第六話:森の守護神戦
森の中を進むエリオスとコトネは、不気味な静けさを感じ取っていた。風も止み、動物の気配すらない。
「エリオス……なんか変だよ」
コトネが不安げに周囲を見渡す。しゅうも低く唸り、警戒を示している。
「何かいるな……しゅう、気をつけろ」
エリオスがそう言った直後、地面が大きく揺れ始めた。次の瞬間、巨大な木の根が土を突き破り、絡み合いながら一体の巨大な生物へと姿を変える。
それは木々と苔でできた巨人のような姿――森の守護神だった。輝くエメラルドグリーンの目でエリオスたちを睨みつけ、低く唸るような音を発する。
「でかい……!こいつが森の守護神か!」
「どうするの、エリオス!?」
コトネが怯えながら叫ぶ中、守護神は木の腕を振り上げ、エリオスたちに襲いかかろうとした。
「やるしかない!コトネ、しゅう、お前たちは下がってろ!」
エリオスは右手の紋章に力を込める。
「ネクロス、力を貸せ!」
その瞬間、黒い霧がエリオスの手元から広がった。しかし、いつもと違う――霧の中からネクロスの姿がぼんやりと現れ、彼の声が頭の中に響く。
「……お前に教えておこう。私の力を正しく使いこなせば、どんな敵も倒せる。だが――名前を呼べ。その名は、力そのもの」
「名前を呼べ……?」
「そうだ。私の技にはすべて名がある。それを呼び、使いこなせるのは契約者であるお前だけだ」
エリオスは一瞬の静寂の中で理解し、笑みを浮かべた。
「分かった、試してみる!」
守護神の巨大な拳が振り下ろされる。エリオスは霧を凝縮しながら叫ぶ。
「滅影の槍!」
黒い霧が槍の形に変わり、一直線に守護神の胸を貫いた。巨大な体が大きく揺れる。
「効いてる……よし、次だ!」
守護神が再び腕を振り上げるが、エリオスは間髪を入れず次の技を発動する。
「没落の波動!」
黒い霧が衝撃波となり、守護神の腕を弾き飛ばす。その勢いで守護神の体が崩れ、地面に大きな音を立てて倒れた。
戦いが終わると同時に、木々の陰から一人の男が現れた。その男は金髪で端正な顔立ちをしており、全身を覆う白銀の鎧が陽光を受けて輝いている。
「お前……その力、ただ者ではないな」
エリオスはその言葉に振り返り、警戒の目を向けた。
「誰だ?」
「私はリュカス。リストリア王国騎士団第一団長だ」
リュカスは堂々とした態度でエリオスに歩み寄り、守護神の倒れた姿に視線を移した。
「たった二撃で森の守護神を倒すとは……その力、王国のために使う気はないか?」
「王国のため……?」
リュカスの申し出にエリオスは驚きつつも返事をしようとする。しかしその瞬間、彼の中にネクロスの声が響いた。
「愚かな契約者よ、そんな者の甘言に耳を貸すな」
「ネクロス……何を言ってる?」
「お前は私の力を持つ者だ。この力は誰かのために使うものではない。拒絶しろ……さもなくば、お前の命を奪う」
ネクロスの声が凍るように冷たく、エリオスは苦しげに頭を抱えた。
「おい、どうした!」
リュカスが驚いて近づこうとするが、エリオスは震える手でそれを制した。
「……悪いが、俺は誰かに仕えるつもりはない」
「そうか……だが、その力を持つ以上、いずれ王国が黙っていることはないだろう。その覚悟はしておけ」
リュカスはそう言い残し、森の奥へと去っていった。エリオスは肩で息をしながら、右手の紋章を見つめる。
「エリオス、大丈夫?」
コトネが心配そうに駆け寄る。エリオスは曖昧に頷きながら答えた。
「ああ……けど、少し疲れただけだ」
「でもさっきの人、すごそうだったね。王国の第一団長……」
コトネの言葉に、エリオスは表情を曇らせた。
「すごそうなのは分かる。でも……俺の力は、俺自身のものだ。誰かのために使うのか、それとも……」
彼は言葉を飲み込み、右手を握りしめた。その瞳にはネクロスの冷たい言葉が重くのしかかっていた。
ネクロスから教えてもらった技
滅影の槍
黒い霧を鋭い槍状に形作り、敵を貫く攻撃。直線的だが威力が高い
没落の波動
ネクロスの力を解放し、衝撃波のように黒い霧を広げる。周囲の敵を一掃する技




