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続・エキセントリック・ビューティ  作者: 炊飯器
恐怖の夏旅行編
28/58

これはただのツンデレなのよ 4

「・・・・・・?」

なんだ?今の凄く意味ありげな捨て台詞は・・・?

「ねえ、春日井さん。『最後だからゆっくり楽しんで来い』ってどういう意味だと思う?」

「・・・・・・」

さっきから春日井さんはうつむいたまま黙りこんでいる。まあ忙しい人だし、もしかしたら最近寝不足で眠っているのかな。だとしたら起こすのは悪い。

「なあ、及川?」

「間違いなく帰ってきたら刺殺コースだな」携帯をいじりながらさも当たり前のように言ってのけた。

「刺殺っ!?」

「日常茶飯事だろ?」

「やめろっ!お前以外は僕の妹をよく知らないんだから重大な誤解を招くだろ!」

春日井さんに至っては多分「ノックも挨拶もしない子」みたいな低い評価をしているはずなので、マジで勘違いしかねない。

だいたいどんな日常だよ!僕の家は暗殺一家か!!

「わ・・・私もそう思うわ・・・」春日井さんは寝ていなかった。

「ほら、春日井さんに誤解されちゃったじゃないか!」

訂正しろ!僕の妹に謝れ!

「いや、本当だろ?前に春日井がお前の家に行ったときだって誘拐と勘違いして包丁突きつけてきたんだろ?」

「そうだけども!!」

日常の1ページだったけども!

「え?・・・あの後そんなことになったの?」

まずい。眠っていた春日井さんの「いじめスイッチ」がオンになろうとしている。

「ていうか若菜!漆根君の家に行ったのっ!?」

突然春日井さんの前に座っていた人が振り返り、春日井さんの方を激しく揺さぶった。オンになりかけたスイッチが一度元に戻る。

彼女の名前は・・・A川さんだ。

ほかの2人は確か・・・B野さんとCさんだったか。

「・・・・・・」

あれ?なんか今さつきさんの「そんなわけがないだろう!」っていう突っ込みが聞こえた気がしたぞ。まあ、そりゃ3人とも日本人だからっていうか世界中どこを見渡してもアルファベットと漢字の複合名字なんてないだろうけど。

そうそう、彼女たちは永川さん。日比野さん、志井さんだ。

「・・・・・・」

なんだろう。愛なき電波を感じる。気のせいか・・・?

というわけで彼女は永川さん。彼女もまあ・・・僕の被害者である。

「ええ・・・まああ、文化っ、祭のっ、委員でっ」

よほど揺さぶりが激しいのか、春日井さんの言葉が日本語の体をなしていなかった。

「もちろん家族同伴よねっ!?」唾が飛ぶことも一切構わず、永川さんは詰問を続ける。

「ちょっと、首がもげるわ」

「そんなことはどうでもいい!何人!?5人くらい!?」

ちょっと待ってください永川さん。どんだけ僕危険人物!?

「私の首はかなりどうでもよくないわよ。・・・・・・・・・・・・1人よ」

永川さんは春日井さんの方から手を放すと、ふらっと貧血を起こしたかのようによろめいた。座っているだけなのに随分と器用だな、と思ったらその横で日比野さんが背中を支えていた。連係プレーらしい。

「ちょっと待ってよ。私と漆根君は普通に委員の仕事を・・・・・・」

話の途中で春日井さんは突然口をつぐみ、僕の方を見てにやっと笑った。

にやっと笑った。

にやっと笑った!!

「ごめんなさい、何があったかなんて言えないわ。だって・・・・・・」うつむく春日井さん。

「あれ?どうしたのさ春日井さん?」

どうしてそこで言葉を閉ざしたの?続く言葉は「私がものすごいSっぷりを発揮していたから」でしょ?それだけなんでしょ!?ちゃんと言ってよ!!言おう!勇気を出して言おう!!

あれれ、おかしいぞぉ?なんだかすごーく汗かいてきたぞぉ。主に3人の側にある僕の右顔面が・・・。

「・・・・・・っ!!」

やばいやばいやばいやばいやばい!!!3人に凄く睨まれてるすっごい睨まれてる!!

「どうしたのかしら漆根君。顔色が優れないみたいね。もしかして車酔いかしら?」

ああ、春日井さんの空気読めない声が聞こえるよ。

「この状況でそんなことがいえる君は本当にすごいと思うよ」

「ええ、自分でも驚きよ。なんだかとっても楽しいわ」

「悪魔かっ!!」

「これはさっきのお返し・・・・・・いえ、復讐なのよ」

さっきって何だ?復讐って何だ?心当たりがなさすぎる!

「でも私の訪問がそんな修羅場につながってしまったのね。私も罪な女だわ~~」

ノリノリだった。

「いやいや嫉妬とかそういうのでは全くないから。僕とつむぎは血がつながっているだけの赤の他人だから」

仲がいいと思われるのも心外だ。いや、僕は別にかまわないんだけど、つむぎの方が心外だろう。

「赤の他人?つまり・・・結婚を目指していると?」

「ちょっと待てっ!さっきから会話に悪意を感じるよっ!?」

「悪意しか込めてないもの」

「最悪かっ!!」

なぜ日常会話でここまでえぐられなければならない。

「まあ、漆根君の妹だものね。暇さえあれば殺しにかかるくらいフツーよね」

「だから漆根家は暗殺一家か!!・・・僕の異常さに妹を巻き込まないでよ。あいつは本当に被害者なんだ」

僕が悪い。認めます、すいません!

「はあ?私や由佳に関しては被害者ではないとでも言うつもりかしら?」由佳というのは永川さんのファーストネームだ。

怖い!目が怖い!

「すいませんすいません!ごめんなさいごめんなさい!!僕がすべて悪かったです!一生かかって償ってゆく所存でございます!」

「あ、いえ、一生とかはおぞけが走るからやめてちょうだい」

「おぞけ・・・・・・」

そこまでか。

「だいたいもうすぐ会えなくなるわけだしね」

「なんでっ!?」

もうすぐ何が起こるの!?

「どうせ漆根君のことだから来週あたりに退学になって私たちとかかわりがなくなる予定なんでしょう?」

「どんな予定っ!?」

夏休み中に僕は何をはっちゃけるの?



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