表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い満月の雫  作者: 月原 悠
幼少のころ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

おつとめ

翌日から、房江の奉公が始まった。

置屋の中は廊下が縦横に走り、幼い房江には、どこがどこへ続いているのかもわからぬほど複雑であった。


磨き上げられた長い廊下はどこまでも続くように見え、それだけで房江は気が遠くなった。

朝はその広く長い床拭きから始まった。


雑巾を持つ手はすぐに冷たくなり、庭の井戸から汲んでくる水は、あかぎれの切れた指にしみて、ひりひりと痛んだ。

真冬の木枯らしも厳しかった。


房江は小さな体を縮めながら、ただ夢中で働いた。


最初は自分がどこを拭いているのかもわからず、年上の女中からたびたび叱られた。

房江は年上の女中が怖くてたまらなかった。


「ほら、あんた、ここも拭き残しがあるでしょ」

「申し訳ありません」


あまりの辛さに、置屋の広い敷地内の庭の木に隠れては、泣き出すことが多かった。

家族と過ごした日々が懐かしかった。

ふるさとが恋しかった。


床拭きの後は皿洗いの仕事が待っていた。

房江の奉公先は由緒ある置屋で、流しには山のような皿があった。

大きな皿から小さな皿まで、一枚一枚洗い上げていくと、

床拭きのときと同じように手が痛くてたまらなかった。

房江には、気が遠くなるように思えた。


置屋から逃げ出してしまいたいとも思った。

おつとめは辛かった。


桜のつぼみが開いた。

つらい日々の中にも、うつろいはあった。


手際もよくなり、心にもゆとりが生まれてきた。

置屋の同じ年ごろの女中とも仲良くなっていった。

ある日、その娘がそっと手ぬぐいを貸してくれたことがあった。

房江はうれしかった。

その子といる時だけは、房江もほっとすることができた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ