第三十八話:プラチナランクの証
プラチナランク冒険者として正式に認められた翌朝、エリオスたちはギルドの大広間にいた。新たなランクの証として渡された銀と青のバッジが、彼らの胸で輝いている。
「これがプラチナランクの証か……なんだか少し重みを感じるな」
エリオスがバッジを手に取りながら呟くと、しゅうが横からひょいと覗き込んできた。
「でもかっこいいよね!これ、私たちの実力がちゃんと認められたってことだし!」
彼女は誇らしげに自分のバッジを掲げる。
「確かにね。でも、その分責任も重くなるんだよ」
コトネが冷静に言葉を添えながら、掲示板に目を向ける。
ギルド掲示板の前で
ギルドの掲示板には、いつもの依頼に加えて、プラチナランク以上しか受けられない特別な任務が掲示されていた。
「これ、すごい依頼ばかりだね……魔物の討伐はもちろん、王国からの公式依頼もある」
コトネが新たな掲示板を見上げながら、しみじみと感想を述べる。
「でも、プラチナランクってこれだけじゃないんでしょ?王国全土で影響力があるって聞いたけど」
しゅうが興味津々に横から質問すると、ギルドの職員が微笑みながら答えた。
「その通りです。プラチナランク冒険者は、国王直属の任務を請け負うこともありますし、ギルド全体の模範となるべき存在です」
「模範、ね……」
エリオスは真剣な表情で言葉を反芻しながら、新たな責任の重さを実感していた。
その横で、ポルフィが腕を組み、興味なさそうに眺めていたが、ふと口を開いた。
「ふむ、なるほどの。これからお主たちは王国中で注目される存在になるわけじゃな。少しは格好をつけねばならぬな」
「ポルフィ、なんでいつもそうやって軽く言うの?」
しゅうが少し不満そうに問いかけると、ポルフィは肩をすくめて答える。
「わらわから見れば、どれも子供の遊びのようなものじゃ。それに、お主らはこの程度で満足するほど小さな器ではなかろう?」
「言うねぇ。じゃあ、ポルフィはどう思ってるの?」
しゅうが少し挑発的な目で見つめると、ポルフィは意味ありげな笑みを浮かべた。
「わらわはお主たちがどこまで行けるか、それを見届けるのが楽しみでならん」
そんな会話が繰り広げられる中、コトネがふとある依頼に目を留めた。
「これ、どうかな?近隣の村を襲う魔物の調査依頼……あまり大きな規模ではないけど、これなら今の私たちでも手をつけやすいと思う」
「プラチナランクになって、いきなり大きな任務に飛びつくより、堅実に進めるのが良さそうだね」
エリオスが同意すると、しゅうが少し不満げに唇を尖らせた。
「え~、どうせならもっと派手な依頼にしようよ!これなんてどう?」
しゅうが指さしたのは、巨大なドラゴンの討伐依頼だった。
「いきなりドラゴン討伐は無謀だよ……」
コトネが呆れた顔を見せると、ポルフィがまた口を挟む。
「まあまあ、どちらも良い案じゃな。わらわとしては、地道に進めるのも一興と思うぞ」
「じゃあ、この村の調査依頼に決めよう」
エリオスがまとめると、しゅうも渋々頷いた。
その日の夕方、エリオスたちは「月の宿」に戻り、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしていた。
ポルフィが厨房で何やら魔法を使って料理を作っており、テーブルには豪華な料理が並べられていた。
「すごい……これ、全部ポルフィが作ったの?」
コトネが驚きの声を上げると、ポルフィは得意げに頷いた。
「わらわは見た目に反して料理も得意なのじゃよ。さあ、存分に味わうがよい」
「いただきまーす!」
しゅうが嬉しそうにスプーンを持ち上げ、大皿のシチューをすくった。
「これ、すっごく美味しい!ポルフィって本当に何でもできるんだね」
しゅうが目を輝かせると、ポルフィは軽く笑った。
「当然じゃ。魔王たる者、料理くらいできて当たり前じゃろう」
その言葉にエリオスが少し怪訝な顔をして口を挟んだ。
「魔王……?」
「あ、いやいや!料理の『王』という意味じゃよ!」
ポルフィが慌てて言い直すと、しゅうとコトネがくすくすと笑い出した。
夕食を終えた後、エリオスたちは暖炉のそばに集まり、それぞれが考えを語り合った。
「プラチナランクになったことで、やるべきことが増えたね」
コトネが遠くを見るような目で言うと、エリオスが頷いた。
「でも、それは俺たちが力をつけた証だよ。責任を持って、次の冒険に挑もう」
「私たちなら、どんなことでも乗り越えられるよね!」
しゅうが元気よく手を挙げると、ポルフィが微笑みながら茶を注いだ。
「その心意気を忘れるでないぞ。道のりは長いが、お主らならきっと……な」
平穏なひと時の中、エリオスたちは新たな挑戦に向けて決意を新たにした――。
プラチナランク冒険者としての初仕事は、王都近郊に再び姿を現したシンジゲートの一派討伐だった。
「リュカス団長からのお願いだ
「死んでも死ぬなよ!!」
って言っていたけど
随分と初仕事から無茶な仕事だな」
ギルドにて依頼の内容を聞かされたエリオスたちは、一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに引き締まった表情で頷いた。
「またシンジゲートか……。あいつら、まだ何か企んでいるのか?」
エリオスが腕を組み、険しい目で依頼書を見つめる。
「しかも、場所は王都近郊か。もしまたあの時みたいな被害が出たら、被害は大きい……」
コトネが不安げな声を漏らすと、しゅうが拳を握りしめながら前に出た。
「でも、今の私たちなら大丈夫だよ!プラチナランクの力、見せてやろう!」
「その意気だね、しゅう」
エリオスが笑いながら同意すると、ポルフィが興味深そうに頷く。
「ほう、かつての因縁相手と再戦とは面白い。お主たちがどれほど成長したのか、わらわも見てみたいのう」
「成長したってところをしっかり見せてやるさ。行こう!」
エリオスたちはギルドを出発し、王都近郊の現場へと向かった
現場となったのは、王都から北へ数キロ進んだ深い森。木々の間を進むと、薄暗い霧が立ち込め、冷たい空気が肌を刺すようだった。
「この霧……ただの自然現象じゃないね。魔力の痕跡が濃い……」
コトネが杖を構え、霧の中を慎重に進む。
「こんなところで待ち伏せされると厄介だな。全員、気を抜くな!」
エリオスが剣を握りしめ、仲間たちに声をかける。
「わかってるって!でも……」
しゅうが少し声を潜めながら言葉を続けた。
「またあいつらと戦うの、ちょっと怖いね。今度はどんな罠があるんだろう?」
「でも、しゅうはあの時、イフリートの力を使いこなして勝利に導いたじゃない。今のあなたなら、もっとやれるよ」
コトネが励ましの言葉をかけると、しゅうは元気を取り戻したように笑みを浮かべた。
「そうだよね!今回は絶対負けない!」
森の奥に進むと、やがて開けた場所に出た。そこには黒い魔法陣が描かれ、その中心で見覚えのある人物が立っていた。
「ようやく来たか……特務部隊の英雄どもが」
その声は、エリオスたちの記憶に鮮明に刻まれていた。
「お前は……!」
エリオスが剣を構えながら叫ぶ。
ナレーター
現れたのは、倒したはずのシンジゲートの幹部、“シャドウメイジ”だった。だが、彼だけではなかった。左右には二人の新たな幹部が立っている。
「シャドウメイジ!! 倒したはずでは…」
「覚えていてくれて光栄だ。だが、今回は一人ではない
またネクロスなどというでたらめな力に負けてたまるか!!」
シャドウメイジが冷たく笑う。
左に立つのは、漆黒の鎧をまとい巨大な斧を構える男――“ドゥームバインダー”。右には、妖艶な笑みを浮かべる女魔導士――“サンドラ”。
「三人揃えば、我らに敵う者などいない……さあ、始めようか」
ドゥームバインダーが低く唸りながら斧を構えた。
「ふん、せいぜい私たちの退屈を紛らわせてみせなさい」
サンドラが指先をくるくると回しながら笑う。




