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使用人と憧れ騎士様  作者: omi
本編
6/26

2



私は、不愉快にさせてしまったのかな。


水がいけなかったのだろうか。


それとも、話しかける事自体問題だった?


わからない。


何が、いけなかったのか。


「今日もまた随分落ち込んでいるのね」


「リーリィ」


「フェイラルカ様に会って浮かれてるかと思えば……って」


「うっ、ぐず」


「ちょっと待ちなさい。泣くのは後。片付け終わらせるわよ」



今日に限って訓練所近くの物置小屋担当。


ちょっと前なら喜んだのに。


フェイラルカ様に会えるかもしれないっていう希望があったから。


でも今は――。



「はいっ、終わり。で? 何事?」


「……何でもない」


「そんなわけないでしょ。掃除しながら泣いてさ」



リーリィは長い付き合いなだけあって、嘘をついてもすぐ見抜く。


でも、フェイラルカ様の事はなんとなく言いたくない。現実を見たくないだけかもしれないけれど。


それでも。



「何でこうなっちゃったかな……」


「んー? あっ。ちょっと待ってて!」


「リーリィ?」



箒を投げ出したかと思えば、出ていってしまった。


なんだろ。



「もう、休憩入るよっ、と」


「……」


「……えっえぇぇ!?」



開けっ放しにされた扉の外を見れば、フェイラルカ様がそこにいた。



「ふぇ、ふぇい」


「仕事は終わりか」


「え、あ、はいっ」


「ならば来い」



来いって! 来いって!



「何処へですっ?」


「……礼を」



フェイラルカ様は私に向き直るとそう言って。



「水の礼を」



それから、と。



「ひどい事を言った非礼を……詫びようと」



ぱちくり。


とは、まさにこの事。



「お前の友達から聞いた」


「友達って……」


「赤い髪をした気の強そうな娘だ」



リーリィかっ!


さっきいなくなって、何をしに行ったかと思えば……。



「泣いている、どう責任とってくれる、許さないと言われた」


「あわわわわ……」


「確かに、一方的過ぎた。俺の勝手だった。……すまない」


「あ、い、頭上げて下さい!」



私は完璧な混乱状態だった。だって、フェイラルカ様に頭を下げられたんだよ!?


そんな、そんな……!



「私がフェイラルカ様とお話したかったんですっ! だからいいんです!」


「え……」


「私はっ」



そこではっとした。


フェイラルカ様が呆気にとられている。


今、私、何を言った……?



「あの、今のは!」


「……もう一度」



訂正しようと手を伸ばし、振っていたらその腕を。


捕まれて。


ぐっと力を入れられた。



「!?」


「何を言おうとしたのか、もう一度」



そう言うフェイラルカ様の瞳は。


何故か熱い炎を宿しているようで。


目が、逸らせない。




「フェイラルカ様……?」


「お前は、わ――」



『フェイラルカーー!!』



なんという事でしょう。


せっかく、フェイラルカ様が何かを言いかけたのに。



「ロランド……」


「あっ、フェイ。こんな所にいた。何やってんだよ。これから見回りだぞ」


「あぁ」


「まったく……って。あれ? セフィラ?」



えぇ。私です。


ロランド様は不思議そうに私とフェイラルカ様の顔を見る。



「先に行ってろ、俺もすぐに行く」


「ん、んー……わかったよ。じゃぁお先に。またね、セフィラ」



ロランド様は台風一過。


今度からそう呼んで差し上げたいくらいです。


再びしんとする物置小屋で、先に口を開いたのはフェイラルカ様だった。



「セフィラ」


「! はいっ」


「話したい事は色々あるが……今日は止めておく」


「はい……」


「だから、また明日」


「――!」


「中庭で」



少しだけ。


ほんの少し、微笑んだフェイラルカ様に。


私も微笑まずにはいられなかった。




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