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使用人と憧れ騎士様  作者: omi
番外編 ex.1
22/26

4.使用人とその恋人


テッセさんのお店で小さなカップケーキとサクサククッキーを買って、リーリィと、一応イシュリッシュ様にもお土産を買った。


それからフェイラルカ様の外出用の剣帯が売ってるお店に行ったり、喫茶店でお茶したり。


「今日はすごく楽しかったです。一緒にお出かけ出来て……嬉しかったです」


部屋の前までフェイラルカ様が送ってくれて、私はフェイラルカ様に今日のお礼を言う。


「……こっちこそ。いつも公務ばかりでまともに会えないからな。たまにこうして出かけるのも、良い気分転換になる」


その言葉に、ご迷惑でなかったんだとホッとした。


「ーーセフィラ」


名前を呼ばれてなんだろうと思いフェイラルカ様を見上げると。

薄い紫色した瞳がこちらを見ていて、ドクンと。

心臓が大きな音を立てた。


なんて綺麗な瞳。この騎士様が私の恋人だなんて信じられなくて。


苦しいくらいの愛おしい気持ちに苛まれた。


「……早く部屋に入れ」

「え……? でも」

「いいから。早く」

「あ……の! 待って下さい! あの、私、もう少し」



そう、あともう少しだけ。



「あとちょっとだけ……フェイラルカ様のお傍に、いてはいけませんか?」



欲張りになっていく。こうして一緒にお出かけする前なら、聞き分け良くお別れ出来たのに。

一緒にいる嬉しさを。

離れ難いと思うこの気持ちを。

知ってしまったら、もう切り離す事など出来ないんだろう。



「ーーだから」



その瞳に、少しの熱が灯ったと思えば。

気付けばその腕にすっぽり収まっていて。



「そういう事を言われると、帰したくなくなるんだ」

「んっ」


耳! 耳元で話さないで下さい!


「セフィラ。お前はわかっていない」

「え……?」

「俺が、どれほどーーお前を欲しているか」


ほっす……?

どういう意味だろうと考えた。

体から感じるフェイラルカ様の心臓の音が聞こえて、それが凄く早く脈打っていて。

一つの意味にたどり着いた時、こっちの顔が熱くなった。


「ああああの! その! わかっ……分かってなくはないのですが!」

「……ん」

「その! 私ももちろん、フェイラルカ様が欲しいとは思っていますが!」

「……うん?」

「というか、私はもうフェイラルカ様のものですから! わた、私は……その」



ああもう! 何が言いたいのかわからなくなってきた! とにかく、言いたい事は一つだけ。



「……フェイラルカ様が、大好きなんです」


この気持ちは衰える事なく日増しに大きくなるばかりだ。


「様は、いらない」

「あの、でも」

「前も言っただろう。そのまま、名前で呼んでくれと」


確かに言われた。でも、この呼び方が定着してしまっているので私としてはこれが安心なのである。

でも私を見つめるフェイラルカ様が、いつも以上にそれを訴えているような気がして。

私はそっとフェイラルカ様の胸元に顔をうずめて小さな声で呼んだ。



「ふぇ……フェイ、ラルカ」



ゆっくり言葉を紡ぐといつもとは違うように聞こえた。こんなにも、大事な言葉がこの世にはあるのだ。

ぐっとフェイラルカ様の腕の力が強まり、深く深く、この方の腕の中に溺れていく。

そうしてきっと、もう逃げ出す事は出来ないのだ。



「あぁ。セフィラ、俺もーー」



雁字搦めにされて、わたしの心を逃さない。そんな甘いお菓子みたいな言葉を私にくれるのだ。






後日。

リーリィにお土産を持って行くと、いつも以上にリーリィの顔がにやけていてちょっと引き気味でいると。



「聞いたわよ、噂」

「噂?」

「ほら、この間のデート。上手くいったみたいだねー」

「ま、まぁ。でも何で知って……」

「使用人達の間では、噂になってるわよ? この間、セフィラが、騎士様と堂々といちゃついてたって」

「は!?」

「あつーい抱擁かましてたって? 大人になったわねぇ」

「いっ」

「ん?」

「い、いやーーー!」



そんな現場が目撃されていたと知った時の恥ずかしさといったら半端なかった。


フェイラルカ様の腕を借りる時は、もっと人目のつかない二人きりの時にしようと心に誓ったのである。




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