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自己中王に、僕はなる! 2

さつきさんの食器と湯呑を片づけて部屋に戻って財布をポケットに押し込んだ。もちろんマイバッグも忘れない。

「どこへ行くんだ?」

部屋に入った瞬間ベッドにダイブしたさつきさんはあわてて体を起こした。

何たる自由・・・。

「夕飯の買い出しです。夕飯くらいちゃんと作らないと雫が料理しちゃうかもしれないですからね」

「なるほど。では私も付き合おう。勘違いするなよ、ただの暇つぶしだからな!」

「まだやってたんですかそのツンデレキャンペーン」

何というお得期間だ!

鍵をかけ、スーパーに向かって歩く。普通なら自転車で行く距離だけどさつきさんと話しながらだったらむしろ短いくらいだ。

「しかし君の従妹の料理というのも見てみたい気はするがな」

「ふざけるなっ!!」

ガチでキレた。

「・・・ごめんなさい」

本気で謝られた。

「本当にひどいんですからね。少女マンガで砂糖と塩を間違えるヒロインに萌える主人公が居ますがそんなレベルじゃないんですよ!」

ちなみに僕はリアルに塩と砂糖を間違えた女子を見たことがある。小学校の調理実習のクッキーに塩を入れやがった。実際にやられたら本気でいらっとするよ、あれ。

「あいつにキッチンを使わせると僕は死ぬんですよ」

「そのレベルなのか・・・。申し訳ない」

さつきさんは笑いに関しては貪欲すぎるがさすがにそれは笑えないと悟ってくれたらしい。

「仕方ない。今晩は君が絶品料理をふるまえ!」

「イエッサー」全力で敬礼する。

背後で二人連れのおばさんがひそひそ何か話しているが全く気にならない。最近はさつきさんと話せなくなくなるくらいなら高校やめるのも吝かではないと考えている僕である。

「そもそも最初に料理というものを考えたものは偉大だと思わないか?」

「なんですいきなり?」

「考えてもみろ、サバはそのままでもおいしいだろう?味噌もそのままでもいけなくはない」

「まあ、そうですね」

ニンジンスティックに白味噌付けるとおいしいよ。

「だがそこからサバの味噌煮を作り出す。言うならば1+1を3にする行為だ」

「そう言われれば確かに!」

「さらにだ!そのままではなかなか食べようとは思わないニンニクも使い方次第では強力な戦力だ!1に0を足しても3にも4にもなる」

「ペペロンチーノとか鶏煮込みとかですね!」

すげえ、料理めっちゃすげえ!

「これは科学的にも実証されてるらしいな。旨みの相乗効果と言うらしいぞ。家庭科の先生が言っていた」

「言ってました!」

さつきさん、ちゃんと授業聞いてるんだ・・・。

「さあ、今夜は期待してるぞ」

「ハードル高っ!!」これはきつい。

つむぎちゃ~ん、カムバーーック!!

「・・・・・・」

無理、だよね。頑張れ、僕!

「頑張れ、僕。イニシャルはGBだな。GBと言えばゲームボーイだな」

相変わらず話はころころ変わる。

「そうですね。僕は持ってませんけど。当時は凄く流行ったらしいですね」

「今流行ってるのはワンダースワンだったか?」

「なぜそんな黒歴史を!?」

その名前だけは出しちゃダメ!!

「で、ゲームボーイなわけだが、どうしてガールではないのだろう?これは女性蔑視ではないだろうか」

「確かに!」

どうしちゃったんだ今日のさつきさんは。言う事が的確すぎる。

「かといってここでゲームガールにするのも問題だ。そうすると男性サイドから抗議が殺到する」

「するのか?」

ガールから苦情が来たとは思えないんだけど。

「フェミニズムというのは本来男女平等という意味だからな。そう考えると性別表現を含まない方がいい」

「例えばゲームチルドレンとかですか?」

「まだまだ甘いな。要するに小さいゲームであればいいんだろう?だからこんなのはどうだ。語呂もいいぞ」

「ど、どんなのですか?」ごくりと唾をのんだ。

「ミニゲーム」

「趣旨が違うっ!?」

合ってるよ、確かに合ってる!語呂もいい!だけどその席には割りとしょぼめな先約がいるよ・・・。

もうスーパーが目の前にやってきていた。僕はさつきさんの指示に従って買い物かごに食材を入れてゆく。帰りはマイバッグを提げて同じルートで来た道を戻った。家が見えてきたところでさて夕飯まで何をしようかなと思っていた僕の耳にとんでもない声量が飛び込んできた。

「おせえぞ!暑いんだから早くしろ!」

こんな暑い時間帯にもかかわらず漆根家に戻り、玄関前に腰をおろしている雫の姿があった。



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