第二十六話:チカラガホシイカ
戦場では、再びシンジゲートの三幹部同士の衝突が激しくなっていた。
「グラキア、何をやっている!早くその光使いを倒せ!」
フレイザーが怒りを露わにする。
「黙ってなさいよ!あんたもその剣士一人に手間取ってるじゃない!」
グラキアが冷たく言い返す。
「二人とも、ふざけている場合か!このままではリュカスに全員やられるぞ!」
デスバーンが叫びながら立ち上がるが、体力の消耗が激しい。
「お前がもっと役に立てば済む話だろう!」
フレイザーがデスバーンを罵倒する。
その様子を見て、リュカスは剣を構え直した。
「敵が勝手に崩れるとは好都合だ。だが、油断するな!奴らはまだ戦える!」
「はい!」
「ふん、ここからが本番だ!精霊よ、その力を解き放て!」
フレイザーが叫び、巨大な炎の精霊が地面から出現する。その姿は火の竜そのもの――エンバードレイク。
「お前たちの小細工など、この炎の支配の前では無意味だ!」
エンバードレイクが雄叫びを上げ、周囲に炎の津波を放つ。その熱気がエリオスたちを襲い、しゅうは思わず後ずさった。
「くそっ……あの精霊、どうやって止めればいいんだ?」
一方、グラキアも冷笑を浮かべながら杖を掲げる。
「さあ、お前たちに絶望を与えてあげる。凍てつく精霊よ――フロストセラフ!」
冷気と共に、六枚の氷の翼を持つ天使型の精霊が現れる。その周囲には粉雪が舞い、戦場全体を氷結させ始めた。
「凍りつきなさい――そして砕け散れ!」
グラキアが命じると、フロストセラフが冷気の矢を放ち、エリオスたちを射抜こうとする。
デスバーンも不気味な声で呪文を唱え始めた。
「瘴気の精霊よ――全てを蝕む闇となれ!ネクロマスカー、ここに顕現せよ!」
黒い瘴気の塊から無数の腕を持つ巨大な精霊が生まれる。その触手が地面を這い、全ての生命を蝕むように動き回る。
「これがシンジゲートの力だ。お前たちの抵抗は、すべて無駄だ!」
リュカスは剣を振りかざしながら叫んだ。
「全員、気を引き締めろ!精霊を相手にする以上、総力戦だ!」
しかし、しゅうはエンバードレイクの炎を前に、震えが止まらなかった。
「僕の魔法なんて……こんな強大な炎には……通じない……」
彼の言葉に、コトネが振り返り、怒りを込めて叫ぶ。
「しゅう!そんなこと言ってる場合じゃない!あなたの炎がなきゃ、私たちは勝てないのよ!」
エリオスも叫ぶ。
「しゅう、信じろ!お前の炎は負けないはずだ!」
その声を聞いても、しゅうは迷い続けていた。すると――。
「どうした、小僧。もう力尽きたのか?」
フレイザーがあざ笑いながらエンバードレイクを操り、巨大な炎の球を生成する。その球体がしゅうに向かって落ちてきた。
「避けろ!」
エリオスの叫びが届く直前、しゅうの目に炎が反射し、何かが弾けるような感覚が走った。
「負けられない……負けたくない!」
炎球が接近する中、しゅうは杖を握りしめ、全身全霊の力で叫んだ。
「空に燃え立つ炎の星々よ、敵を焼き払い、大地に痕を刻め。我が命を灯火とし、紅蓮の雨となりて降り注げ――インフェルノ・レイン!」
広範囲に降り注ぐ火の雨が、エンバードレイクの炎球を打ち消し、さらにはその身体を包み込んだ。
「なにっ!?あの小僧がこれほどの魔力を持っていたとは……!」
フレイザーが驚愕する。
火の雨はエンバードレイクを炎で貫き、精霊の動きを止めた。しゅうの目には決意の炎が宿り、震えは消えていた。
「僕の炎は負けない……絶対に負けない!」
エリオスとコトネは、しゅうの姿に驚きながらも笑みを浮かべた。
「しゅう……やっと本気を出したな!」
「その調子よ、しゅう!」
リュカス、デスバーンを討つ
一方、リュカスはネクロマスカーの触手を切り裂きながら、デスバーンに迫っていた。
「この精霊の力は厄介だが……俺の剣の前では無力だ!」
リュカスは剣を構え、奥義の詠唱を始める。
「光の剣よ、天を裂き、大地に裁きを刻め――聖光連破!」
剣から放たれた光の柱がネクロマスカーの身体を貫き、精霊を一瞬で消滅させた。デスバーンは叫び声を上げ、膝をつく。
「ぐあああ……!この私が……!」
「これ以上、貴様に好き勝手させるつもりはない!」
リュカスは剣を振り下ろし、デスバーンを完全に沈黙させた。
戦いが佳境に差し掛かる中、しゅうの体は限界を迎えつつあった。エンバードレイクの炎はまだ弱まりきらず、次々と襲いかかる炎の波が彼を後退させる。
「くそっ……僕の魔法じゃ、まだあの精霊には届かないのか……?」
エンバードレイクは、フレイザーの指示でさらに強大な火球を生み出し、戦場全体を覆うほどの熱を放っていた。その威圧感に、しゅうは汗が滲む手で杖を握りしめた。
「しゅう、大丈夫!?無理しないで!」
コトネが心配そうに声をかけるが、しゅうは視線を逸らしたままうつむく。
「でも……僕がやらなきゃ……このままじゃ……」
その時、しゅうの耳元に低い声が響いた。
「力が欲しいか?」




