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第三十三話:再来カオスガード

エリオスたちがカオスガードの訓練場に集合したのは、まだ朝日が昇りきらない時間だった。訓練場は広大で、剣術用の模擬戦闘エリアや魔法の射撃場、さらには耐久力を鍛えるための障害物コースまで完備されている。


「さてと、今日は私がみっちり鍛えてやるから、覚悟するのじゃ!」

ポルフィが自信たっぷりに言い放つと、しゅうとコトネが少し引き気味に顔を見合わせた。


「本気で大丈夫なのかな……ポルフィの特訓って、なんか普通じゃなさそう」

しゅうが小声で呟くと、コトネが不安そうに頷く。

「うん、なんか妙な魔法とか使われそうで怖い……」


エリオスは二人の会話を横目に、真剣な顔でポルフィに向き合った。

「ポルフィ、俺たちに何を教えるつもりだ?」


ポルフィはにやりと笑い、杖を軽く振ると、訓練場の中央に魔法陣を描いた。

「まずは基礎じゃ。そなたら、強くなるには一つ欠けておるものがある。それを教えてやるのじゃ!」


「欠けているもの?」

エリオスが眉をひそめると、ポルフィは神妙な顔で答えた。

「そうじゃ。そなたらは今まで、戦いの中で自分の力ばかりに頼ってきた。だが、もっと深く魔力と体を一体化させる術を学ばねばならぬ。」


ポルフィは一行に目を閉じるよう指示し、全員を魔法陣の上に座らせた。


「まずは、魔力の流れを体で感じ取ることから始めるぞ。しっかり集中するのじゃ!」

ポルフィが杖を地面に突き刺し、呪文を唱え始めると、魔法陣が淡い光を放ち始めた。


「魔力よ、我が意に応え、そなたらの真なる力を解き放て――サーキュラ・リヴァーレ!」


柔らかな風が吹き抜け、一行の体を包み込むように魔力が流れていく。しゅうは目を閉じたまま、体が温かくなるのを感じた。


「これ、すごい……。何かが体の中で流れてるみたい……」

しゅうが呟くと、コトネも頷く。

「確かに……でも、これってどうすればいいの?」


「まずはその流れを受け入れるのじゃ。そして、心でそれを操る感覚を掴むのじゃ!」

ポルフィの言葉に、エリオスも静かに呼吸を整えながら魔力を感じ取ろうとした。


「よし、魔力の流れを感じられるようになったなら、次はそれを戦いに活かす練習じゃ!」

ポルフィが手を叩くと、訓練場の片隅から木製の魔法ゴーレムが何体も現れた。


「な、なんでゴーレムがいるの!?」

コトネが驚くと、ポルフィは余裕たっぷりに答えた。

「そなたら、ただ魔法を使うだけでは戦えぬ。魔法と体を同時に動かすことで、真の力を発揮できるのじゃ!」


エリオスは剣を構え、前に出た。

「よし、俺がやってみる!」


ポルフィがゴーレムに向けて指を鳴らすと、一体がエリオスに襲いかかった。エリオスは剣を振り、光の刃を放つ。

「ヴァンガード・スラッシュ!」


斬撃がゴーレムに命中するが、傷は浅い。ポルフィがすかさず指摘する。

「ダメじゃ、エリオス!剣の力だけではなく、魔力を剣と一体化させるのじゃ!」


エリオスは頷き、剣に魔力を込めることを意識する。その結果、次の一撃でゴーレムの動きを完全に止めることができた。


「よし、エリオス、少しずつ良くなっておるぞ!」


次はしゅうの番だった。ポルフィがゴーレムを数体送り込むと、しゅうが炎魔法を準備する。

「燃え広がれ、紅蓮の床よ――フレイム・ブレイズ!」


桜色の炎がゴーレムの足元を燃やし、動きを鈍らせる。しかし、完全には止まらない。

「くっ、これじゃ時間稼ぎが精一杯だよ!」


ポルフィが鋭く声をかけた。

「そなた、春華顕現の力をもっと引き出せるはずじゃ。魔法を信じるのじゃ!」


しゅうはポルフィの言葉に応え、再び集中した。すると、体の中から春華顕現の力が湧き上がり、炎がさらに鮮やかに燃え上がる。

「これが……私の本当の力!」


炎の力でゴーレムを次々と撃破したしゅうは、満足げに笑みを浮かべた。


最後はコトネの番だった。ポルフィは彼女にさらに高難度の挑戦を課す。

「コトネ、そなたには味方を守りつつ攻撃もこなしてもらう。防御と攻撃の両立じゃ!」


コトネは少し戸惑いながらも、杖を構えた。

「光よ、闇を裂け――ライト・フラッシュ!」


光の閃光がゴーレムを怯ませる。その隙に、味方を守るための盾を展開する。

「光の盾よ、守護の力を与えよ――ライト・シールド!」


ポルフィが満足げに頷いた。

「うむ、コトネよ。守るだけでなく、攻撃にも力を込めるのじゃ!」


コトネは深呼吸をして詠唱を始める。

「神聖光輝の刃よ、不浄なる者を裁け――レイ・ブレード!」


光の刃が放たれ、ゴーレムを一刀両断した。


全員が特訓を終えると、ポルフィが手を叩いてまとめに入った。

「うむ、そなたら少しはマシになったのう!この調子で精進するのじゃ!」


エリオスは深く頭を下げた。

「ありがとう、ポルフィ。君の特訓で俺たちはもっと強くなれる気がする。」


しゅうとコトネもそれぞれ感謝を述べるが、その間にも二人の間でエリオスへの想いが火花を散らす。


「エリオス、頑張ってたね!私、もっとサポートするよ!」

「ちょっと!私だってエリオスを助けるんだから!」


その様子を見たポルフィは、呆れながらも微笑を浮かべた。

「ほほう、これはこれで良い刺激になるかもしれんな。」


エリオスは飛び起きた

「なんだ夢か…」

「カオスガード懐かしいな…」

「久しぶりにリュカス団長に会いに行こうかな」

――――

王都はいつものように活気に満ちており、石畳の道を馬車が行き交い、露店の商人たちが大声で客を呼び込んでいる。


「やっぱり、王都はどこか安心するね。賑やかで、活気がある。」

コトネが柔らかく笑いながら周囲を見回す。彼女の視線は、路上で売られている小さな花飾りや、香ばしい匂いを漂わせるパン屋の屋台に向けられていた。


「でも、油断は禁物だよ。僕たち、いつも何かに巻き込まれるんだから。」

しゅうは軽くため息をつきながらも、口元に小さな笑みを浮かべた。彼女の視線は、道端で剣術を披露する少年たちに向けられている。


「そうだな。でも、今は少しでも休めるのがありがたい。」

エリオスは剣の柄を握りながら、肩の力を抜いた。彼の視線の先には、遠くに見えるカオスガードの本部の巨大な塔がそびえ立っている。


ポルフィは少し興味深げに王都の景色を見回していた。

「ふむ、さすがは王都。千年の間に文明も進化したようじゃのう。」

彼女はどこか懐かしげに呟きながら、細い指で髪を弄る。


「ポルフィ、王都に来るのは初めてなの?」

しゅうがポルフィの横顔に目を向けると、ポルフィは微笑みながら答えた。


「初めてじゃが、何故か馴染みがある気がする。不思議なものじゃの。」


「まあ、君は王だしね。王都を攻めたことがあったとか?」

しゅうが冗談交じりに言うと、ポルフィはくすりと笑った。


「ふむ、それも面白いが、記憶にはないのう。」


エリオスたちは会話をしながらカオスガードに向かう。白い石造りの荘厳な建物が近づくにつれ、彼らの胸には懐かしさと期待が入り混じった感情が湧いていた。


本部の重厚な扉をくぐると、内部は慌ただしい様子だった。隊員たちが行き交い、訓練場からは剣戟の音が響いている。その光景を見たしゅうが小声で感嘆する。


「相変わらず、すごい熱気だね。」


受付で案内を頼むと、すぐにリュカス団長が姿を現した。相変わらずの堂々とした姿と鋭い金色の瞳。エリオスたちを見つけると、少し口元を緩めて微笑む。


「よく帰ってきたな。お前たちの活躍は報告で聞いている。」


「団長、お久しぶりです。」

エリオスが一歩前に出て敬礼すると、リュカスは軽く手を振って応じた。


「かしこまるな。お前たちにはまだまだこれから期待している。」

「しかし、王都襲撃があった後すぐいなくなって心配していたんだぞ?」

団長に案内されるまま、エリオスたちは執務室へ向かう。部屋は以前訪れた時と同じく、装飾を抑えた実用的な造りだったが、机の上には多数の地図や報告書が広がっていた。


リュカスは椅子に腰掛けると、手元の書類を軽く整理しながら口を開いた。


「さて、お前たちには一つ提案がある。これまでの功績を踏まえ、ギルドのプラチナランク昇格試験を受けてみないか?」


その言葉に、一同が驚きの声を上げる。


「プラチナランク……本当にですか?」

コトネが目を輝かせながら尋ねると、リュカスは真剣な表情で頷いた。


「当然だ。お前たちは既にゴールドランクでの任務を何度も成功させている。特に、シンジゲートや魔王四天王に関する戦いは、どれも並の冒険者には到底成し遂げられないものばかりだ。」


「でも……プラチナランクって、冒険者にとってほぼ頂点ですよね?」

しゅうが少し戸惑った表情で口を挟むと、リュカスは鋭い視線を向けた。


「私もプラチナランクをほとんど見たことがないのでなそれはわからない。だが、お前たちなら十分に達成可能だと私は確信している。もちろん、試験の難易度は高いがな。」


「試験って、どんな内容なんですか?」

エリオスが真剣な表情で尋ねると、リュカスは地図の上に手を置いた。


「具体的な内容はまだ非公開だが、王国近郊の危険地帯での任務となるだろう。お前たちの戦闘力だけでなく、判断力やチームワークも試されることになる。」


「なるほど……簡単じゃなさそうですね。」

エリオスが深く頷くと、しゅうが少しおどけたような口調で言う。


「ねえ、それってポルフィも一緒に受けられるのかな?試験中に魔王が参加したら反則とか言われたりして!」


ポルフィはその言葉にくすりと笑い、優雅に肩をすくめた。

「心配するな、わらわは控えめにするつもりじゃ。」


「控えめにできるんだ……?」

しゅうが疑い深げに言うと、ポルフィは悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「どうじゃろうな。」


コトネはポルフィとしゅうのやり取りを微笑ましく見守りながら、エリオスに向き直る。


「エリオス、どうする?私たち、この試験受けてみる?」


エリオスは一瞬目を閉じて考え込んだが、すぐに目を開け、強い意志を込めた声で答えた。


「挑戦してみよう。俺たちなら乗り越えられるはずだ。それに、プラチナランクになればもっと多くの人を助けられる。」


「うん、そうだね。私も賛成!」

コトネが力強く頷き、しゅうも笑みを浮かべて続ける。


「僕もやるよ!だって、ここまで来たんだからもう怖いものなんてないし!」


「よし、決まりじゃな。」

ポルフィが楽しげに頷くと、リュカスも満足げに微笑む。


「いい返事だ。では、試験の詳細が決まり次第、お前たちに連絡を入れる。それまでにしっかり準備を整えておけ。」


こうして、エリオスたちは新たな挑戦――プラチナランク昇格試験への挑戦を決意した。冒険者としての次のステージに向け、彼らは再び歩み始める。

夢かよ…

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