表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使用人と憧れ騎士様  作者: omi
本編
14/26

2

二人の間に静かな時が流れる。

そして、フェイラルカ様の手がそっと、私の首の後ろに回った。


耳元で囁かれる。


「それは、どういう意味だ?」


しまったと思っても、後の祭り。

触れられた肌がどんどん熱くなる。



「あっ、あの! 私っ」



どう言い訳したらいいかわからず、ばたばた暴れるけれど意味は為さず。

フェイラルカ様の言葉に力が抜けてしまった。



「それは……少しだけ、特別な事か?」


「――!」


「だとしたら、嬉しい」



それは私の方だと、言ってしまいたかった。

だけど言葉にならなくて、私はフェイラルカ様に目を向けるだけ。



「俺は、あの模擬戦で団長に負けてしまったけど……セフィラに見てもらえて良かったと思う」


「――!」



目の前が霞む。

涙と気持ちがごちゃまぜになって、心の奥が叫んでいた。

そしてそれは、震えながら伝えようと試みる。



「――っ、き」


「セフィラ?」


「すっ、き……!」



その腕にすがって、言葉を吐き出した。フェイラルカ様の表情が驚きに変わっていく。



「ごめんなさい……っ、でもっ、どうしても止められなくて……!」



身分違いだとはわかっていた。それでも伝えたかった。

私は、貴方が好きなんです。



「フェイラルカ様、好きです……」



ぽつりと呟けば、驚くほどの力強さで引き寄せられ。

抱きしめられた。


そしてどれほどそうしていたのか、少しだけ力を緩めると。

フェイラルカ様が声をもらした。



「今すぐにでも、その返事に答えたいところだが」


「……はい」


「俺は、セフィラに話してない事がある。それに、セフィラも思い出してない事がある」



その言葉に疑問を思ったが、すぐにフェイラルカ様が言葉を紡ぐ。



「セフィラは……覚えていないだろうけど、俺はずっと前からセフィラを知っているんだ」


「知って……?」


「あぁ。……セフィラ」



フェイラルカ様の顔が真剣な表情になった。



「だから、思い出してほしい。その時、俺もセフィラに話そう」


「フェイラルカ様……」


「大丈夫だ。そんな不安な顔しなくても」


フェイラルカ様の紫の瞳が優しく細まって。


「俺の気持ちも、その時に全部話すから」



その時のフェイラルカ様の顔は、きっと忘れられない。

熱のこもった瞳。少し紅潮した頬。

そして。



「早く思い出して、俺の元に来い」



手のひらに落とされた口付けも。

頬に落とされた口付けも。


「早く、俺のものに」



囁かれた言葉も忘れはしない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ