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わかった。あたしはもう金輪際勉強はしねえ! 4

「あーあ」

僕のせいでこの世に大変な馬鹿を生み出してしまった。今までいい感じにバランスを取ってたのに。いや、そんなに知らないけど。

「だ、誰だあれは!?敵か?」さつきさんは急にシャドーボクシングを始めた。

ヤベ、拳が見えない。

「現代に敵はいませんよ。あれは、まあ・・・従兄妹です」

認めたくないけど。だがしかし、向こうだってそう思っているだろう。何せ僕は妹にまで兄妹と認めたくないと言われたからな!

「・・・・・・」

あ、泣きそう。

「む・・・兄に従う妹、だと!?そんな属性があるのか?しかもたった3文字であらわせる言葉になっている、だと・・・?」ごくりと唾を呑むさつきさん。

「そんなんじゃねーよ!」

そんな日本語あってたまるかっ!!国が崩壊するわっ!!

あれ、でもなんでこういう字なんだろ?

・・・まあ、昔なんかあったんだろうな。

「・・・ようするに、母さんのお姉さんの娘です」

「ああ、いとこか。糸こんにゃくの略のほうか」

「ちげーよ!?」

意味がわからない、意味がわからないよ!

ああ、さっきから黙ってると思ったらボケの準備をしていたのか。いや、この人の場合は天然かもな。

「はとこは『鳩殺し、耕太』の略だろう?」

「僕はノイローゼかっ!?」

くっ、うまい・・・。さすが僕をいじめることにかけては天下一品だ。

「当たり前だ!この夏は耕太をいじめ通すと決めている!そのためにやつと日々特訓を重ねてきたのだ」

「やつ」と言った後、若干顔をしかめたさつきさん。喧嘩中だったな、そういえば。

てか旦那さん何やってんの・・・。

「ずいぶんと、あれだ・・・激しい娘だったな」

さつきさんは言葉を選んだらしい。多分喧しいと言いたいはずだ。

「それについては反論のしようもありません」

2年半で少しは落ち着いたかと思いきや、さらに加速していた。もう少しで光速に達するだろう。

「それで、名前は何というのだ?」

さつきさんは聞いたものの、既に興味は僕の部屋で(さつきさんのために)常備してあるお菓子のほうに向かっていた。相変わらず欲望には忠実。これでこそさつきさんだ。

「雲霧雫です。雨冠に云々で「くも」、雨冠に業務の務で「きり」、雨冠に下で「しずく」です」

「どんだけ雨冠を使うのだ!?雨に対して何かコンプレックスでもあるのかっ!?」

おお、すげえ。名前だけで突っ込みの対象だよ。好印象だな、うらやましい。

「君の家系は名前の面白さを競っているのかっ!?」

そんなわけはないが、僕やつむぎと違っておかしさが表面上に現れている雫はかわいそうといえばかわいそうである。雨冠は書くのがめんどくさいらしく、名前のほうはいつもしずくと平仮名で書くそうだ。

さて、少々経緯がめんどくさいのでここで説明しておこう。僕と雫が会うのは2年半ぶりなのだが、どうして我が家にいるのか。

母さんのお姉さんはうちと同じく共働きで、雫のお兄さん2人は2人とも大学生だ。そして今は都会の大学にいるので雲霧家は両親と雫の3人暮らし。ただし、今は2人とも出張に出ているらしく、そうなると中3の女の子を家に一人置いとくのはどうだろうという話になる。というわけで親せき筋の中で一番近くに住んでいる(電車で1時間半くらいだろうか)親戚筋の漆根家へとやってきたわけだ。しばらくはつむぎと一緒につむぎの部屋で暮らしていたが、つむぎのいない今は一人だ。

説明終了QED

しかし2年以上会ってないというのに変わらない。いや、実際は覚えてないだけなのかもしれない。さすがに2年間変わっていないということはないだろう。つむぎいわく、僕は2年前からのインパクトが強すぎてそれ以前がどんなだったのか忘れるキャラらしい。だから雫のやつも今のインパクトが強すぎるだけかもしれない。

「あああああああっ!!」さつきさんが突然大声を上げた。問題集を取ろうと腰を上げた僕は椅子ごと転げ落ちた。結構痛い。

「ど、どうしたんですか・・・?」

忘れものか何かだろうか。

「腹が減った!!」

「・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・おいっ!

空腹っていうのはそんなに突然訪れるものなのだろうか。いやそもそも現在進行形でお菓子を頬張っている!

まあ、ともかくもさつきさんは相変わらずということで僕はうれしい。

「いい時間ですし、何か作りますか」

雫のやつも午後から道場に行くし、ついでに作ってやるか。どうせ手間は一回だ。


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