表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色  作者: 8969
2/6

= 告白 =

■告白



僕は彼女にどう気持ちを伝えようか考えていた。


言ってフラれたらどうしようかとも考えた。


お互い今のまま何も言わず、会いたい時に会って、


その時間を大切にするべきなのだろうか。


僕の決意が不安定なまま次のデートの日はやってきた。


この日は彼女のリクエストでクラブに来た。


『今日は朝まで飲んで踊ろう♪』


今日も彼女のペースだ。


クラブ内の大音量や人ごみの中ではまともに話も出来ない。


それでも今日は朝まで一緒にいられる。


途中強引にクラブを抜け出す事だって出来るかもしれない。


彼女は楽しそうだった。


仕事のストレスや色んな悩みがあるのかもしれない。


僕はバーカウンターで楽しそうに踊る彼女をずっと見ていた。


『ねぇっ!踊らないの?』


『俺はいいよ。。』


断ったつもりだったのだが彼女に手を引かれダンスフロアに連れて来られてしまった。


すると、彼女から僕に抱きついてきた。


大音量や人ごみのせいか、酔っていたのかもしれない、


非現実的な空間で大胆になっていたのかもしれない。


『ワタシ、ケンちゃんの事好きだよ。』


彼女が抱きつきながら僕の耳元で囁いた。


僕が今日、伝えようとしていた事を彼女から先に言われてしまった。


そんな自分が情けなかった。


『俺もナミの事が好きだよ。本気で好き。』


女々しい自分を振り払うように僕は彼女の目を見て言った。


クラブ内は重低音がきいた大音量でその声は彼女にしか聞こえていなかっただろう。


その瞬間だけは二人だけの世界だった。


彼女は微笑んでくれた。


その時はそれだけで満足だった。


結局その日は朝までクラブで踊っていた。


帰りのタクシーの中で踊り疲れた彼女は僕に寄りかかりながら眠っていた。


その寝顔を見ながら、


少しずつでいい、お互いの事をわかっていけたらと僕は思った。


タクシーが彼女のマンションに着き彼女を起こしたが、すぐには起きなさそうだったので


僕は彼女をかかえ二人でタクシーを降りた。


彼女のマンションはオートロックだったので僕一人の力では自動ドアの前までしか送る事が出来ない。


たとえオートロックが開いたとしても僕は彼女の部屋を知らない。


仕方なく入り口にあるベンチに腰をかけ彼女が起きるのを待った。


僕達は今日、本当の恋人になった。


でも今までの不安が全て無くなったわけではない。


もし彼女が起きて何も覚えていなかったらまた振り出しだ。


酔いが覚めてくると僕はまた現実と幻を彷徨う女々しい男に戻ってしまった。


そんな僕の不安を彼女の寝顔だけが癒してくれた。


それからどれくらい時間が経ったのかは分からない。


2、3分?、10分?、1時間?、


僕の気持ちが不安定に行き来していると彼女がやっと目を覚ました。


始めは寝ぼけて今の状況を把握出来てなかった彼女も、


酔いが覚め、目が覚め、僕に話しかけた。


『ごめん、、寝ちゃった、、ていうかここワタシのマンション?』


『そうだよ、タクシーで送ってきたんだけどナミが起きないし、


オートロックも開かないし、ここで待ってたんだ』


そう僕が説明すると彼女もやっと状況を把握したようだった。


『本当にごめん、、』


彼女は気まずそうだった。


『平気だよ、俺も酔ってたし、ここで酔い覚ましができたから』


僕は精一杯の笑顔を作ったが、彼女はさらに気まずそうな表情をしていた。


『家寄って行く?』


彼女からの思いがけない誘いに僕の酔いは一気に覚めた。


『いいの?無理しなくていいよ。』


僕は飛び上がるほど嬉しかったが平静を装って言った。


『大丈夫、部屋汚いけど、、コーヒーぐらい煎れるから。』


そう言って彼女は僕と手を繋いだままオートロックを開け、エレベーターに乗り、


6階の部屋まで歩いていった。


思ったより広い1LDKの彼女のマンションに同棲している男の影はなかった。


また一つ彼女の事が知れて、距離が縮まった事に安心した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ