表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

第5話 暗闇の中、一筋の光

鍵のかかった由佳の部屋、上半身裸の由佳にベッドに押し倒された悠太。


悠太

「チッ!こんな見え透いた罠に易々と引っかかるかよ!このクソビッチ!」


そう言うと悠太は由佳を押し返して上体を起こした。


由佳

「…!」


悠太

「ハニートラップってやつか?ハッ!残念だったな!お前ごときで俺が興奮するとでも思ったか?自意識過剰のクソ女が!」


その悠太の発言を聞いた由佳は誘惑しようと甘えた表情から一変、真顔になって言葉を放つ。


由佳

「ふーん…だったら…」


すると突然、由佳は悠太の両腕を掴んで自分の胸に押し付ける。


悠太

「…!…何を!」


由佳

「きゃあああああ!助けてえええ!」


悠太

「!?!?」


すると、閉まっていたはずの部屋の鍵がガチャと開き、途端に無限のシャッター音が鳴り響いた。部屋を開けたのは葵と真琴だった。


真琴

「あーあ。ついに一線を超えちゃったのね。」


「こんなこともあろうかと。緊急時は鍵を開けられるようにしといてよかったわ。」


悠太

「…お、お前ら…消せ!今の写真!」


暴れてベッドから出ようとする悠太。すると由佳が再び悠太を押し倒し、真琴も駆け寄って2人がかりで悠太を押さえつける。


悠太

「ぐっ…!こんにゃろ!嵌めやがったな!卑怯だぞ!お前ら…」


「黙れ!」


悠太

「!」


抵抗する悠太に一喝する葵


「バカみたいな間違いで女の園にノコノコ現れた挙句、境遇が気に入らないからとタメ口で悪態をつき、チームの輪を乱したくせに悪びれもせず2ヶ月で希望する高校へトンズラ?そんなの私たちが許すと思う?」


悠太

「うっ…」


「キャプテンは何も言わないでしょうね。監督に至ってはアンタの技術を参考にしろとまで言う。でもね!女子野球を舐め腐って煽るようなアンタなんかいるだけで迷惑なのよ!」


悠太

「…じゃあその写真を監督に見せて追い出す気か?」


「いいえ。ここまで悪行を重ねたアンタをそう易々と逃がさないわ。」


ニヤリと笑う葵


「チームワーク力…その評価の権限はキャプテンと、副キャプテンの私に一部委任されている…編入に必要なんでしょう?」


押さえつけられた悠太の顔を覗き込むように見る葵


「命令、私たちの言うことには従うこと。これでアンタが今後どんな野球人生になるのか…私たち次第ってワケ。フフフフフ!」


真琴

「ハハハハ!」


由佳

「ウフフフフ!」


高笑いする3人。真琴と由佳は悠太を解放する。由佳は上の服を着始めて、3人は部屋を出ようとする。葵が悠太のベルトを拾い、悠太に向かって投げつける。


「それつけて、すぐ戻って来なさいよ!2ヶ月間だーっぷり楽しみましょうねぇー!フフフフフ!」


そう言って3人は笑いながら部屋を出て行った。バタンと扉が閉まる。


悠太

「あああああああああ!!!!」


追い詰められた悠太は部屋の中で頭を抱えて叫ぶ。その叫び声は虚しく寮内に響いた。


以後、葵たちの嫌がらせはエスカレートしていく。


とある日の練習中、ウォーミングアップとしてペアを組んでキャッチボールをすることになったが相手がいない悠太。


悠太

「部員は偶数のはずだろ?誰か休みか?」


すると、葵、真琴、由佳が3人でキャッチボールをしているのに気づいた。


「1人で壁当てでもしてればー?」


真琴

「ハハハハ!」


悠太

「チッ…」



また別の練習日、グラウンドに向かう前に寮にてスパイクに履き替えている時のこと…


悠太

「あれ?俺のスパイクがない!」


「あー、あれ?なんか変なスパイクだったからゴミかと思って捨てちゃった〜」


悠太

「は!?マジか!?ごみ収集は…」


「台所のビニール袋の中〜」


由佳

「ウフフフ!」


悠太

「クッソ!」


台所に向かう悠太。ビニール袋を見つけ、中から自分のスパイクを見つける。


悠太

「…雑に扱われたり、汚れたりはしてねぇか…まだ履けるが、気に入っていたスパイクだったのに…」


その一部始終を見ていた1年生たち。葵たちが去ったのを確認して話し出す。


美咲

「…」

 

彩花

「…なぁ…エスカレートしてへん?」


エマ

「本当にこのままでいいんでショウカ…」


結衣

「ただ、副キャプテンの指示は絶対だし、キャプテンは何も言わないし。2ヶ月なら我慢した方がいいのかも…」


その後もどんどんエスカレートしていく葵たちのいじめ。最初こそ抵抗していた悠太だが、写真の件もあり次第に無抵抗、そして無気力にただ葵にされるがままになる。


 

そしてとある日の夜。この日の日中は雨が降っていたため、チームは屋内で練習を行った。居間にて窓の外を眺める葵。


「もう完全に止んだわね。」


居間には葵の他に真琴と由佳が寛いでおり、そこから見える位置に葵の命令で夕飯の後片付けをしている悠太がいた。この付近にいるのはこの4人だけ。


「おい!男!それ終わったらボールボックス持ってグラウンド行け!」


悠太

「は?もう門限過ぎたろ!で何のために!」


真琴

「あ?生意気やな?」


悠太

「夜練するの。そのセッティングをしろ。」


逆らえない悠太。夕飯の後片付けを終えると渋々準備のためにグラウンドへ向かった。その様子を背後から何者かが覗いていた。


しばらくして、葵たち3人は居間から自室へ向かい野球道具を持ってグラウンドへ向かった。その様子もまた背後から何者かが覗いていた。


グラウンドにやって来た3人。悠太は既に用意をして待ってた。


悠太

「何する気だ?」


「ロングティー」


悠太

「ロングティー!?外野の照明消えてんだぞ!奥の方はぬかるんでる!そんなとこにボールすっ転がしてどうするつもりだ!」


真琴

「ずっと生意気何だよテメェ!」


由佳

「最近は結構大人しい思たらこれかい。写真の件はええの?」


悠太

「ぐっ!」


「ボールの件は問題ないわ。だからそのボックスに入った球、100球を3人で消化していくわよ。トスしなさい。」


こうして、3人にやれ高いだの低いだの注文されながら100球をトスする悠太。夜のグラウンドでもお構いなしに色んなところへ白球を飛ばす3人。雨上がりゆえ、外野後方のぬかるんでる部分にも球は飛んでいく。そして打ち終わった時…


「ふぅー!打った打った!」


真琴

「雨だとこれは出来へんからな!」


すると悠太の方を見てニヤリ笑いながら告げる葵


「じゃ。100球全部。1球足りとも残さず拾って、全部洗って元に戻す。それが終わってから寮に戻ること。」


由佳

「ひぇー!色んなとこ飛んだでー!真っ暗闇の中100球!どんだけ時間かかるんやか!」


それを聞いて何も言葉を発さずただただ呆然としている悠太


真琴

「流石にもう抵抗せんか。」


由佳

「お疲れかな?」


「ま、抵抗したところで逆らえないけどね。じゃ、よろしくー」


そう言って3人は笑いながらグラウンドを後にした。1人取り残された悠太。しばらくしてさっそく球を拾い始める。


正直、怪物並みのスタミナを持つ彼からすれば、この程度で体力が切れるということはなく疲労感は特にはなかった。たかだか女子3人のいじめなど、何をしようが悠太にとっては体力面では大したダメージはない。だからこの2ヶ月さえ!と気力で乗り越えようとした矢先に、写真事件が起きた…。



そして、先に寮に戻って来た葵たち。


由佳

「あー疲れたーシャワー浴びたーい。」


真琴

「おい!由佳!あんま大声出すな!門限過ぎてんねん!ウチらが外にいたのバレたら…。」


「いる!」


真琴・由佳

「え!?」


真琴と由佳に一気に緊張感が走る。


由佳

「バ、バレたん?」


真琴

「いるって何や葵!」


「私たち以外にも外にいる子が!」


そう言いながら下駄箱をじっと見てる葵。それを聞いて顔を見合わせる真琴と由佳。緊張が取れてホッとした表情になる。


由佳

「なんやー!葵、脅かさへんといて!」


真琴

「ウチら以外に外いるって、アイツのことやん!当たり前やんか!」


「違うの!この下駄箱!名前見て!」


すると名前を見た真琴と由佳が驚く。


由佳

「な、何でこの子が!?真面目な印象やったのに!」


真琴

「…てことは、これこそ正真正銘の門限破りよな…どないする?一応、ルール上は門限破りを発見次第、門限を破った者がその場にいなかったら直ちにキャプテンと監督に報告…」


「ぐっ!いや、そのやり方だと私たちが悠太に門限を破らされてるのもバレる!」


由佳

「でもこのままもまずいしなぁ…」


「…彼女が何事もなく明日の朝に寮に戻ることを信じて、何か策を考えるわ…」



1時間ほど時間が経ったが、まだ球を拾い続けている悠太。体力的には何一つ問題がないはずなのに、足取りが重い。たった1文字、されど1文字、その間違いで自分の野球人生は大きく変わってしまった。たった2ヶ月、されど2ヶ月、そう思って耐えようと誘われた桃源郷の正体は地獄。


それでも自分は強いから、今まで評価されていたから、こんな環境でも耐えられると思っていた。しかし心はポッキリと折れてしまった。自分の野球人生は詰んでしまったのかと思考を巡らせる悠太。いじめた3人はそこまで恨んでいない。行動はともかく、彼女たちの意見にも理解があった悠太。全ては自分の間違いのせい。そう抱え込んで、お先真っ暗だと思い込む悠太。


こうして暗闇の中、球を探し続ける悠太に。突然一筋の光が照らす。その光の正体はスマホのライト。弱々しくも暗がりの中では煌々と輝いていた。もう片方の手には悠太が探していた泥だらけの白球。


「はい、探し物。」


そう言って白球を持った手を不器用に悠太に差し出す人物は、同学年の捕手、藤田美咲だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ