の時点でMPの減りが止まるがゴブリンズ退場。 残りは巨狼とネームドの『ガグ』さん。 一応巨狼のHPも目に見えて二秒に0.5mmぐらい?のダメージは入ってるのだがゲージは半分も減ってないので余ったMP46を『ディレイ』効果時間延長に振ると二分ほど追加された。


 とりあえず麻痺ってる間に有効的な攻撃法を探すが『念動』糸のエンチャントは後一回とファイヤー系、ホーリー系が残るが削れ切れなさそう・・・あとは・・・ドロップアイテムだと・・・ペットにする首輪・・・だがこいつに効くか? 野獣系って・・・こいつ絶対魔獣の系統だろ? 影に潜るし尻尾三本あるし・・・ 最後の手段ってことで保留。 

 そして・・・打開策・・・発見・・・『ニヤ~ア・・・』

「きゅ・・・キュウ(ますたー・・・こわい・・・)」

 凄くいい笑顔(悪魔的)をしていたようだ。


「ゴグガ・・・」

 『ガグ』がそんなオレを見てなんか言いたそうだ・・・流石にネームドなりに知性があるのか? 

 二匹が絡まった網を踏んで近づくとガグは驚いたように目を見開いた。

 エンチャントの糸使った時に気付いたが自分の魔法やPTの直接的なダメージが入るものはダメージが入らない仕様のようだ。 特に本人の魔法効果はエンチャント以外はダメージ無し。 つまりこの電撃麻痺も攻撃として自分と十一には効かないことになる。


 ガグにネット越しに接触『念話』で対話を試みる。


『流石にあんたほどの大物になるとこれでも大丈夫なようだな』

 今のガグのHP半分ぐらいだがこのエンチャントが終る頃には退場されるだろう。

「ごあ!?(人が我等の言葉を!?)」

『ああ、声に出さなくていい通じてるようだな?』

『ぐう! おまえの言葉が聞こえるというならそうだ』

『ならオレに何か言いたいことがあったようなんで話しかけた。 恨み言なら聞く気は無い。 ここまで追ってきたのはお前らでオレは迎撃した。 それだけのことだ。』

『ちがう・・・勇者の知恵と強さに敬意は払えどガ族の勇者である俺に恨みは無い』


 ほう・・・何かありそうだな・・・よし・・・


 残った短剣で網を切ろうと思ったが投げたら無くなるのかアイテム欄には無かったので十一の『妖斬糸』でガグの近くだけ切ってもらい引きずり出す。


 担いで安全圏に下ろすと丁度麻痺が切れたようだ。


『どういうことだ? 止めをささんのか?』

 少し戸惑い気味のガグ

『いんや、お前さんが敬意をもってくれたからオレもそれに倣って話を聞こうと思った・・・それだけだ』

『そうか・・・人は我等を見れば襲ってくるモノとばかり思っていたがお前のようなモノもいるのだな・・・確かに害意を持ってお前を追ったことは詫びようすまなかった』

『それはいい・・・オレだって不用意に近づいたのがあるし撃退といいながらお前さんの仲間を手にかけている』

 ゲームだとしてもこいつらには仲間だろうそういった線引きみたいだが相手の立場で考えたらこいつに邪険に接する必要も無かろう。 襲われたから逆襲した。 話せるやつには話す。 狩る必要があるから狩る。 原始的にゲーム的にそんな感じで接すれば良いんじゃないか? 矛盾してるのはニンゲンとして理解してるしそれが普通の人間と思ってる。 倫理や世間性なんかはリアルのお偉いさんに任せておいて 自分の思ったままに行動するのがここでは吉だ。 

 そう思ったからの行動・・・ただそれだけだ。


『戦士が挑んで死ぬは当たり前逆にお前が勇者でなければお前が死んだ』

『なるほど・・・そういうシンプルな考え方は好きだな』

『それよりもあの黒い獣をお前が倒したことに感謝する』

『ん、どういうことだ?』

『あれは・・・』


 ガグの話を纏めると森の奥にゴブリンの集落がありそこをあの巨狼がいきなり襲ってきた。 チリジリになったゴブリン達は森の入り口付近まで逃げてきたということ。

 あの巨狼さえ何とかなればゴブリン達は元の森の奥に戻りすぐに増えるだろうとのこと・・・ふえるってあんた・・・

『シークレットクエスト【ゴブリンの安住の地】が開放されました。 自動で開始されます』

 システムの言葉が響く・・・ガグとの会話がカギってか? まあいい!

 後ろの網に捕らえられた巨狼を親指で指して

『とりあえずあいつはまだくたばっちゃいねえから、これから仕上げに入る』

『なに!? ・・・あの罠でまだ息があるのか!?』

『ま、ワレに秘策あり・・・ってね、あんたの認めた勇者の戦い方・・・最後まで見ていきな』

『ガグだ』

『ん?』

『俺はガ族、族長ガアの3番目妻の3番目の3番目の3番目の子ガグだ!』

『おう・・・長い言い回しだな・・・オレはニンゲンの冒険者、政十郎・・・長けりゃせいと呼べ』

 そういって踵を返しゆっくり歩いて巨狼に向かう。


 アイテム欄を開きっぱなしにして横にスライドさせ視界を確保アイテムの中の手の平チョット多き目な四角い缶を取り出し蓋を開ける。

 近づいたオレに気付いた巨狼は先ほど裂けた網の穴から口を開いてオレに食いつこうとし一瞬硬直。 後30秒ほどでエンチャントは切れるが・・・その前に・・・



「元気なお前にプレゼントだ・・・よ~く味わえ」

 開いて硬直した口に先ほどの缶をそのまま投げ入れる。

 黄土色の粉が宙に舞い、巨狼の喉元まで入り込んだ。

『ビック~~~ン!!!』

 その途端巨狼の全身の毛と言う毛が逆立った。

「カハッ!ギャフ!!グガガガ!!!」

 苦しみ悶える巨狼はさきほどよりも早いペースで電撃のダメージを受けゲージを減らしていく。

 よほど『粉末マスタード』の缶が御気に召したようだ。


しばらく格闘してなんとか缶を吐き出した巨狼はぐったりした様子だ。

吐き出された缶を拾い上げると大半の内容物が残り唾液でいいように湿気を含んでいる。

『べちゃ!』

 右手に中身をぶちまけ缶を捨てる。

 更に噛み付いてくる巨狼の勢いは無く安易に左手で舌を引っ掴みひっぱることができた。

 犬系の身体の構造上舌を引っ張られると口を閉じれなくなる。 まあ大概舌を引かれて閉じて噛み切るバカは居ないだろうが・・・


 「わざわざ仕入れた高い調味料だ・・・残すんじゃねえよっと!」

 引っ張った大きな舌に右手で持った山を『べちゃり!』とのせる。

『ビクン!!!』

 その時点で硬直した獲物の舌にバターやマーガリンのCMのように厚く満遍なく練られたマスタードを一瞬で塗りたくり。 最後に掴んでいた舌先に拭い取るように手袋に残ったモノを拭った頃・・・


 エンチャントは切れ巨狼は

『ズズ~~~ンン!!!』

と、泡を吐いて沈んだ。


「はて、HPはまだ20分の1ほど残ってるようだが・・・精神が持たなかったか・・・?」


 シャッテンウォルフの名前横にあるデバフ『猛辛』という冗談みたいなステータス異常。 そのアイコンを見てオレの行動もシステム的には予測内だったのかという思いと・・・システムを組んだ人とはどんな鬼才か性悪なんだろうと正直思ったのだった。


「気は合いそうだがな・・・」



今回の取得スキル


R『浮身』SW

自分の装備も合わせた重量を0にする

SWをONのあいだ常時MP消費で効果を発揮する

消費MPはSLVによる

条件・・・自分の重さを0にしたときランダムで入手



UQ『オールウェポンマスタリーMST』SW

R『両手利きMST』SW

UC『ダッシュMST』SW

R『第六感MST』SW 

AS『ステップMST』消費AP2

UC『換装MST』AS 消費AP30

UQ『武装乱舞MST』AS 消費AP50

今回マスターしたPSはSWに変化

それに付随したASを三つ取得、攻撃系ASはプレイヤーがカスタマイズ可能となる。

猛毒ならぬ猛辛のステータス異常の説明はまた今度


『浮身』の取得条件が不可能と思う方もいるでしょうが種明かしは簡単で『重心移動』のスキルは名ばかりで実際は体重移動か重量操作になります。

『重心移動』をとった時の記述で武器にも重量を移せると試した時は取れなかったが今回長剣に移した時がランダム当たりだったということで。

『重心移動』の上位スキルのようですが他にも条件を満たす方法はゲーム内ではいくらでもあります。

と説明でした

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