第十六話:カオスガード
前回までのあらすじ
主人公はネクロスの使用過多により
次使うと魂をネクロスに壊される…
(絶対ミスじゃん…)
遺跡から戻り、ギルドで石板の内容を報告していたエリオスたち。その場に現れたのは、一人の男だった。
重厚な鎧をまとい、鋭い金色の瞳がギルド内を見渡す。彼の胸元には王国の紋章が刻まれており、長身の堂々たる姿は冒険者たちの注目を集めていた。
「……リュカス団長?」
エリオスが驚きの声を漏らす。彼は以前、森の守護神との戦いの際、遠くから戦場を見つめていた姿を思い出していた。
リュカスは静かにエリオスを見つめ、口を開く。
「覚えていたか。あの時、お前たちが森の守護神を打ち倒した姿を見た。強さだけでなく、戦いの中での判断力と仲間との連携……すべてが印象的だった」
コトネが少し戸惑いながら尋ねる。
「あの時、どうして助けてくれなかったんですか?」
リュカスはその言葉に一瞬だけ目を伏せた後、冷静に答えた。
「あの場は、私の関与が許される状況ではなかった。だが、結果的にお前たちは自らの力で守護神を打ち破った。それこそが、今回私がお前たちを訪ねた理由でもある」
しゅうが興味津々な表情で聞く。
「どういうこと?」
リュカスは少しだけ口角を上げ、重々しい声で告げた。
「お前たちに、王国直属の特務部隊“カオスガード”に加わってほしいと思っている」
リュカスの言葉に、ギルド内がざわついた。カオスガード――それは王国の中でも最も危険な任務を担う精鋭部隊として知られていた。
「特務部隊……?」
エリオスが問いかけると、リュカスは頷き、続けた。
「カオスガードは、ギルドや通常の騎士団では対処できない事態に対応するために設立された部隊だ。お前たちが追っているダークエレメンタル・シンジゲートも、その任務の範囲に含まれている」
アリサが少し驚いた表情で口を開く。
「それって、私たちのやってきたことと同じような……?」
「その通りだ。ただし、特務部隊に加わることで、王国の全ての情報網と支援を受けることができる。シンジゲートに対抗するためには、お前たちの力が必要不可欠だと判断した」
しゅうがすぐに声を上げる。
「なんか凄そう!私、賛成!」
だが、エリオスはすぐには答えなかった。
「けど、俺たちはギルドの冒険者だ。このまま自由に動くこともできる。それでも、王国の部隊に加わる意味があるのか?」
リュカスはエリオスを真っ直ぐに見つめ、静かに答えた。
「シンジゲートは、もはや個人やギルドだけで対処できる範囲を超えている。お前たちの力に、王国の後ろ盾が加われば、より迅速かつ効果的に奴らを追い詰めることができるだろう。それでも、最終的に選ぶのはお前たちの意思だ」
リュカスの言葉に、エリオスは仲間たちに目を向けた。
「どうする?これはみんなで決めるべきことだ」
コトネは少し迷いながらも頷いた。
「私は……賛成です。シンジゲートに対抗するためには、大きな力を借りる必要があると思うから」
「私も!絶対にその方が動きやすいはずだよ!」
しゅうが元気よく答え、最後にアリサが意を決して言葉を紡いだ。
「私も賛成です……。王国の力があれば、村を守るための手がかりも増えると思うから」
エリオスは仲間たちの意見を聞き、リュカスに向き直った。
「分かりました。俺たち、特務部隊に加わります。ただし、俺たちの目的――シンジゲートの計画を止めることを最優先とする条件で」
リュカスは満足げに頷いた。
「良いだろう。その条件、受け入れる。今日からお前たちは特務部隊“カオスガード”の一員だ」
リュカスは背を向け、去り際に静かに言葉を残した。
「特務部隊としての初任務は、近日中に伝える。それまでに力を磨いておけ。特にエリオス、お前の“ネクロス”の力をどう扱うか、慎重に考えることだ」
その言葉に、エリオスは決意を込めて頷いた。
「俺たちの新しい戦いが始まるんだな……」
「うん、でも絶対に負けないよ!」
しゅうが元気よく答え、コトネとアリサも力強く頷いた。新たな道を歩み始めた四人。特務部隊での初任務が、次なる試練となる――。
特務部隊「カオスガード」に加入する条件は、王国直属部隊の象徴とも言える試験に合格すること。試験内容は、強力な魔法陣で守られた巨大な石壁を突破することだった。
試験会場の訓練場は、他の候補者たちで賑わっている。しかし、エリオスたちはその場の熱気とは裏腹に、目の前の壁を前にして静かに緊張感を高めていた。
リュカスの重々しい声が響く。
「この壁は、古代の防御魔法で強化されている。安易な攻撃では傷一つ付かないだろう。だが、仲間と力を合わせ、知恵を尽くして突破するのだ」
エリオスは壁に目を向け、剣を握りしめる。
「ただ硬いだけじゃなさそうだな……。みんな、準備はいいか?」
コトネが杖を構えながら頷く。
「もちろん!いつでもいけるよ!」
「絶対突破してみせる!」としゅう。
アリサも水魔法の準備を整えながら静かに決意を固めていた。
エリオスたちはそれぞれの力を使い、壁に攻撃を仕掛ける。
「光よ、闇を裂け、我が道を照らせ!ライト・フラッシュ!」
コトネの光魔法が眩い閃光を放ち、壁に衝撃を与える。しかし、壁の表面が微かに光るだけで、傷一つつかない。
「全然効いてない……!」
次にしゅうが動く。
「灼熱の球体よ、我が力を乗せ、
敵を焼き尽くせ。飛べ、紅蓮の閃光よ!ファイア・ボルト!」
火球が壁を直撃し、爆発音が響き渡る。しかし、壁の表面は炎を弾き返し、黒く焦げることすらなかった。
「硬すぎる!どうなってるの……!?」
エリオスも剣を振り下ろすが、壁の魔法陣が彼の剣を弾き返す。防御が強化された石壁に対し、エリオスたちは次第に追い詰められていった。
その時、エリオスの右手に刻まれた紋章が鈍く光り、頭の中に低い声が響く。
「……苦戦しているようだな、主よ」
「ネクロス……!」
「その壁を守る力は、失われた古代魔法によって作られたものだ。お前の仲間たちの力では、決して破れぬ。だが、滅びの力を使えば、それを超えることは可能だ」
「滅びの力……破滅魔法か?」
「そうだ。我が力を開放し、一つの技をお前に教えよう。ただし、膨大な魔力と集中力を要する。それでもやるか?」
エリオスは一瞬迷った後、仲間たちを振り返った。
「みんな、俺がネクロスの力を使う。俺を守ってくれ!」
「分かった!私たちに任せて!」
コトネとしゅうが防御態勢を取り、アリサは壁の動きを封じる準備に入る。
ネクロスの声が続く。
「良いだろう。我が滅びの力をその身に刻み込め――**虚無断界**を授ける」
エリオスの体を黒い霧が包み込み、魔法陣が右手から放たれる。詠唱の言葉がエリオスの口から自然と紡がれる。
「永久の闇よ、万象を呑み尽くし、滅びし大地に断界を刻め
――無限の刃よ、虚無を裂き、道を切り開け!
虚無断界!」
エリオスが詠唱を終えた瞬間、右手から黒い霧が収束し、一本の巨大な黒い刃が生まれる。その刃は空間そのものを裂くように震え、エリオスの手の中でさらに力を増していく。
「これが……虚無断界の力!」
エリオスはその刃を壁に向けて振り下ろした。
刹那、黒い閃光が壁を包み込み、防御魔法が砕け散る音が響く。壁を覆っていた魔法陣は次々と崩壊し、巨大な石壁そのものが真っ二つに裂けた。
その光景に、周囲は静まり返った。
崩れ落ちた壁を見たリュカスがゆっくりと歩み寄り、エリオスを見つめた。
「見事だ……。滅びの精霊の力をここまで扱えるとは驚きだ。しかし、その力に頼りすぎることが、お前の成長を妨げる危険性もある」
エリオスは肩で息をしながらも、真っ直ぐにリュカスを見返す。
「分かっています。この力は最終手段。俺たちはもっと強くなります」
その言葉にリュカスは満足げに頷き、特務部隊加入を正式に認めた。
「これでお前たちは正式にカオスガードの一員だ。初任務は近日中に伝える。それまでにさらに力を磨け」
試験を突破し、エリオスたちは新たな道への一歩を踏み出すこととなった。
「エリオス、すごかったね!あんな魔法、初めて見たよ!」
しゅうが興奮気味に言うと、アリサも笑顔で続ける。
「本当に……あの魔法、驚きだった。でも、使うのは無理しないでね」
「うん、分かってるよ。俺たちの力で突破できるように、もっと鍛えるつもりだ」
コトネも安心したように微笑みながら言葉を添えた。
「これからが本番だね。特務部隊での活動……一緒に頑張ろう!」
エリオスは仲間たちに頷き、新たな冒険へと思いを馳せた――。




