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第二十七話:得た力

「しゅう、大丈夫!?無理しないで!」

コトネが心配そうに声をかけるが、しゅうは視線を逸らしたままうつむく。


「でも……僕がやらなきゃ……このままじゃ……」


その時、しゅうの耳元に低い声が響いた。


「力が欲しいか?」


「……え?」


しゅうは驚いて周囲を見回したが、誰もいない。その声は、彼の意識の奥底から直接響いてくるようだった。


「お前には秘めたる可能性がある。だが、それを引き出すには代償が必要だ……」


「代償……?お前は誰だ?」


「名はまだいらない。ただ、その身に流れる熱き血で契約せよ。そうすれば、お前の炎は新たな力を得るだろう……」


声に従うかどうか迷っている間にも、戦況は悪化していく。エンバードレイクが再び咆哮し、炎の嵐を吹き荒れさせた。


「しゅう!早く動いて!」

コトネが叫ぶが、しゅうの目は一瞬虚ろになる。


「決めるのだ。契約を交わせば、お前は炎の主となる――」


しゅうは決意を込めてうなずいた。


「……やる。僕がこの状況を変える!」


声に導かれるまま、しゅうは杖を握る手を自らの歯で噛み、血を滴らせた。赤い血が杖の表面を伝うと、それが魔法陣となって桜色に輝き出す。


「契約完了。お前に力を授けよう――」


しゅうの口から自然と言葉が溢れ出た。


「イフリート……!」


瞬間、杖から桜色の火柱が立ち昇り、戦場を包む熱気が増幅した。その中から現れたのは、全身を炎で覆われた人型の精霊だった。


「我が名はイフリート。この血の契約により、我が炎はお前と共にある」


イフリートの威厳ある声が響き渡り、フレイザーは驚きと困惑の表情を浮かべる。


「何……!?その精霊は、どうしてお前のような小僧が……!」


しゅうは震える手で杖を握り直し、イフリートの力を感じ取る。


「これが……精霊の力……。僕はこの力で、戦う!」


イフリートはしゅうの命令に応じ、エンバードレイクに向けて攻撃を開始した。


「イフリート、奴の炎を飲み込んで!」


イフリートが両腕を広げると、エンバードレイクが放つ火球を次々と吸収し、自らの力へと変えていく。そのたびにイフリートの炎は強大になり、桜色の輝きがさらに増していった。


「今だ、反撃だ!」


しゅうが詠唱を始める。


「空に燃え立つ炎の星々よ、敵を焼き払い、大地に痕を刻め。我が命を灯火とし、紅蓮の雨となりて降り注げ――インフェルノ・レイン!」


広範囲に降り注ぐ火の雨がエンバードレイクを貫き、フレイザーが膝をつく。


戦場に立つしゅうの体は、限界に近づいていた。エンバードレイクの猛攻により、空気が焼けるような熱が全身を覆い、動くたびに苦しみが襲ってくる。


「くそっ……このままじゃ時間が足りない…、この状況を覆せない……!」


エリオスが剣を構えながら、しゅうの方に叫ぶ。

「しゅう、下がれ!無理をするな!」


コトネもすぐに援護に入ろうとするが、しゅうは拳を握りしめ、動きを止めた。


「下がるわけにはいかない……でも、どうすれば……?」


その時、しゅうの頭の中に囁くような声が響いた。


「お前の力はまだ未完成だ。だが、方法はある。エリオスの力を奪え――血を飲め。」


「血を……飲む……?」


突然の提案にしゅうは目を見開いたが、同時に心臓が高鳴るのを感じた。イフリートとの契約以降、自分の中に眠る何かが目覚め始めている。


「我をを呼び出すだけではない。血を媒介にして、エリオスの力を受け取るのだ。それが、お前の残されたもう一つの可能性だ。」


しゅうの体が熱くなる。手の中に杖を握りしめながら、顔を上げた。


「力を奪う……それが、僕の役割……?」


エリオスが叫ぶ声が聞こえる。

「しゅう、何か策があるなら教えろ!」


しゅうはエリオスに向き直り、ためらいがちに言葉を発した。

「エリオス……君の力を借りたい。いや……正確には……君の血を……」


「……血だと?」

エリオスは驚き、しばらく呆然としたが、すぐに理解する。


「……分かった。俺が君に力を貸せるなら、何だってする。」


コトネが慌てて二人の間に割って入る。

「待って!血を飲むって、それってどういうこと!?リスクはないの?」


しゅうは顔を赤らめながら、視線を泳がせる。

「う、うん……リスクはあるかもしれないけど……今はそんなこと言ってられない!」


エリオスが苦笑いを浮かべ、首を横に振った。

「俺が覚悟してるんだ。コトネ、心配するな。」


コトネはなおも心配そうだったが、エリオスが一歩前に進むのを見て、しぶしぶ引き下がる。


「さあ、やるんだ。」


しゅうはゆっくりとエリオスに近づき、震える手で彼の首を握った。顔を赤くしながら、小声で囁く。

「ご、ごめんね……少しだけ……だから……」


エリオスも顔を赤らめつつ、視線を逸らす。

「……早くしろ。これ以上、時間はない。」


コトネ(姿が吸血鬼みたいになってる…)


しゅうは深く息を吸い込み、エリオスの首に口を近づけた。歯が皮膚に触れる瞬間、二人とも心臓の鼓動が高鳴る。


エリオスの血を飲み込むと、しゅうの体に異変が起きた。全身に熱が走り、力が溢れ出す。エリオスの持つ「ネクロス」の力が一部、しゅうの中に宿る。


「こ、これが……エリオスの力……!」


しゅうの目が黒く染まり、その瞳の中に漆黒の輝きが宿る。


「しゅう……大丈夫か?」

エリオスが心配そうに声をかけるが、しゅうは頷いて笑みを浮かべた。


「すごい……この力なら、あの精霊に勝てる……!」


しゅうは杖を掲げ、詠唱を始めた。


「永久とこしえの闇よ、炎の星々よ、万象を呑み尽くし、

 敵を焼き払い、大地に大きな傷跡を刻め――虚炎断界ヴァニタスワールド!」


エリオスの「虚無断界」の一部が再現され、黒い霧が杖から立ち昇る。その刃はイフリートの炎と融合し、漆黒と紅蓮の混ざり合った力を生み出した。


「この一撃で決める!イフリート、僕を助けて!」


イフリートが後ろからしゅうの背中を押し、力を込める。


「行け……お前の契約を果たせ!」


しゅうは全力で杖を振り下ろした。黒い刃がエンバードレイクを切り裂き、その身体が崩壊していく。


「ギィィィ……!」


エンバードレイクが最後の咆哮を上げ、消滅する。フレイザーは驚きの表情を浮かべながら、後退した。


「おのれ……その力、一体何者だ……!?」


しゅうは深呼吸をし、力を制御しながら立ち上がる。さっきまであった桜色のオーラが消えている。

エリオスの方を振り返り、少し申し訳なさそうに微笑んだ。


「ありがとう……エリオス。君の力を借りて、勝てたよ。」


エリオスは苦笑しながら、首を押さえた。


コトネも頬を膨らませながら言葉を投げた。

「……次はちゃんと説明してからにしてよね!」


戦闘が終わり、エリオスたちは辛くも勝利を収めた。だが、戦場には緊張感が漂い続けている。しゅうが見せた未知の力に、コトネの表情は曇り、エリオスは腕の傷を軽く押さえながら思案していた。


「……本当にあれで良かったのか?」

エリオスが呟くように言うと、しゅうが俯きながら口を開いた。


「ごめん……エリオス。僕、勝ちたい一心で、無理やり……」


その言葉にエリオスは顔を上げ、しゅうの肩に手を置く。

「いや、君のおかげで助かった。だけど、今後この力を使うなら、ちゃんと話し合おう。俺たちは仲間だ。」


エリオスの言葉に、しゅうはほっとしたように頷いた。だが、そのやり取りを見ていたコトネは、口を尖らせながら二人に割って入る。


「仲間って言うけど、いきなり血を飲むなんて……私たち、そんなに力に頼らなきゃ勝てないの?」


しゅうは顔を赤くしながら反論した。

「仕方ないだろ!あの状況じゃ、それ以外に方法がなかったんだ!」


「だったら、ちゃんと説明してからにしてよ!私だって何かできたかもしれないのに……」


二人のやり取りに、エリオスは苦笑しつつ間に入った。

「落ち着けよ、コトネ。しゅうも苦渋の決断だったんだ。これからは俺たちで力を合わせて、もっと良い方法を探そう。」


コトネは腕を組みながら不満げに目を逸らしたが、最後には小さく頷いた。

「分かったわよ。でも……次は私にも相談してよね!」


しゅうも少し気まずそうに笑いながら答える。

「分かった。……ありがとう、コトネ。」


その時、遠くからフレイザーの冷たい声が響いた。


「……この程度で、私たちを追い詰めたつもりか?」

まじかよ……

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