2.はじめてのお出かけの準備
「これ……やっぱり着てかなきゃダメ?」
「当然よ。もう時間もないでしょ? ほら顔貸しな」
「どっかの悪い人みたいな台詞だよ!? ってか、ストップ、ストーップ!」
お休みの日、公休の日。
何故かリーリィもお休みで、私は朝から彼女の着せ替え人形となっていた。
朝はリーリィに起こされ、顔を洗うように指示。
気付けばお部屋に洋服がどっさり。
ちょっと大人っぽいシルクで出来たワンピースや、可愛らしいデザインのトップス。靴もミュールからサンダル、ブーツまで様々。
その中からあーでもない、こーでもないと着せ替え人形にされてやっと決まったお洋服がコレ。
「やっぱりそっちのロングスカートが……」
「何言ってるの! これじゃあフェイラルカ様は喜ばないわよ!」
「えぇー……でもこのスカート、ちょっと短くない?」
「あんたいくつよ? あんたくらいの年齢の子なら誰でもその短さだわ」
そんな馬鹿な。ひらひらと軽い布の素材で出来てる水色のスカートは風に簡単に靡かれてしまう。腰をリボンで絞って上は白いシャツ、足には少し高めのヒールがある靴。
完全なお出かけモードだ。
「ほら目を瞑りなさい。お化粧、してあげるから」
「お、お化粧まで?」
「そうよ。あんた、仕事中はほとんどしていないでしょ? デートの時くらいお化粧してもバチは当たらないわ」
「……はーい」
目を閉じて、顔をパブパフ叩かれる。唇をくすぐる刷毛に笑いそうになればリーリィに怒られた。そうして出来上がった自分を鏡の前に映して。
「わー……別人になってる」
「そこまで別人じゃないわよ。よし、これならフェイラルカ様もイチコロね。そろそろ時間かしら?」
日の高さ、時計を見やればフェイラルカ様と待ち合わせの時間が迫っていた。
「わ! 行かなきゃ! ごめんね、行ってくる!」
「ん。転ばないように」
私は慌てて部屋から出ようとして、そこでくるりと後ろを振り返った。不思議そうにしているリーリィを見て。
「ありがとう! 私だけじゃ、こんなにおめかし出来なかったから……だから、ありがとうリーリィ」
それだけ言い残して、急いでフェイラルカ様との待ち合わせ場所へと向かった。
後ろでリーリィが。
「このくらいの事、やってあげるに決まってじゃない」
なんて言葉は私には聞こえなかったけれど。