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赤い満月の雫  作者: 月原 悠
おいとま

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プロローグ

老いとは儚いもので、深い山に沈みゆく夕日のよう。

京都のある老人ホームに、房江はいた。

腰も、いつしか深く曲がっていた。

もう、記憶もあやふやになっていた。

夕暮れの色が窓辺に滲むころ、房江は決まって職員に言った。


「そろそろ、おいとまさせていただきます」

「房江ちゃん、おいとまって何?」

「そろそろ、行かないと哲夫様がお待ちになっております」

「哲夫様って誰? それに房江ちゃんのおうちは、ここの老人ホームよ」

「いえ、満月の夜に、赤い橋の上で哲夫様が待っていらっしゃるのです」


雨が降っていた。

その雨は涙色のまま、やがて雪に変わり、房江の黒髪に白く積もっていった。

房江は拭わなかった。

赤い橋の上で、ただ哲夫を待っていた。

満月の夜であった。

月の光は静かに房江を覆っていた。


「房江さん、お待たせしました。ほんまに申し訳ありません」

「哲夫さん、もう来ていただけへんのやないかと思うておりました」

「さあ、この赤い橋を渡って行きましょう」

「ほんまに大丈夫どすやろか?」

「この橋を渡った先には、私たちの行く先がおます」

「はい……」


吐く息は白かった。

房江は小さくうなずいた。

そして、哲夫とともに赤い橋を渡っていった。

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