夏のホラー2025”雨あがり”
軽いホラーです、そんなに怖くはないので安心してみてください。
ザーザー、ザーザー
やむことのない雨が降り続けている
ザーザー、ザーザー
空はお日様の光を分厚く重苦しい雲が隠してしまっているからか光がこぼれてくるような隙間はない。いつもの青く澄んでずっと見守っていた光はあの雲に殺されてしまった。
ザーザー、ザーザー、ザーザー
少し強くなった雨が降り続けている
ザーザー、ザーザー、ザーザー
いつもののどかな田園風景は重苦しい空気が満ち満ちておりあぜ道は向かるんで足が抜けなくなりそうだ。ここを走り回って遊んでいた子供の笑顔はこの雨に殺された。
ザーザー、ザーザー、ザーザー、ザーザー
さらに強くなった雨が雨が降り続けている
ザーザー、ザーザー、ザーザー、ザーザー
向こうから誰かが走ってくる。びしゃびしゃ音を立てて走ってくる。
「やめてっ!いやっ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!」
びしゃびしゃザーザーびしゃびしゃザーザー…ぐしゃ
こけた。雨でぬかるんで通りずらくなったあぜ道を一人の少女がこけてしまった。黒色の髪はきれいに切りそろえられておりとても整った顔立ちをしているがうつむいた顔は恐怖と苦痛でゆがんでとてもひどい顔をしている。ところどころほつれた白いワンピースは泥でよごれていて見る影もない
「助けて!お母さん助けて!助けて!助けて!たすけて!たすけて!」
必死で助けを叫んでいる。けがはあまりひどくはなさそうだが心が折れかかっているようだ。家の中で楽しく弟と過ごしていた記憶やお母さんに抱きしめられていた記憶が今見ている景色と照らし合わせられては消えていく。
「さむいよ、いたいよ、こわいよ!」
水に濡れた肌が走ることをやめたせいで限界と寒気を訴えている。もう立てないもう動けない、もう逃げれない。
「えっ、とけて、る?」
ふと自分の足を見た少女が自分の異変に気が付いてしまった。
「え?、え?、え?、え?」
足の先が、手の指がとけていく
「なんで?、なんで?なんで?」
少女が激しく動揺して自問自答を繰り返している間にも溶けていく。四肢が溶けて髪が溶けて思考が溶けていく。
「あ、あ、あ、あ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あしのほねがみえた、うでのきんにくがみえた、めのまえにじぶんのめだまがある、どうしてわからないりかいできない。
「お、か、あ、、さ、、、ん」
ザーザー
雨が弱くなった、あがってきている
ザー
もうほとんど降っていない
白いぼろぼろの、確かに愛情のこもったワンピースと靴を残して
キラキラ
太陽が輝き始めた
もう何も残っていない、光を殺した雲も、笑顔を殺した雨も、確かにそこにいた少女も。
雨が上がってみんな笑顔だ。