再会
初回続けて投稿いたしますゲームの中の話は5話目から?
7月21日 余分な「あ」を消しました
「Ver0.2」
部長の嬉しい出張の指名を受けて・・・やってきました主催者系列の大型アミューズメントパーク予定地。
人里離れた山の中にあるが山を削って造られた敷地は広大である
今でこそ人通りは少ないが秋からモノレールや送迎バスが通り高速道路の出入り口も近くにできている。
今年の冬からオープン予定らしく現在テストも兼ねて一部営業中。
そのテスト期間に『ブレイクワールド』略してBWのクローズドベータテストをここの施設内で行う。 7泊8日ツアーとして100名募集されたがあまりの応募人数の多さに倍の200名となった。 しかしそれは当然と言える。 待遇が良すぎるのだ。
まず、期間内はパーク内の高級ホテル並みの宿泊施設に無料で宿泊。 無論全員個室。 さらに3食無料の新鮮な海の幸山の幸が売りのホテルの食事、期待しないのが酷ってもの。 テストの時間は主催者側が決めているが途中退席もいいらしい・・・だが、好きで応募した奴がメインディッシュであるBWをサボるとは思えない。
さらにさらに~現在稼動してる施設も全て無料!
なんでもテストできるモノは全部やっちゃえって方針らしい。 思いきったと言うか太っ腹というか・・・何にしてもそれを受けれる側からしたら儲けものである。
愛車のバイク旧型のDR250で高速を出ると、木漏れ日が光る山道に、人影の無いその道を更に走れば開けた空が見えた。
サングラス越しの夏の日差しが眩しいねえ。
思えば長い旅だった・・・
旅費を浮かせようとバイクで主に下道をツーリングよろしくのんびりと
途中でサバイバルを堪能しながらの一人旅。
幸い天候に恵まれて4日ほどでここに到着。
この4日で色々あったなあ。
短編でだいたい3話書けるぐらいには・・・
なんてな、冗談はさておき案内板に従い地下駐車場にバイクを預けて社員通用門に向かう。
おもちゃの兵隊を模した制服を着たガードマンに挨拶し受け付けに向かう。 何故か警戒されてるようでジッとこっちを見ている・・・。
「失礼・・・」
昼前、この時間帯はあまり来客は来ないのだろう。 少し気の抜けた表情の受付のお嬢さんに声をかける。
「あ、はいどうも失礼しました! どのようなご用件・・・キャッ!!」
なぜか慌てて対応してた彼女の目がこちらを向いた瞬間小さな悲鳴に変わった。
「何かありましたか?!」
ガードマンが駆けつけオレの肩を掴もうとする。 その腕を相手から見て右から左へと掌を添えて軽く流しておく。 これで左から出そうとしてた追撃の手を牽制しつつブロック、いやになるほど優秀だねえ対応と行動が早いねえ・・・いやいやそうじゃない、なんで・・・あ、そうか今日はここに来ることが決まってたからスーツを着てきたんだっけ・・・髭剃り忘れて無精ひげとサングラス・・・まあアッチ系列の職業に見えなくも無い。
体を入れ替えて追撃の射程圏から逃れる。 なおも不審者に向かってこようとするガードマンに両手を上げる
「ああ、すいません。 急に声をかけたからビックリしちゃったみたいでね。 驚かせて悪かったね受付のお嬢さん、開発部のシゲさん・・・あ、いや・・・重本さんに取り次いでもらえないかな?」
サングラスを外しにこやかに笑いながら用件を一気に話す。
ある意味一種のトラブル回避法だ。
その前に余計な失敗をしないに越したことは無いが・・・。
「はい、あの、どういった御用件でしょうか・・・?」
サングラスを外し迫力もないおっさんになったオレを見て幾分緊張も取れたのだろう受付嬢。 それに引き換えガードマンの方は未だ警戒を解いてないのはさっきの1合での腕の差を察したからか・・・動きと大きな体格、首の太さから見て柔道・・・いやレスリング系の経験者かな?
「おっと、そうですね~では・・・「まっちゃん!」と・・・シゲさん!」
「「重本主任!」」
受付の横の通路からオレのあだ名を呼ぶ声に遮られた。
「久しぶりだねえ~チャットじゃあいつも話してたが、元気そうで何よりだ」
屈託無く話しかけてくるのは、付き合いの長いオレのゲーム仲間兼今回の総合責任者のシゲさんこと重本 匠 MMO等のゲーム内で知り合い、同年代で話が合うのでチャット友達でもある。 オフ会でチョクチョク会ってたのだが、ある時趣味と実益が今回の必要要項にピッタリの人員だとのことで、丁度ここの下請け会社勤務のオレに手伝えと誘った人物。
「重本主任・・・お知り合いで?」
受付嬢のオズオズとした問いに
「ああ、彼とは長い付き合いでね。 今回は一般公募と同じくテスターに私がスカウトしたんだよ。」
その言葉にようやくガードマンも緊張を解く・・・若いが本当にガードとしては優秀だわこの人と考えが顔に出たのか
「「お客様と知らなかったとはいえ失礼しました!」」
「いや、こちらこそごめんね~眩しかったからサングラス取るの忘れたら・・・まあ不審者に思われてもおかしくないし。」
あまり恐縮されても困るのでフォローしとく。 自分が迂闊だったのはわかってるし居た堪れなくなってくる・・・
そんなオレをシゲさんはジロジロと眺め
「・・・バイクで来たのかい? そりゃ~黒系の背広にオールバックで決めてサングラスで目元を隠せば・・・『どこのマフィアの幹部だ?』ってなるわな」
「ひでえ・・・気にしてるのに!」
「それに最近また肥えたんじゃないか? 貫禄みたいなの?がでてるぞ。」
やめて・・・オレのHPはもうゼロよ!
心の中打ちひしがれるオレに「クスクス・・・」と小さな抑えようとする受付嬢の笑い声が聞こえる。
「す、すいません、何だか第一印象と全く違うんで・・・。」
睨んでる俺に気づいたのか屈託なく返されるさっきまでの怯えられるよりはましだが・・・どうせサングラス補正が無けりゃタヌキさんですよ~。
「まあ、まっちゃんはサングラスでガラリと印象が変わるよなあ・・・往年の石原 雄○郎とかマフィアの幹部っぽい雰囲気?」
「ほっといてくれ・・・」
スネンゾこのやろ
「まあなんだ・・・こんなとこで長話も無いだろう。 昼食はまだだろ? 案内がてら説明するよ」
「お、実はさっきから腹の虫が鳴ってまして。 無論、シゲさんのおごりで?」
冗談めかしてオレが言うことにシゲさんは『ニヤリ』として
「ん? ・・・ああいいぞ~俺のおごりだいくら食ってくれても構わんぞ。」
意外な太っ腹な答えに空腹な胃袋は盛大なシゲさんコールをしている。
「うそ?! 言ってみるもんだねえ~ゴチになります!」
話しながら出て行く俺たちを見ながら
「たしか、今の時間の食堂って全社員特典の・・・」
「ええ、ビュッフェ形式のバイキングですよねえ・・・社員特価500円の・・・」
受付嬢とガードマンが呟いたセリフは豪華なただ飯に惑わされた俺には聞こえてなかった。
~~~~~~~~~~~~~~
「さあ、私のおごりだ、ドンドン食べてくれ!」
「詐欺だ・・・でも食べちゃう! そんな自分が悔しい!!」
ここはベータテスター達の宿泊施設になるホテル。 その最上階にあるワンフロア使った大展望レストランにいた。 そこは開園前である今は社員食堂も兼ねて朝昼晩共にビュッフェ形式で食べ放題のバイキングとなっていた。
「冗談はさておき、食べながらで良いから聞いてくれ。 今回まっちゃんにやってほしいことなんだが・・・」
「ほい? ベータテスターって聞いたんだけど・・・何か変更でもあるの?」
仕事の仕様変更なんて日常茶飯事の事・・・でもゲームできないのは辛いかな~。
「ああ、それに関しては一般テスターと同じ待遇だから安心してくれ。」
「え、そなの? テストうけた後にデバッグやれとかモーション変更しろだとか言われると思ってた。」
「おいおい、そこまで内は過酷じゃないぞ。」
笑いながら受流すシゲさん。 しかしオレは忘れてないぞ、出張期間のドSな労働期間を・・・
訝しげに伺うオレに真面目な顔で話し出す。
「『思考加速』・・・試したことはあるか?」
「あれだろ? 脳内情報を倍とかに速くしていろんな分野で時間短縮するの・・・ならあるぞ。」
そういえば今回のBWにもその技術が使われてるとか言ってたっけ。
「それなんだが今回のBWでは新技術の加速装置ができてな一般で4倍で行う。」
「へ~オレの知ってるのも4倍が最高だけどそんなに負担はないと思う。」
「だが!」
「へ?」
「一般のワールド以外は・・・インスタンスエリアの速度はその2倍で8倍速だ。」
「おいおい・・・そこまでして人の頭は別として機械の方の処理速度が持つのかねえ?」
オレの知る限り人の頭は高速処理に慣れて無いだけでやろうと思えば現在のスパコンに勝てる情報処理が可能だ・・・まあ、一部の特殊な訓練とかいると思うけど。
「?・・・なんで人の頭より機械の心配をするんだ、普通逆じゃないか?」
「いや・・・ね、一度コンシューマー機を改造した16倍速を試してくれって頼まれて、VRゲームのガンシューティングをやったら処理落ちが酷くて・・・最終ステージでマシンが煙はいて死んだ。」
疑問な顔色のシゲさんがオレが言い終わる頃には大笑いしていた。
「くっくっく・・・は~はっはっはは~あ~何ていうかまっちゃんは期待を大きく斜め上に裏切ってくれる・・・いい意味でな!!」
「なんか素直に喜べんな・・・。」
「くっく、気にするな」
不貞腐れてパスタをかっ込む。 あ、皿が空だなんかとってこよ。
おお、一口ステーキが新しく出てる~ジュルリ
「お兄さんステーキ3・・・いや4人前頂戴!」
オレが皿に料理を盛り付けて席に戻る頃にはシゲさんも落ち着いたようで
「まあ、なんだ・・・まっちゃんは気にせず普通にゲームを楽しんでくれ後はこっちの問題d・・・なんだよその肉々(にくにく)しい皿の数は?!」
「ん、新しいメニューがきたんで一通り取ってきた。 コッチカラ一口ステーキにロースとビーフ、牛のタタキの寿司、照り焼きチキン、煮込みハンバーグ、豚しょうが焼き、豚天、小龍包、ひき肉とパンのゴマ揚げに最後は鴨肉のチョコレートソースがけだったかな? いる?」
「いや、いい、それを見てるだけで胸やけを起こしそうだ・・・」
シゲさんは今度は青い顔になって景色を見て、こちらを見ないようにしていた。
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ふう、食った食った・・・余は満足じゃ。
お腹を擦っていると
「ホントによく食うがまっちゃんも歳を人並みにとってるだろうにその歳でその食欲は羨ましいを通り越して恐ろしいよ。」
なんか失礼なことを言ってるが満足したオレは心が広いのだ。
「あれを食った後にデザートに行ったときは考えないようにしようと思ったが・・・あの皿と同じように盛ってきたケーキ類を見て戦慄を覚えたぞ!」
「そこまで言わんでも・・・」
「一応聞きたいんだが・・・まっちゃん成人病とか大丈夫か? 明日ここでも健康診断とキャラ付けの軽い体力測定があるんだが」
えらく心配そうだ。
「大丈夫、だいじょぶ~肥満って毎回言われてるけんどね~心電図も血圧共に正常! 医者先生も不思議がっとった!」
「そうか・・・」
なんかシゲさん疲れた顔してるな。
「ちなみに社内体力測定で全種目ベストテンに、種目によってはベスト3に入ってました。 ブイ!!(キリ!)」
「今目の前にいる同年代のはずなんだが・・・化け物か?」
あきれた顔でなんかノノシラレタ?!
「でも、昔の剣豪や武術家の最盛期って30代が多いからそうでもないんじゃ? それにナンダカンダ言っても20代の頃から見たら体力的には落ちてるし・・・無茶してきたぶん身体の所々にガタが来てるのが身にしみてわかるよ・・・」
真面目な話、季節の変わり目で古傷が痛んだり良くあるしなあ・・・歳は取りたくないってよく言われるのが解る歳ごろだあねえ。
「そうか・・・私も最近泊り込みがきつくなってきてな・・・お互い歳はとりたかないな・・・」
しみじみ・・・
「まあ、だから今回のVRRPG BWには期待してんだよね~なんせ歳を気にせずはっちゃけられそうで!」
暗い空気を消そうとおちゃらけて言うオレに静かに笑うシゲさんは
「このプロジェクト必ず成功させる」
他愛無い会話の中の一言だったがそこに長年の努力と夢がこめられた決意の言葉だと思った。
この話はフィクションデス現実でできないこともやっちゃうフィクションです