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灰色  作者: 8969
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= 幻 =

■幻



二人で会うのはもう10回目だ。


『ねぇ、今日は朝まで一緒にいられるの?』


夜景の見える公園で呟くように聞いてみた。


『明日も朝から仕事だから、、ごめんね、、』


僕と彼女の関係は曖昧だ。


どちらからも告白のようなものはしていない。


ただ二人で会うと手を繋ぎ歩く。


周りから見れば普通のカップルだ。


彼女は僕よりも少し背が高い。


でも身長の差が気になっているのは僕だけのようだ。


『そっか、じゃあそろそろ送っていくよ』


そう言ってまた彼女の手を引き車へと歩いた。


『今日も楽しかったよ!』


彼女のマンションの前に着くと笑顔でそう言った。


『次はいつ会えるかな?』


『また連絡するから、ね!そんな寂しそうな顔されたら車降りにくくなっちゃうじゃん。。』


身長のコンプレックスもあり、主導権はいつも彼女にある。


『ごめん、わかった。またメールしてね。。』


僕の声は弱弱しかった。


そのまま顔を上げられずにいると、彼女が僕の顔を覗き込むようにキスをしてきた。


突然の一瞬の出来事に僕はただ驚くだけだった。


『じゃあね、気をつけて帰ってね、家着いたらメールちょうだい!』


笑顔で彼女は車を降り、何度も振り返って手を振ってマンションに入っていった。


二人で手を繋ぎデートをして、そしてキスもした。


二人は恋人同士なのだろうか。。


僕はまだ彼女の苗字を知らない、名前も本名かは分からない。


彼女の仕事は昼と夜のシフト制であるらしい。


ただ、仕事の内容は教えてもらっていない。


彼女の住むマンションはわかっているが部屋の番号までは知らない。


もしかしたらその部屋には既に同棲してる男がいるかもしれない。


女々しいと思いながらも僕の気持ちはどんどん彼女に惹かれていき、


気がつけば一人でいる間、ずっと彼女の事を考えていた。


お互い必要以上の詮索はしない、もちろん束縛も無し。


二人でいる間は余計な事を考えずおもいっきり楽しみたい。


3回目か4回目のデートの時に彼女がそう希望した。


僕も二人でいられる貴重な時間を大切にしたかったから同意した。


それでも会えば会うほどに僕の気持ちは不安定になるばかりだった。


彼女のマンションからの帰り道に、その日デートした内容を思い返す。


映画や買い物、イタリア料理での食事や時には普通の居酒屋で何時間も過ごす時もあった。


いつも頭の中でその日のデートを繰り返し再生した。


時々、僕は夢を見てるのではないか、彼女は幻で、幻想の中で僕は一人生きているのではないかと思う。


夢ならすぐに覚めて欲しい。


だが手を繋ぎデートをし、10回目のデートでキスをしたのは現実だ。


僕は家に着くと必ず彼女にメールをした。


するとすぐに返信が来る。


メールを見ると紛れも無く現実だと思わざるを得ない。


今までそれなりに女の子と普通の交際はしてきた。


でもこんなに不安になったり、相手の事をずっと考えるのは初めてだ。


彼女はまだ若い。


きっと最近の子達はこういった割り切った恋愛が普通なのかもしれない。


お互い束縛もせず、遊びたい時に男女問わず遊びたい相手と遊ぶ。


僕も今まではそれで大丈夫だった。


浮気の心配をされる事はあってもする事は殆ど無かった。


それは自分の気持ちが相手に対して本気ではなかったからかもしれない。


いや、今までも付き合ってる間は本気で好きだった。


別れた後もすぐに忘れられない子もいた。


ただこんなに自分の気持ちを自分でコントロール出来なくなった事はなかった。


彼女の気持ちを知りたい。


僕達は恋人同士なのだろうか。


僕自身も彼女に好きだと言った事は無い。


もちろん彼女から言われた事も無かった。


いつまでも女々しく曖昧な気持ちでいるのは嫌だ。


もしかしたら彼女は僕がちゃんと告白をするのを待っているのかもしれない。


僕は次のデートで自分の気持ちを彼女に話そうと決意した。


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