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第三十二話:圧倒的

エリオスたちは、ギルドで次の依頼を探していた。四天王ガルムとの激戦から数日が経過し、依頼掲示板には、小規模な魔物討伐や物資運搬など、いくつかの簡単な仕事が並んでいた。


しゅうが掲示板の前で腕を組み、依頼内容をじっと眺める。

「平和な依頼ばっかりだね。少し拍子抜けって感じかな?」


コトネが苦笑しながらしゅうに声をかける。

「でも、こういうときにゆっくり依頼をこなすのも悪くないよ。それに、ガルムとの戦いで疲れてたんだから、休むのも大事じゃない?」


「ふーん、まあそうかも。でもエリオスが一緒なら、どんな依頼でもいいかな!」

しゅうが少し頬を赤らめながら振り返ると、コトネがそれに気付き、やんわりと釘を刺すように微笑む。

「そ、そうだよね。エリオスがいれば、どんな状況でも安心だしね!」


エリオスはそんな二人の様子を気にせず、真剣な表情で掲示板を見つめていた。

「簡単な依頼でも、全力でこなすのが冒険者の仕事だ。どれにしようか……これなんか良さそうだな。」

エリオスが指差したのは、街の外れに現れる小規模な魔物の群れを討伐する依頼だった。


「ならこれに決まりね!行こう、しゅう!」

コトネがさっと準備を始めると、しゅうも急いで杖を手に取る。

「もちろん!エリオス、早く行こうよ!」


ポルフィはそんな三人をのんびりと眺めながら、椅子に座ったまま欠伸をする。

「ふむ、そなたらが行くならば、わらわもついて行こうかの。退屈じゃし、ひと暴れするのも悪くない。」


「ポルフィは絶対退屈してただけでしょ?」

しゅうが半眼で突っ込むと、ポルフィは悪びれもせずに微笑んだ。


「そうじゃな、しゅう。その通りじゃ。」


王都から少し離れた森の中を進むエリオスたち。魔物討伐の依頼内容は簡単なものの、周囲には微かな緊張感が漂っていた。


「何だか嫌な感じがするな……」

エリオスが剣の柄を握りしめると、しゅうが周囲を見回しながら頷く。

「私も。普通の魔物討伐なら、こんな雰囲気じゃないよね。」


コトネは杖を握り直しながら呟いた。

「前みたいに強い敵が出てきたらどうする?しゅう、大丈夫?」


「もちろん!今なら春華顕現も使えるし、何が来ても負けないよ!」


しゅうが自信満々に応えると、ポルフィが後ろでクスクスと笑い声を立てた。

「ほほう、それならば頼もしいのう。だが、そなたのその力、使わずに済むと良いのじゃがな。」


その時、突然辺りの気温が急激に下がった。木々には霜が降り、空気は凍てつく冷気に包まれる。


「この感じ……前にも似たようなのを感じたことがある……!」

エリオスが剣を構え、仲間たちに警戒を呼びかける。


「そうだな、似たような状況だろうよ。」

冷たい声が霧の中から響いた。その瞬間、氷のように輝く鎧を纏った男――四天王の一人、フロストグレイヴが姿を現す。


「私こそがあ 四天王うう フロストレイヴう」

「だああああ」


「また四天王か……!」

「あとうるさいな」

エリオスが睨みつける中、フロストグレイヴは冷笑を浮かべながら口を開く。

「ガルムの仇を討ちに来たわけではない。ただ、お前たちがどれほどの力を持つか、確かめたくなっただけだ。」


コトネが一歩前に出て叫ぶ。

「この寒気、あなただけのものじゃない。周囲まで凍りつかせるなんて……!」


「感心してくれて光栄だ。しかし、それでお前たちの命が長らえるわけでもない。」

フロストグレイヴが手を掲げると、彼の周囲に氷の剣が浮かび上がった。


「来い!」

エリオスが突撃しようとするが、ポルフィがその腕を掴んで制止する。


「待て。あの者、わらわが始末する。」

(ここは一芝居打って2人をつぶしておくか…)

ポルフィの瞳が鋭い光を放つと、フロストグレイヴが初めて表情を変えた。


「貴様……その気配、ただの人間ではないな?」


ポルフィは不敵な笑みを浮かべながら歩み寄る。

「ただの人間? お主、姿が変わったぐらいで気が付かぬものか?」


しゅうとコトネが驚いた表情で見守る中、ポルフィはその場に立ち止まり、短く詠唱を唱え始めた。


「――天地の理を歪め、闇の深淵を開け。滅びの槍、ここに!」


彼女の手元に黒く輝く槍が具現化する。

コトネが小さくつぶやく

「あれはネクロスの力に似てる…」

その圧倒的な力を感じ取り、フロストグレイヴは冷たい汗を浮かべた。


「馬鹿な……貴様、一体何者だ!」


ポルフィは槍を振り上げ、余裕たっぷりに答える。

「わらわ? ただの王に過ぎぬ。」


その言葉が響くや否や、槍が氷の鎧を纏ったフロストグレイヴに向かって飛び出した。


「滅びよ。」


槍がフロストグレイヴの胸部を貫いた瞬間、凍てつく空気が一気に消え去り、周囲の霜も音を立てて崩れた。


「ま……さ…か…!」

フロストグレイヴは悔しげな表情を浮かべたまま、氷の欠片となって崩れ落ちた。


「たった一撃で……!」

しゅうが驚愕の声を上げる。


ポルフィは槍を消しながら振り返り、肩をすくめて微笑んだ。

「ほれ、終わったぞ。お主らが動く必要もなかったな。」


エリオスが困惑した表情で尋ねる。

「君は……王なのか?」


ポルフィは小さく笑いながら答える。

「そうじゃ。だが、今はそなたらの仲間に過ぎぬよ。」


コトネとしゅうは顔を見合わせながら、同時に呟く。

「これから、どうなるんだろう……?」


ポルフィの提案により、一行は王都に戻る途中の小さな村に立ち寄ることになった。その村には、古びたが温かみのある宿屋「芸戸ゲイトの宿」があった。


「なんだか懐かしい感じの場所だね」

コトネが宿の扉を押し開けると、木の温もりが溢れる空間と共に、香ばしい匂いが出迎えてくれた。


宿屋の主人がカウンターの奥から顔を出し、にこやかに挨拶をする。

「ようこそ、『芸戸の宿』へ。今日は特製のシチューが自慢ですよ」


「シチューか~!寒い夜にはぴったりだね!」

しゅうが目を輝かせて席に着くと、エリオスとコトネもその隣に腰を下ろした。ポルフィは、少し興味深げに周囲を見回しながら、窓際の席を選んだ。


「特製シチューって、どんな味なんだろう?」

コトネが少しだけ浮足立った様子で呟くと、エリオスが静かに微笑む。

「楽しみだな。この村の料理は評判がいいらしいからな。」


「へえ、エリオス、そんなことまで知ってるんだ!」

しゅうが嬉しそうに身を乗り出すと、コトネが軽く咳払いをして割り込む。

「エリオス、そういうことはもっと早く教えてくれたらいいのに。」


二人の会話を聞きながら、ポルフィは面白そうに口元を隠して笑っていた。

「ほほう、二人とも実に分かりやすいのう。エリオスも苦労するじゃろ?」


「いや……そんなことは……」

エリオスが困惑しながら返事をする間に、宿屋の主人がシチューとパンを運んできた。


テーブルには湯気の立つシチューの器が並べられた。濃厚なクリームの中に、野菜と柔らかな肉がたっぷりと詰まっている。


「わあ、すごくいい匂い!」

コトネが小さなスプーンを手に取り、一口運ぶ。途端に彼女の顔が明るくなった。

「美味しい!お肉が口の中でとろける!」


しゅうも負けじとシチューをすくい上げ、大きく口に運ぶ。

「ほんとだ!これ、何か特別なスパイス使ってるのかな?クセになる味だね!」


「スパイスかどうかまでは分からないけど……確かに美味しいな。」

エリオスが静かに感想を述べると、ポルフィは小さく頷きながらパンをシチューに浸していた。


「うむ、これは確かに良い味じゃな。素朴でありながら、どこか懐かしさを感じるのう。」


食事が進む中、しゅうがエリオスに視線を向けながら口を開いた。

「ねえ、エリオス。こういう穏やかな時間、好き?」


エリオスは少し驚いた顔をしながらも、微笑んで答える。

「ああ、こうしてみんなと一緒に食事ができるのは嬉しいよ。こういう瞬間があるから、また頑張ろうと思えるんだ。」


その言葉に、コトネがそっと目を伏せながら笑みを浮かべる。

「そうだよね……私も、こうしてエリオスと一緒にいられるだけで幸せだよ。」


しゅうはその言葉に軽く反応しながらも、笑顔を保ってエリオスの隣に寄った。

「ふふ、それなら私も同じ!エリオスといると、どんな依頼でも楽しくなるんだよね!」


その二人の様子を見たポルフィは、シチューを口に運びながら小声で呟いた。

「ふむ……やはりわらわの想像通りじゃ。面白い三角関係が見えてきたのう。」


食事を終えた一行は、心も体も満たされた様子で宿のロビーに集まっていた。宿屋の主人がコーヒーとハーブティーを差し出し、彼らの会話はさらに和やかになった。


「こういう日常がずっと続けばいいのにね……」

コトネがふと呟くと、しゅうが微笑んで答える。

「そうだね。でも、私たちがいるからこそ、こういう平和を守れるんじゃないかな。」


エリオスは二人の言葉を静かに聞きながら、心の中で決意を新たにした。

「どんな敵が現れようとも、俺たちはこの平和を守るために戦う。みんなが安心して暮らせるように……」

魔王強いな

ヒーローものみたいなこと言うなよ…

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