第二十二話:幻影
前回までのあらすじ
アリサに別れをつげ
訓練の日々を送る一行
王都へ戻ったエリオスたちは、特務部隊での日常に戻っていた。宿舎の中では、それぞれが思い思いに過ごしている。
「ふぁぁ~……訓練もいいけど、ちょっと休みが欲しいなぁ」
しゅうがベッドに倒れ込み、疲れた様子で伸びをする。
「しゅう、そればっかり言ってない?」
コトネが苦笑しながら杖を磨いている。その隣では、エリオスが剣の手入れをしていた。
「でもさ、毎日訓練だとさすがに体が持たないよ~。エリオスも思うでしょ?」
突然話を振られたエリオスは、窓から外を見ながら真剣な表情で答えた。
「俺はもっと訓練が必要だと思ってる。次の戦いで、また同じような敵が出てきたら、俺たちはどうする?」
その言葉に、しゅうは少し不満げに口を尖らせる。
「エリオスってほんと真面目すぎ!もっと気楽にしないと疲れちゃうよ?」
「でも、エリオスのそういうところがいいよね」
コトネが微笑みながらエリオスを見つめる。
「そう?なんか固すぎて、もっと肩の力抜いた方がいいって思うけどなぁ」
しゅうが言い返すと、コトネは意地の悪い笑みを浮かべた。
「それじゃ、しゅうみたいに毎日ダラダラしてろって言いたいの?」
「なによ、ダラダラなんてしてないもん!私はちゃんと頑張ってる!」
二人が軽く言い合いを始めると、エリオスが苦笑しながら仲裁に入る。
「おいおい、二人とも落ち着けよ。これ以上騒ぐと団長に怒られるぞ」
その一言で、しゅうとコトネは慌てて静かになり、互いに顔を見合わせる。
「うん、エリオスが言うなら……許してあげる」
「ちょっと!私の方が正しかったのに!」
そんな調子で賑やかに過ごしていると、宿舎の扉がノックされた。
「エリオス、しゅう、コトネ。団長がお前たちを呼んでいる」
特務部隊本部で新たな指令を受けた。今回の任務は、シンジゲートの幹部「シャドウエクリプス」が潜伏する遺跡の調査と、その力の制圧だった。
王都の特務部隊宿舎にて、エリオスたちはリュカス団長の説明を受けていた。
「この遺跡は、影の力に満ちている。シャドウエクリプスが守るというだけでなく、遺跡そのものが敵だと思え。」
リュカスの険しい表情に、エリオスたちの緊張が高まる。
「分かりました。これまでの戦いよりも手ごわい敵になりそうですね。」
エリオスが真剣な声で答えると、しゅうが軽く肩をすくめた。
「いや~、こんな話聞くたびに思うけど、なんでいつもこんな大変な任務ばっかりなんだろうね。」
「それだけ、私たちが頼りにされてるってことじゃない?」
コトネが微笑むが、その表情はどこか不安を含んでいた。
エリオスが剣を握り直し、二人に言った。
「どんな状況でも俺たちならやれる。準備を整えて出発しよう。」
遺跡へ向かう途中、鬱蒼とした森を進むエリオスたち。木々の隙間から薄い光が差し込み、不気味な雰囲気が漂っている。
「この道、本当に遺跡に繋がってるのかな?」
しゅうが周囲を警戒しながら尋ねる。
「地図によれば間違いないわ。でも……気配が嫌な感じね。」
コトネが杖を握りしめながら答える。
「嫌な感じがするのは分かる。でも、これ以上村を危険に晒すわけにはいかない。」
エリオスが力強く言葉を発すると、しゅうが顔をしかめながら言った。
「分かってるけどさ……正直、怖いよ。こんなところでシャドウエクリプスなんて出てきたら、一発でやられそう。」
「怖いのはみんな同じ。でも、だからこそ力を合わせるんだ。」
エリオスが振り返り、しゅうとコトネを真っ直ぐに見た。
「……エリオスっていつもそうやって前向きだよね。」
コトネがふと呟き、視線を逸らす。しゅうがそれを聞き逃さず、口を尖らせた。
「え、なになに?それ、ちょっと褒めすぎじゃない?」
「べ、別に普通に言っただけよ!」
コトネが慌てて言い返し、二人の間に軽い火花が散る。
エリオスは苦笑しつつも、剣を握り直した。
「ほら、油断してると何か出てくるぞ。」
森を抜けると、巨大な石造りの扉が現れた。扉全体に奇妙な影の模様が絡みついており、黒い霧が漂っている。
「この扉……ただの入口じゃないね。影の魔力で封じられてる。」
しゅうが杖を構えながら言う。
コトネが模様に触れ、眉をひそめた。
「強い魔力を感じる……これ、普通の方法じゃ開けられないわ。」
エリオスは剣を振りかざし、力任せに攻撃を試みたが、剣が影の模様に吸収されるようにして無効化された。
「くそっ、全然効かない……!」
「やっぱりね。力じゃ無理だと思った。」
しゅうがニヤリと笑い、杖を掲げて詠唱を始める。
「燃え広がれ、紅蓮の床よ。炎の罠となり、敵を捉えよ!――フレイム・ブレイズ!」
彼の魔法が扉全体に火の床を広げたが、影の模様が炎を吸い込み、さらに濃くなった。
「なにこれ!?逆に強くなったじゃん!」
「待って。光なら対抗できるかも……!」
コトネが静かに目を閉じ、杖を高く掲げた。
「光の盾よ、守護の力を与えよ!――ライト・シールド!」
光の壁が影の模様を押し返し、わずかに扉が揺れる。その隙に、エリオスが剣を構えた。
「俺が仕留める!」
「行け、エリオス!」
「お願い!」
二人の声を背に受け、エリオスは魔力を剣に込めて突進した。
「ヴァンガード・スラッシュ!」
光を帯びた斬撃が扉の中心を直撃し、影の模様が完全に消滅した。扉が重々しく開き、遺跡内部への道が現れる。
「やったね!さすが、エリオス!」
しゅうが笑顔で声を上げると、コトネが静かに微笑んだ。
「でも、ここからが本番よ。気を抜かないで。」
エリオスたちは頷き、暗闇へと続く通路に足を踏み入れた――。
遺跡の内部は闇が支配していた。壁には無数の奇妙な紋様が彫られ、かすかに黒い光を放っている。天井は高く、どこか閉塞感のある雰囲気を漂わせていた。
「ここ、本当に遺跡なの?何か……生き物みたいな感じがする」
しゅうが周囲を見渡しながら呟く。
「分かる。息をしてるみたいに空気が動いてるわ。」
コトネが慎重に杖を握りしめながら答える。
エリオスは剣を構えながら進む仲間たちを振り返った。
「みんな、気を抜くな。何かが出てきてもおかしくない。」
しゅうが肩をすくめて苦笑する。
「いつも言ってるけど、エリオスのその真剣な顔、ほんとカッコいいよね。ねえ、コトネもそう思うでしょ?」
コトネは一瞬だけ動きを止め、慌ててそっぽを向いた。
「べ、別に……普通よ。何を言ってるの?」
「またまた~。」
しゅうが笑うと、エリオスは苦笑いしながらも周囲に視線を戻した。
通路を進む中、突然壁に彫られた紋様が暗く光り始め、床に黒い霧が溢れ出した。
「これ、何か来る!」
エリオスが剣を構え、周囲を警戒する。
霧の中から現れたのは、黒い鎧を纏った骸骨兵――シャドウ・ナイトたちだった。影のように揺らめく体は物理攻撃を受け流すかのようで、全員が鋭い剣を手にしていた。
「いきなり強そうなの出てきたんだけど!」
しゅうが焦りつつも、杖を構える。
「この影、普通の攻撃じゃ倒せないかも!」
コトネが冷静に分析しながら、すぐに詠唱を始めた。
「光よ、闇を裂け、我が道を照らせ!――ライト・フラッシュ!」
眩い閃光が放たれ、シャドウ・ナイトたちの動きが一瞬鈍る。
「やった、効いてる!光なら通じるわ!」
「なら、僕も援護する!燃え広がれ、紅蓮の床よ。炎の罠となり、敵を捉えよ!――フレイム・ブレイズ!」
しゅうの魔法で床一帯が炎に包まれる。影の魔物たちは炎に包まれながらも、徐々に歩を進めてくる。
「くそっ、しぶといな!」
エリオスが剣を振り上げ、近づいてきたシャドウ・ナイトを一閃した。
「ヴァンガード・スラッシュ!」
魔力を込めた斬撃が直撃し、影の体が裂けて消える。しかし、次々と新たなシャドウ・ナイトが現れる。
「これ、数が多すぎるよ!」
しゅうが必死に火球を放ちながら叫ぶ。
「数で押される前に何とかしないと……私が大きな魔法を使うわ!」
コトネが杖を高く掲げ、大きな声で詠唱を始めた。
「神聖光輝の刃よ、暗黒を斬り裂き、不浄なる者を裁け――レイ・ブレード!」
巨大な光の刃がシャドウ・ナイトたちを薙ぎ払い、一気に数体を消滅させる。
「やるじゃん、コトネ!でも負けないよ!」
しゅうも続けて詠唱を始めた。
「灼熱の球体よ、我が力を乗せ、敵を焼き尽くせ!――ファイア・ボルト!」
中型の火球が飛び出し、シャドウ・ナイトを直撃。火炎で燃え尽きた影の体が霧散する。
残るシャドウ・ナイトたちはさらに猛攻を仕掛けてきた。大きな剣を振りかざし、エリオスを狙って襲いかかる。
「エリオス、危ない!」
コトネが即座に反応し、杖を振る。
「光の盾よ、守護の力を与えよ!――ライト・シールド!」
光の壁がエリオスを覆い、剣撃を防ぎきる。
「助かった、ありがとう!」
「これくらい、当然よ!」
コトネが誇らしげに微笑むと、しゅうが負けじと叫んだ。
「僕だって助けるよ!エリオス、後ろ!燃え広がれ、紅蓮の床よ――フレイム・ブレイズ!」
足元に炎が広がり、エリオスの背後に迫ったシャドウ・ナイトを焼き尽くした。
「しゅうもありがとう!」
「ふふん、でしょ?」
コトネが呆れたようにため息をつきながらも、全員で最後のシャドウ・ナイトを撃破した。
激しい戦闘を終え、遺跡の通路は再び静寂を取り戻した。エリオスは剣を収め、二人に向き直る。
「みんな、大丈夫か?」
「もちろん!全然平気だよ!」
しゅうが笑顔で答えるが、肩で息をしている様子から疲れが見て取れる。
「私は平気。でも、この先がもっと厳しくなるのは確実ね。」
コトネが杖を軽く握り直しながら言った。
エリオスは頷きながら二人を見渡す。
「この調子で行こう。俺たちなら突破できる。」
「エリオス、頼れるんだから……調子に乗らないでよ?」
コトネが少し照れくさそうに呟くと、しゅうが即座に割り込んだ。
「それ僕も言いたい!ほら、エリオスが頼れるのは分かるけど、僕たちだって負けてないよね!」
「分かってる。俺たち全員で、この遺跡を抜けるんだ。」
エリオスの言葉に、二人は頷き、それぞれ前を見据えた。
「行こう。この先に、シャドウエクリプスが待ってる。」
光と影の対決に向けて、エリオスたちは更なる奥深くへと足を進めていった――。
―――――
ナレーター
魔王軍を少しのぞいてみよう
??(1) まだ魔王様はもどってきていないのか!?
??(2) あいつが強すぎるのよ
??(1) このままだとあのなんちゃらシンジゲートに小さい拠点が全部やられてしまうぞ
でもな…四天王のわれら総力を挙げても一人にかなうかどうか…
??(2) 私の強い幹部も送ってるけどすべて返り討ちだわ…
次回:シャドウエクリプスとの決戦が幕を開ける。激しい戦闘と仲間たちの連携が試される時――。




