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赤い満月の雫  作者: 月原 悠
こいごころ

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8/8

障子の音

早いもので、一年の月日が過ぎた。

房江は年ごろになるにつれ、器量の良さが目立つようになった。

目元のやわらかさや白い肌は、置屋の者たちの目にも留まった。


房江も芸者の見習いとして、厳しい教えを受けた。

礼儀作法から始まり、三味線、踊り、特に言葉遣いなどの客の扱いについて、年上の芸者から教わったのである。

それは厳しいものであった。


三味線は房江が手先の器用さゆえに、上達が早かった。

さまざまな曲を覚えていった。


踊りも伝統的なものであったが、器量の良さと体の美しさから、妖艶たる輝きを放っていた。

しかし、客の扱いがどうしても上手くいかなかった。

性分が大人しかったこともあり、自らすすんで話す事が苦手であった。

しかし、その不器用さがかえって初々しく、次第に客からも好かれていった。


房江は客相手が終わると、いつもため息をついていた。

心の中で哲夫の姿を追った。

追っても追っても、姿がまるでかげろうのように消えていった。

それでも、哲夫のことを想い続けた。


哲夫も房江が愛しかった。

房江が客相手をしているのを見ると、心が騒いで仕方がなかった。


そんな折だった。

房江は女将から部屋を移るようにと言われた。

芸者見習いとしての立場が少し変わったためであった。

彼女は年長の芸者たちの部屋の棟で、日々を過ごすことになった。

今までの部屋より広かった。


部屋の向こうの棟に哲夫がいる部屋があった。

房江が客の相手を終え、部屋へ戻って何気なく障子を開けると、向こうに哲夫の姿が見えた。

哲夫も外を見ていて、房江の姿が目に入った。

目があった。

房江は胸がいてもたってもいられなかった。

それは哲夫も同じだった。

しかし、房江は恥ずかしくて障子を閉めた。

池から魚が飛び上がる音が静かに響いた。

房江は閉じた障子にそっと手を当てた。

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