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使用人と憧れ騎士様  作者: omi
本編
16/26

2

そう。


あれは、まだ私が小さな頃。イシュリッシュ様をイシュリと呼んでいた頃。


町へおつかいに行った私はイシュリのお母さんに出会った。そこで、イシュリが騎士入団試験に受かったという話を聞いたのだ。


私は直接『おめでとう』を言おうと思ってイシュリの家へと向かった。




――イシュリの家が見えた時。

白銀色の髪をした少年が家の前に立っていたのだ。



誰だろうと思いつつも、私は、少年はイシュリを待っているのだと気付いた。だから、すぐに声をかけたのだ。


友達になれるかもしれないと、そう思った。



私が声をかけると、少年は顔を上げて目をぱちくりさせて。


「誰?」


「イシュリの友達。貴方は?」


「……」



その子は私が聞いても何も答えず、ずっと無言のままだった。


ただ。


「イシュリはいるかな?」


イシュリの名前を出すと、少し肩が動いて反応して、首を振ったから、やっぱりこの子はイシュリの友達なのだと確信した。



「帰ってくるまで、一緒に待ってていいかな?」



私はその子の隣に立って、イシュリの家の壁にもたれかかった。


「貴方はイシュリの友達?」


「……」


「私はね、イシュリとは小さな頃から一緒なの。だからね、今日はおめでとうって言いに来たの」


「……おめでとう?」


今まで黙っていたその子が、私の言葉に反応した。



「うん。イシュリ、騎士になるんだって。試験に受かったんだよ」


「試験に……」


「すごいよね、騎士だなんて。なんだか、イシュリが遠くに行っちゃうみたい」


「……」


ね? と、同意を求めてその子の顔を見れば、とても苦しそうな顔をしていて。


一言『いやだ』と、言った。


「せっかく……友達になれたのに。遠くに行っちゃう……」


泣くのを我慢しているようだった。

そして、その子は私に向かって言った。



「イシュリに会えなくなるのは嫌だ。だけど、行かないでって言うのも……嫌だ」


イシュリの行く道を邪魔するのは嫌だと言ったのだ。


止めるのも行かせるのも嫌だから、どうしたら良いのかわからない、と。



「そっか」



私には、その子の気持ちがすごくわかった。だって私も同じだったから。

イシュリと離れたくないけど、彼が決めたなら私は邪魔出来ない。

けれど、やっぱり幼い私達は寂しかったのだと思う。


そこで、幼いながら私は頭を捻った。

どうしたら、またイシュリと一緒にいられるか。

この子も、私も寂しい思いをしないで済むか。


そして。



「……そうだ! じゃあこうしよう!」



その子の前に立って、私は満面の笑みで。



「私達も、お城で働くの! きっと、まだ小さいから受け入れてはもらえないけど……もう少し大きくなったら。そうしたら、一緒に働こう!」


「一緒に……?」


「うん! 私は騎士にはなれないから……お手伝いさん。それで貴方は騎士になるの!」


「騎士……イシュリと、同じ」


「うん! おんなじ!」


「でも、俺、強くない」


「大丈夫! まだ時間はいっぱいあるから、強くなろう。私も、お洗濯とかお掃除苦手だけど……頑張るから!」


私の言葉に、その子はやっと少しだけ笑って。


「俺、強くなる。約束だ」


それが、イシュリが試験に受かった日の、私と彼との約束。





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