使用人と使用人
「いやいや、だから。そんな事勘違いだってば」
私は首をふった。
そんな私にはお構いなしにうきうき顔で語りかける女、リーリィ。
「またまたまたまたー」
お昼過ぎ。そして、休憩時。
お城で働いてる私達は、唯一のおしゃべりタイムを楽しんでいた。
大体において、女の子はお話好き。
私とて例外ではない。
ない、が……。
「はぁ……遠くから見ても麗しい。フェイラルカ様」
リーリィがうっとりと呟く。
そんな私はというと、休憩タイムに飲んでいた紅茶を吹き出していた。
「ぶーーー!!」
「ちょ、汚い」
「げふ、ごふ……っ、だって」
休憩室には窓がついている。
お城の庭とそこから見える吹き抜けの廊下は、とても良い景色だ。
一息、大きく息をついてそっと目を開ける。そして、窓の外を見てみれば。
確かに――いた。
「フェイ……ラルカさま」
白銀色の髪の毛が太陽に輝き、美しい姿がとても神秘的に見えた。
きらきらきら。
にやにやにや。
「リーリィ……」
「にやにや……っと。セフィラの心の声を出してみました」
「貴女の心の声でしょ」
「いやだわ……それにしても、美しいお姿。目に入るのがもったいないくらい」
「……」
リーリィが真っ直ぐ見つめるのは、フェイラルカ様。
美しいのは、髪だけでなくその顔立ちも。
その儚く美しい容姿とは裏腹に、騎士として戦う姿は勇敢なライオンの如く素晴らしく。
剣をふるう姿も、馬を乗りこなす姿も凛々しく雄々しいという。
そんな美しさと強さを持ったフェイラルカ様。
私にとって、一番遠い人。
そして。
一番近付きたい人。
「好きだねぇ、そんな見ちゃって」
「いや、だから違うって」
否定をしてしまうのは仕方ない。
まぁ、意地を張ってしまうのは性分なのだ。