第十話:ソードスキル
ぜ ん か い ま で の あ ら す じ
前回(作者)のミスによりにより野宿してしまう一行
もう野宿は嫌だ!
しっかり稼いでくれ!!
「……銀貨があと3枚しかない」
エリオスは財布の中身を確認し、険しい顔をして呟いた。月の宿の一泊分は払えたものの、今日の食費を考えると次の依頼を早急にこなさなければならない。
「また野宿になるかも……でも、簡単な依頼ばかりじゃ稼げないし」
コトネが不安げに言うと、しゅうが無理に明るく振る舞う。
「大丈夫だよ!また頑張ればいいんだから!」
エリオスは深いため息をつきながら、掲示板に目を向けた。
薬草採集(銀貨3枚)
森ネズミ討伐(銀貨5枚)
獣人の遺跡調査(銀貨15枚)
「遺跡調査は魅力的だけど、今の俺たちじゃ準備が足りない。まずは薬草採集で資金を増やそう」
エリオスは冷静に判断し、再び薬草採集の依頼を選んだ。
「そういえば、コトネ。その杖、いつの間に買ったんだ?」
エリオスがふと気づいて尋ねると、コトネは少し照れくさそうに笑った。
「実はね……町に着いた時に、露店で見つけたの。ずっとエリオスやしゅうの役に立ちたかったから、貯めてたお金で買ったの」
杖は木製で、光属性の魔法と相性が良い魔力石が埋め込まれている。
「よく考えたな。それがあるなら、俺たちの戦力は確実に上がる」
エリオスの言葉にコトネは嬉しそうに頷いた。
森に到着した三人は薬草を探し始めた。木漏れ日の中、青い葉を持つ薬草を順調に集める。
「今日は簡単そうだね!」
コトネが嬉しそうに薬草を摘み取るが、しゅうは周囲を見回しながら首をかしげた。
「でも、なんか気配が変だよ。森の空気が重いっていうか……」
その言葉通り、遠くの茂みから低い唸り声が聞こえてきた。次の瞬間、黒い煙のようなものをまとった巨大な猪が姿を現した。
「これ……普通の魔物じゃない!」
エリオスが剣を抜き、前に出る。
「また呪いか……!」
黒い猪は地を蹴り、一気にエリオスに向かって突進してくる。
「エリオス、危ない!」
コトネは杖を掲げ、詠唱を始めた。
「光よ、闇を裂け、我が道を照らせ!ライト・フラッシュ!」
強烈な閃光が猪の目を眩ませた。その隙をつき、エリオスが猪の脇腹に剣を突き刺す。
「くっ……硬い!」
猪は咆哮を上げ、さらに暴れ始めた。
「もう少し時間を稼いで!中級魔法を使う!」
コトネは冷静に詠唱を続ける。
「神聖光輝の刃よ、暗黒を斬り裂き、不浄なる者を裁け!レイ・ブレード!」
杖の先から放たれた光の刃が猪の胴体を貫く。黒い煙をまとっていた体が弾けるように散り、猪は地面に倒れた。
ギルド(ブライトホライゾン)に戻った三人は、薬草を納品し、銀貨3枚を手にした。しかし、その表情は晴れない。
「また……足りないね」
コトネが呟くと、エリオスは無言で財布を見つめた。宿代と食費を考えれば、銀貨3枚では到底賄えない。
「もっと効率の良い仕事をこなさないと、このままじゃジリ貧だ」
「……でも、大変な仕事は今の私たちじゃ難しいよね?」
しゅうが不安げに言うと、エリオスは剣を握りしめて答えた。
「それでも挑むしかない。俺たちには時間がないんだ」
その目には、次の依頼への覚悟と決意が宿っていた。
銀貨3枚を手にしたエリオスたちは、再びギルドの掲示板の前に立っていた。しかし、彼らが得られる報酬は少なく、状況は依然として厳しい。
「また薬草採集じゃ、宿代も払えないね……」
コトネが不安げに呟くと、エリオスは腕を組んで掲示板を睨みつけた。
「もっと効率よく稼げる方法を探さないと、この先が厳しいな……」
その時、ギルドの一角から、剣術の訓練を行っている冒険者たちの声が聞こえてきた。
エリオスはその声に引き寄せられるように訓練場へ向かった。そこでは、一人の中年の剣士が若い冒険者たちに剣技を教えていた。
「その剣筋じゃ甘い!もっと身体全体を使え!」
剣士は厳しい口調で指導しながらも、的確なアドバイスを与えている。
「エリオス、何か気になるの?」
しゅうが首をかしげると、エリオスは訓練をじっと見つめながら答えた。
「この世界には魔法だけじゃなく、剣にマナを込めて放つ技があると聞いていた。……たぶん、これがそれだ」
剣士が一息ついたところで、エリオスは思い切って声をかけた。
「すみません、その技術を学ぶことはできますか?」
剣士はエリオスを見上げ、腕を組んだ。
「剣技に興味があるのか。だが、ただ剣を振るだけじゃダメだぞ。ソードスキルはマナを扱う技だ。基礎から学ばないと身につかない」
「分かっています。どうしても力をつけたいんです」
エリオスの真剣な眼差しを見て、剣士は小さく笑った。
「面白い青年だな……よし、特別に教えてやろう。まずは初級スキルからだ。剣を持って、俺の動きを真似しろ!」
エリオスは剣士に教わりながら、初級のソードスキルを習得するための基礎訓練を始めた。
「いいか、ソードスキルは剣の動きにマナを込めることで発動する。普通に振るだけじゃ何も起きないぞ」
剣士は、実演として剣を構え、力強い斬撃を繰り出した。その瞬間、剣が淡い光を放ち、空気を切り裂く音が響いた。
「これはヴァンガード・スラッシュ。初級のソードスキルだが、しっかりマナを込めれば威力は十分だ」
「すごい……ただ剣を振るだけじゃこんなことできないよ」
コトネが感嘆の声を上げる中、エリオスは剣を構えて深呼吸をした。
「マナを剣に……集中させる……」
エリオスは剣を振り下ろしたが、ただ風を切る音がしただけだった。
「力みすぎだ!マナはお前の中にある力を剣へと流し込むんだ。肩の力を抜け!」
剣士のアドバイスを受け、エリオスはもう一度剣を握り直す。静かに集中し、剣にマナを送り込む感覚をつかもうとする。
「ヴァンガード・スラッシュ!」
次の一振りで、剣がわずかに光を帯びた。その斬撃は訓練用の木柱を僅かに傷つけた。
「やった……!」
「上出来だ!だが、まだまだ基礎の基礎だ。これから何度も練習して、完全に身につけるんだな」
エリオスの訓練がひと段落した夕方、三人はギルドの掲示板の前に再び立っていた。
「盗賊の見張り地点調査か……銀貨10枚なら、今の俺たちにとっては悪くない報酬だな」
エリオスが掲示板の依頼を外しながら言う。盗賊相手となるとモンスター討伐とは異なる危険があるが、報酬の魅力には抗えない。
「大丈夫かな……盗賊って、モンスターよりずっと厄介そう」
コトネが不安そうに呟くが、しゅうがすぐに元気な声で返す。
「でも、銀貨10枚だよ?成功すれば宿代も食費も心配いらなくなるし!」
「確かに。それに、エリオスも新しい剣技を覚えたばかりだから、戦力は上がってるはず」
エリオスは剣を握り直し、二人を見つめた。
「今回は俺が前に出る。お前たちは距離を取って支援に専念してくれ。特にコトネ、魔法の使い過ぎで倒れるなよ」
「分かった。ちゃんと気をつけるね」
三人は準備を整え、盗賊の見張り地点とされる森の奥へと向かった。
森に足を踏み入れると、空気は次第に重くなり、太陽の光もほとんど届かない薄暗い場所にたどり着いた。
「見張り地点って言ってたけど、どこだろう?」
しゅうが周囲を見渡しながら言う。エリオスは地面の足跡や周囲の異変を注意深く観察していた。
「この辺りに人の通った跡がある。葉が踏みつぶされて道ができてる……向こうに行けば何か見つかるかもしれない」
「盗賊に気づかれたらどうするの?向こうにはたくさんいるかもしれないよ」
コトネの不安げな声に、エリオスは静かに答えた。
「気づかれたら、その時は戦うだけだ。ただ、戦う前に情報を持ち帰るのが最優先だ」
しばらく進むと、小さな開けた空間に出た。そこには木製の見張り台が立っており、一人の男が上から辺りを監視している。近くには粗末な小屋が建てられ、物資が積まれていた。
「これが見張り地点か……思ったより簡素だな」
エリオスが小声で呟きながら観察する。
「盗賊ってもっと大人数かと思ってたけど、意外と手薄なんだね」
しゅうが安心したように言うが、エリオスは警戒を緩めない。
「油断するな。ここにいるのは見張り役だ。仲間はもっと奥にいる可能性が高い」
「じゃあ、どうするの?ここを調べて帰る?」
コトネが尋ねると、エリオスは少し考えた後に頷いた。
「まずは人数と位置を確認する。それをギルドに報告して、次の行動を決めるのが賢明だ」
三人が静かに近づいて状況を確認していると、突然、見張り台の男が彼らに気づいた。
「おい!誰だ!ここで何をしている!」
男が大声を上げながら見張り台から飛び降り、剣を抜いて構える。その声を聞いて、小屋からさらに二人の男が飛び出してきた。
「隠れてた連中が出てきたぞ……三対三か」
エリオスは剣を構え、冷静に状況を見極めた。
「コトネ、支援を頼む。しゅう、後ろから攻撃して牽制しろ!」
「分かった!」
一人目の男がエリオスに突っ込んでくる。エリオスは剣を振り上げ、集中した声で呟いた。
「ヴァンガード・スラッシュ!」
剣が淡く光を放ち、力強い一撃が相手の剣を弾き飛ばした。男はバランスを崩し、その隙を突いてエリオスがさらに剣を振り下ろす。
「くっ……こいつ、ただの冒険者じゃねぇ!」
倒れた男を見て、他の二人も一瞬ひるむが、すぐに態勢を立て直してエリオスに向かってきた。
「光よ、闇を裂け、我が道を照らせ!ライト・フラッシュ!」
コトネが光魔法で敵を目眩まししている間、しゅうは炎の魔法を準備していた。
「こいつら、数だけは多いな……」
しゅうは手を掲げ、指先に小さな炎を灯すと、詠唱を始めた。
「炎よ、我が手を弾丸となし、目標を射抜け!ブレイズ・ショット!」
小さな火球が盗賊の一人に向かい、腕を直撃する。
「ぐっ……!」
男が武器を落としたのを見て、しゅうは笑みを浮かべた。
「どう?私も少しは役に立ったでしょ!」
「調子に乗るな、しゅう!まだ終わってないぞ!」
エリオスが警戒を呼びかける間もなく、もう一人の盗賊が飛びかかる。
「来るならこれで止めるよ!燃え広がれ、紅蓮の床よ。フレイム・ブレイズ!」
しゅうの足元に炎が広がり、相手の進行を妨げる。盗賊は熱さにたじろぎ、一歩退く。
「この隙に行け、エリオス!」
「助かった!」
エリオスは剣を構え直し、前に突進した。
エリオスの剣が最後の盗賊の武器を叩き落とし、敵は膝をついて力なく地面に倒れ込んだ。
「……終わったか?」
エリオスが剣を構えたまま確認すると、コトネが杖を抱えながら駆け寄る。
「うん!でも、大丈夫?怪我してない?」
「大したことはない。お前たちこそ、無事か?」
「私は平気!でも……しゅうが、少し疲れてるみたい」
コトネが振り返ると、しゅうが肩で息をしながら苦笑を浮かべていた。
「ちょっと張り切りすぎちゃったかな。でも、どう?私の魔法、少しは役に立ったでしょ?」
しゅうは顔を上げ、指先で火花を弾かせてみせる。
「……助かったよ。お前たちがいてくれたおかげだ」
エリオスの言葉に、コトネとしゅうは顔を見合わせ、小さく笑みを交わした。
三人は見張り地点の小屋と倒れた盗賊たちの持ち物を調べ始めた。小屋の中には、粗末な武器や保存食が並んでおり、明らかに物資を略奪していた形跡があった。
「これ……誰かから奪ったものだね。ほら、この袋には商人ギルドの紋章がある」
コトネが袋を手に取り、見せる。エリオスはそれを受け取りながら呟いた。
「ここはただの中継地点だ。本拠地はもっと奥にあるはずだな」
「じゃあ、このまま奥に進むの?」
しゅうが不安げに尋ねるが、エリオスは首を振った。
「いや、一度ギルドに戻って情報を報告する。今の俺たちでは、本拠地を襲撃するのは無理だ」
「それもそうだね……ここまで来れたのが十分すごいんだから!」
しゅうがほっとした表情を浮かべ、荷物をまとめ始める。
その時、エリオスが盗賊の持ち物の中から、一枚の紙切れを見つけた。
「これは……?」
紙には、簡単な地図が描かれており、さらに奥地にある洞窟の場所が示されているようだった。
「この場所……多分、盗賊の本拠地だね」
コトネが紙を覗き込むと、エリオスはしばらく考えた後、地図をポケットにしまった。
「これをギルドに持ち帰れば、次の手掛かりになるはずだ。俺たちだけで行くのは危険すぎる」
「うん!ギルドに報告して、次の計画を練ろう!」
三人がギルドに戻ると、受付の女性が微笑みながら迎えた。
「お疲れさまです。盗賊の見張り地点はどうでしたか?」
エリオスは報告書とともに、盗賊たちの持ち物と地図を渡した。女性は内容を確認すると、険しい表情で呟いた。
「盗賊の本拠地がある可能性が高いですね……これを冒険者ギルドの上層部に伝えて、次の対応を考えます」
「俺たちにも連絡をください。もし次に行くとなれば、準備を整えて挑みたい」
エリオスの真剣な言葉に、女性は頷きながら銀貨10枚を手渡した。
「もちろんです。今回の調査、ありがとうございました。この銀貨は報酬です。どうぞ、お受け取りください」
銀貨10枚を手にした三人は、再び「月の宿」へと戻った。宿の女主人ルナが迎えると、三人の表情を見て優しい声をかけた。
「随分と疲れているようですね。でも、その顔には少し誇らしさも感じられますよ」
「ええ、今日はかなり頑張りましたから……!」
しゅうが満面の笑みを浮かべながら答える。
「なら、今夜の夕食はサービスしておきますね。しっかりお食べなさい」
三人は夕食を済ませた後、部屋に戻り、久しぶりに安らかな時間を過ごした。
窓の外を見上げると、満月が柔らかい光を放っている。エリオスはその月明かりを眺めながら、そっと剣を握りしめた。
「盗賊の本拠地……この先、もっと厳しい戦いが待っているかもしれないな」
「でも、私たちならきっと乗り越えられるよね!」
コトネが横で微笑み、しゅうも力強く頷く。
「私もまだまだ魔法を磨くし、エリオスも新しい剣技を覚えたばかりだしね!」
「俺たちはチームだ。どんな試練が来ても、一緒に乗り越えるぞ」
エリオスの言葉に、二人は力強く頷いた。
ギルドの名前はブライトホライズンになりました
使った技
ヴァンガード・スラッシュ
効果:シンプルな斬撃にマナを込め、威力を高める。
詠唱不要。
フレイム・ブレイズ
効果:足元に炎の床を作り出し、敵の移動を制限する持続魔法。
詠唱:
「燃え広がれ、紅蓮の床よ。
炎の罠となり、敵を捉えよ!」
ブレイズ・ショット
効果:小さな火球を撃ち出す攻撃魔法。単体向け。
詠唱:「炎よ、我が手を弾丸となし、目標を射抜け!」




