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わかった。あたしはもう金輪際勉強はしねえ! 1

えー、『エキセントリック・ビューティ』の続編です。未読の方はぜひそちらを先にどうぞ。


続編と言えばマ○リックスに代表されるように残念なのが基本ですが、頑張りますので応援よろしくお願いします。

あれから、3年―――というわけでもない。気分的には、え?先週じゃなかったっけ?・・・っていう感じだ。しかしてその答えは?

―――1ヵ月半だ。

さてさて、ここで言う「あれ」とは何を指すんだろう?文化祭が開催されたころから?まあ、間違えではない。ほとんど同時期だ。でも、春日井さんには大変申し訳ないけど、もうちょっと重要なことだ。しかしてその答えは?

―――僕が人妻萌えという新たなジャンルに目覚めてからだ。

あっ、ちょっと、そこ!引かないで。大丈夫、大丈夫だよ。不倫とか愛人関係とかまでは興味ないよ!

「要するに僕が何を言わんとしているかというと、さつきさんは相も変わらずきれいだなってことなんですね、これが」

うん、さっきから僕は自分一人しかいないこの部屋で何をブツブツ言ってるんだろう。どうやら真正の独り言体質になってしまったみたいだ。ちょっとショックだ。

「ま、いっか。つむぎにはとっくに『一人ボケ突っ込み体質』だと思われてるんだから」

いや、よくない!いいわけがない!なんだその新ジャンルっていうか精神病患者は。

「・・・・・・」

さつきさんがいないこの沈黙に耐えきれなくなってしまったこの僕こと漆根耕太はこの沈黙を打破するために、一歩、危ない人へと近づいてしまったわけだ。部屋の中ならいいんだけど、最近に至っては道路の上で「あっ、こっちか」とかつぶやいちゃうもんな。そのうち僕は本物のサトラレになるのかもしれない。それこそ周りの皆さんにとっては迷惑であって迷惑以外の何物でもないのだけれど。

部活に入っていない僕にとって、夏休みはとてつもなく暇だ。特に趣味のない僕にとってはこの膨大な時間はある種地獄ですらある。

「及川は及川で家族仲良く旅行に言っちゃってるし、遊ぶような友達は―――ほかに、いないし・・・」

・・・・・・・・・・・・。

ついに独り言でへこむレベルにまで達してしまった。もしかしたらすでに危ない人のボーダーラインを越えてしまってるのかもしれない。危ない人のラインのほうが僕を追ってきているのだ。

しょうがない、今日はもう何かをすることをあきらめて宿題でもやろう。

「どんなまじめっ子だよ、僕は」

ああ、むなしい。夏休みを迎えるまでは何とかやってこれたけど、さすがに一日暇な日が40日くらい続くとそろそろ自分の存在意義について説いてみたくなる。

ま、いいさ。どうせ宿題はやらなくちゃいけないんだ。今やるか後でやるかの違い。おいしいものは先に食べなきゃね。

「・・・・・・」

勉強がおいしいものって・・・。まじめを通り越してある種変態ですらある気がする。

突然だが、僕はエアコンがあまり好きじゃない。なんていうか、涼しさとともに埃をまきちらされている気がする。そう、僕の部屋の隅の上の方を陣取っているやつは毒ガスを吐く。というわけで僕のそばには扇風機。軽快な音を立てて回る回る。

「まるで運命のようじゃないか。は、は、は」

「なにがだ?」

「うわあああああああああ!!」

ばれちゃった、独り言体質が完全にばれちゃった!・・・じゃない、ここで重要なのはそんなことじゃない。

「さつきさん、どこから入ってきたんですか!?っていうかいつからいたんですかっ!?」

「なんだ、そんな声をあげて、人のことを幽霊みたいに」

あなたは幽霊ですが・・・。

「一人ボケ突っ込み体質がどうとかいうところからだな」

「・・・・・・」ものの見事に最初からじゃん。

さつきさんはベッド(ちなみに僕は4月から使っていない)に腰かけた。黒くて絹のような長い髪、ややつり目の理髪そうな顔。足を組むしぐさまで大人びていて、さながら天使のような人だ。

「まったく、窓が開いていたぞ。不用心にもほどがある」ま、中身はまさしく子供だけど。

「僕がいる部屋の窓が開いていたらそれは換気と呼ぶんですよ」夏だもん。

だいたい住人がいるのに泥棒が入ったらそれはもう強盗だ。防ぎようがない。潔く金品を明け渡そう。非暴力こそ僕の売りだ。

「ガンジー先生を屈服の言い訳に使うなっ!!」さつきさんはわざわざ身を乗り出してまで突っ込みをしてくれた。

なんて僕に優しい人なんだろう。ひいては地球にやさしいことになる。

「君はいつの間にそんなに地球に対して重要人物になったのだっ!?っていうかボケるのをやめろ。私はまだ登場してから1回しかボケてないのに2回突っ込んでいるではないか!ばかものっ!!」

「そうでした」

確かそういうルールだった。一人でいるとボケを考えておくことはできるけど突っ込みは相手に対する反応だからアドリブで行くしかない。いうならばさつきさんのせいだ。

「ぐっ・・・突っ込まん、突っ込まんぞ私は」

「いつもボケと突っ込みを意識するとか君はお笑い芸人かっ!?」

「私のものまねをするなっ!!・・・はっ、しまった!」

僕の声真似、さつきさんバージョン。暇にあかせてケータイのボイスレコーダーで練習したけど、結構さつきさんに似てると思う。

「ふっ、ふっ、ふっ・・・僕の勝ちですね」

僕、勝利のポーズ。やばい、なんかすごく楽しくなってきた。

「くっ、この借りは必ずいつか晴らしてやるからな・・・」うらみがましい目で見られた。しかしその目も様になっている。さすが。


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