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使用人と憧れ騎士様  作者: omi
番外編 ex.2
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3.互いに求める


「えっと、フェイラルカ様。降ろして頂けますか?」

「どうして?」

「どうしてというか……」


目の前にフェイラルカ様、両手はフェイラルカ様に押さえられていて、さらに足が浮いていて逃げ場がない状態。っていうか、こんな格好、心臓に悪過ぎますから……!


私が浮いてる足をバタつかせると。

ふわっと良い匂いがしたかと思えば、その美しい顔が私の目の前に来て。


「どうすればその目は俺に向けられる」


その一言が、私の中にストンと入って来た。一体全体どうされたというのか。水を張ったように濡れた薄い紫色の目が私を射抜き、私もその目を見つめ返す。

ーーあぁ、綺麗だ。


とっくに私はフェイラルカ様しか見えていないというのに。この目は、貴方しか映していないというのに。



「セフィラ。ーー」


最後の言葉は聞き取れなかった。だけど、近付いてくるその美しい顔に、瞳に、吸い込まれそうになる。

視界がぼやけ、る……そう感じた時には。


「……ん」


すでに唇と唇が重なっていた。一度目は軽く、二度目は少し押し付けるように。息をするのがちょっとだけ苦しくなった。何故こんな事になっているのか、分からないけれど決して嫌ではない。ただ、ドキドキして変な顔をしていそうだ。


「っあ」


そうして、唇を離されたかと思えば少しだけフェイラルカ様の口が開いて、さっきよりも深く深く重なり合う。


ぶくぶくと、溺れていくみたいだ。身体中が甘く痺れて、フェイラルカ様の事以外は考えられない。

夢中で口付けに答えていれば、やはりいつも様子が違うフェイラルカ様を不思議に感じてしまう。



『フェイラルカとはちゃんと話しておくんだよ』



ふいに、イシュリッシュ様に言われた事を思い出した。


「っ、の。フェイラルカさまっ! ん、ぅ」

「はっ。セフィラ……」


口付けを受け止めて、掠れたように私の名を呼ぶフェイラルカ様に胸が締め付けられた。でも、今はそれよりも様子がおかしいフェイラルカ様を止めなくては。



「ひぅ! あ……っと、だから待って下さいっ。フェイラルカ!」



それこそ時々しか呼ばないような呼び方で、フェイラルカ様を呼べばぴくりと止まる。閉じられていた目が開き私の目を覗き込んだ。


濡れた瞳はそのままに、こちらを喰らわんとばかりに熱が籠って見える。ずくん、と体が痺れて手が震えそうになるが、私はしっかりとその頭をこちらに引き寄せた。


「あの、その」

「……突然、すまなかった」

「いえ! 嫌ではないです、違うんです。そうではなくて」


嫌だったとか、やめて欲しいとかではないのだ。ただ、フェイラルカ様の今のそれは、口付けで何かを誤魔化そうとしている気がして。


「ちゃんと話した方が良いと思ったんです」


何を考えているのか、何を思っているのか。

フェイラルカ様の口から聞かなくちゃいけないと思ったのだ。


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