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私の住む国は、海の上に浮く国だ。とは言うものの、浮いている高さなんて水面から5m弱なんだけど。
私が生きているこの17年間、今のところ他国から攻撃された事はない。
しかし、私の国より高い位置にある国だってあるのだ。
いつ、なにがあっても大丈夫なように。
危険な生物から狙われても大丈夫なように。
そういった理由で結成されたのが、とある騎士団。
この国、唯一の。
『命の樹木』だ。
休憩室の窓から見えるのは、フェイラルカ様の稽古姿。
フェイラルカ様に限らず、騎士団の人はよく中庭に来て自主訓練している。
騎士専用の訓練所もあるんだけど、中庭が広いからそこで訓練に勤しむ人も多いようだ。
だから、たまに。
たまに、こうしてフェイラルカ様の姿が見られる。
私はそれだけで幸せなのだ。
しあわ、せ……なの。
「でも、話したいぃ……」
そう。
本音を言えば、見てるだけで良いなんて嘘だ。
近くに行って、話しかけて、顔を覚えてもらって……。
一介の使用人が、何を馬鹿なことを……と思うかもしれない。
騎士と使用人じゃ身分が違う、と思うかもしれない。
でも。
「セフィラー。休憩終わり」
「はーい」
それでも、焦がずにはいられないのだ。