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使用人と憧れ騎士様  作者: omi
本編
15/26

使用人と幼馴染み


――小さな頃。


まだ私が実家に住んでいて、イシュリッシュ様をイシュリなんて風に呼んでいた頃。


私はいつも、イシュリに遊んでもらっていた。他に女の子の友達もいたんだけど、私はイシュリと遊ぶのが好きだった。


そんなある日の事だ。イシュリが騎士入団試験を受けに行ったのだ。騎士になれば、家を離れて暮らす事になる。


私は急にイシュリが遠くなった気がしたのだ。


でもイシュリは、強い。何がって、喧嘩が。


だから、私はイシュリは騎士に向いてると思った。あんなでも優しい心を持っているし。


寂しかったけど、もし受かったらちゃんとおめでとうって言おうって。


そう思ったのだ。




***



「なんだか、懐かしい夢を見ました」


「ほぉ? どんな?」


「私とイシュリッシュ様が仲良かった時の夢です」


「おや? 私は今でもセフィラと仲良いつもりなんだが」


「んー、何と言いますか……幼馴染みとして仲が良かった時の事です」


今は使用人と騎士団長という役職があるから。

だから、幼馴染みとして会話する事は少なくなったのだ。



「あの頃、セフィラはいつも私に付いて回っていたな」


「遊びたくてしょうがなかったのですよ」


「そんなものか。――そういえばセフィラ。貴重な休憩時間なのに、フェイラルカの元へ行かなくて良いのか?」


「……決めたので」



私はあの時の情景を思い出す。



『早く……俺の元に』


ごつごつした手に反して、柔らかなその唇が瞼に触れる。



『今日はもう遅い。俺の話はまた後日』


その声に酔ってしまいそうなほど。

幸せな気持ちが、心に溢れていて。

でも、どこか切なくて。


私は早く思い出すと決めたのだ。


お話は気になるけど……しばらく、フェイラルカ様断ちしようと決めたわけで。


「しばらくは、極力フェイラルカ様との接触は避けます」


「また不思議な事を言い出す。フェイラルカは承知なのか?」


「一応」


「それは良かった。……そうじゃなければ、奴の機嫌がすこぶる悪くなるのでな」


イシュリッシュ様の言葉に、私は少しだけ浮かれた気持ちになってしまう。

早く思う存分会いたい。

お話したい。


「接触を避けるのは、何か思うところがあっての事だな?」


「はい。……私が、彼との何かを忘れているので」


大事な何か。

きっと何処かで会っている。それを思い出さなくちゃ、私とフェイラルカ様との間にはいつでも壁があるみたい。


「……そうか。私が口を出す事ではないと思う、が。一つだけ」


「?」


「私は、私が騎士入団が決まった時、セフィラに『おめでとう』と言われて嬉しかった」


「な、何でそんな昔の話……」


「聞いて。セフィラは反対すると思ったんだ。自惚れかもしれないが、お前は私になついていたし。だから、ちょっとだけ拍子抜けしたんだ」


「それは、貴方が騎士に向いていると思ったから。だから応援しようと」


「あぁ。嬉しかった。さらに、お前はいつか城で働くと言ってくれた。それだって、何より心強かった」


「だって、それは……」


それは?

私、イシュリの傍にいたいと思ったから?

それもあったけど、そうじゃなくて……。


「イ、シュリ……?」


イシュリの笑った顔が何処かで見たような、不思議な既視感に襲われた。



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