閉じ込められた9人 1
集まったのは9人。
ショートカットの髪と切れ長の目を持った美青年。
腰までの赤い長い髪を高く1つに結い上げた活発そうな女の人。
ボブカットでミニスカートが似合う金髪の男の子。
シルバーでサラサラな髪の、真っ黒なワンピースを着た美しい女性。
飴色のふわふわな髪をおさげに結った中学生くらいの女の子。
目の下に大きな傷のある体格の良い茶髪の男性。
眼鏡をかけて黒い長い髪を1つに纏めた優しそうな男性。
刈り上げたボーイッシュなショートヘアがかっこいい女性。
そしてスーツと染めたことのない真っ黒な髪を1つにくくった地味な私。
突如家に届いた封筒の中には、地図と時間と日付が書かれた紙が入っていた。
『試験会場は地図に示した通りです。部屋番号は276番。1月26日14時までに試験会場へ現れなかったものは失格とします』
失格という言葉に怯えて1時間前から会場であるこの部屋で待機していた私は、隅で壁と一体化していた。15分前になってチラホラ現れ始めた受験生達の髪色や服装に驚きつつ、それが4人目を迎えたあたりで場違いなのは私では無いだろうかと思い始めていた。
最後の1人、切れ長の目の美青年が会場に入って目が合った時、彼は目を丸くして驚いていたけど私も同じくらい驚いた。私と彼は顔見知りだった。
それでも私達が言葉を交わす時間はなかった。彼は時間ギリギリに入室してきたから。
ドアが閉まると同時に、室内に色のない声が流れる。
『試験開始時刻となりました。これより皆様には会場にあるモニターに掲示される内容を行なっていただきます。試験時間はきっかり60分。時間内に達成されなかった場合、即失格となります。それではこれより就職試験を開始します。皆様の健闘を祈ります』
アナウンスが切れると、壁に埋め込まれたテレビが光る。
おもむろについたテレビには、試験内容が表示されている。
『あなたの命と等しい物を守り、それをもってこの部屋から脱出しなさい。制限時間は50分。下のタイマーが0を表示した直後、この部屋の天井は落ちてきます。なお、この部屋にあるものでしたら何を使って頂いても構いません』
テレビの画面だけが無機質に光る室内で、誰もが文字を読んで静まり返る。
「ガッハハハハハ!始まったぜぃ!」
体格の良い男性の笑い声を合図に、室内にいる人達が動き出す。
壁に触れる者、脱出出来そうなものを探す者。中には服の中や鞄の中に入れていたであろう武器を取り出す者。
緊張とありえない空気に吐きそうな気持ちを抑えて私も動く。今はこの状況に突っ込んでいる暇はない。50分以内にここから出なければ、失格となる。それは【死】という形で。
緊迫の空気に包まれる中、就職試験は開始した。
天井が落ちるまで、残り49分26秒。




