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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第二章サンダー
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第六話 協力

 ジャックは広大な空間を走り出した。スラクスは一歩も動かなかった。


 ジャックはスラクスに向かって左手に持っている銃を放った。スラクスはそれをいとも容易く拳で受け止める。


 ジャックは銃を両方ホルスターに戻し、ナイフだけで戦うことにした。


 スラクスは手から弾丸を落とし、ジャックに向かって飛び、拳を放った。


 ジャックはとんでもない速度で飛んでくる拳をなんとか避けた。当たっていたら死んでいただろう。

 スラクスが拳を放った地面には大穴が空いていた。


「アハハ、とんでもない威力だね」


 ジャックは天井に向かって腰の機械からワイヤーを伸ばし、それを使って空中に大きく舞い上がった。


 ジャックは落下の力を利用し、スラクスの脳天目掛けてナイフを刺した。スラクスは当然のようにその攻撃を避ける。


 ジャックは地面に刺さった二本のナイフを捨て、急いで新たなナイフを取り出した。


 スラクスはジャックに向かって蹴りを放った。ジャックはそれをたった一本のナイフで受け止めようとしたが、ナイフは折れ、スラクスの蹴りはジャックの横腹にあたった。

 ジャックは少し遠くに飛ばされた。


「………あ…あーあ……とっても痛いじゃないか………ナイフ折れちゃったし」

「予備くらい何十個とあるだろ?」

「まぁ………そうだね」


 ジャックは新たなナイフを腕にセットした。先ほどまで付けていたナイフと殆ど同じ見た目だ。


(一蹴りでこの威力……攻撃は防がずに避けないとダメそうだね………)


 ジャックはスラクスに向かってナイフを一本投げた。

 スラクスはそれを簡単に避け、その後ジャックに向かって突進した。


 ジャックはずっと掴んでいた糸を思い切り引っ張った。するとスラクスの足元にあった糸が動き、スラクスの足に纏わりついた。


 しかしスラクスは馬鹿力で糸を引きちぎった。スラクスはまず糸が足に絡んでいたことにすら気づいていない様子だった。


 ジャックはスラクスの体当たりをもろに食らった。ジャックは後ろに大きく吹き飛ばされた。


「………イテテ……流石…プロテクターの中でも実力上位に来るだけあるね……」

 ジャックはゆっくり立ち上がった。

「………ジャックザリッパー……お前、本気を出してないだろ?」


「………………せいかーい☆」


 ジャックは驚きながらも言った。

「やはりな………何故最初から本気で戦わない?」

「本気で戦えば一瞬で終わっちゃうもん。できるだけ長生きさせた方が面白いし」


「……恐ろしい………呪われた子だな……」

「私が呪われてないとでも?多分私が今まで殺した人間すべてに呪われてるよ。安心して」


 ジャックはフードを脱いだ。

「完全な本気は無理だけど、ちょっとだけ本気で戦うことはできるよ」

「………ならそのちょっとの本気で戦え」

「分かった」


 ジャックは目を少しの間閉じた。そして次にジャックが目を開くと、ジャックの目の水色が強くなっていた。


 それと同時にジャックの髪の毛の一部が濃い青色へと変化した。


 空気が揺らぐ。風が吹くわけないこの室内で体に風が吹きつける感覚がする。


「………それでちょっとの本気か……真の本気が見てみたい」

「それは無理だね、師匠からあまりやるなと言われたし、その本気の出し方も忘れたし」

「まぁいい、こちらもまた本気で戦ってやる」


 スラクスはジャックに向かって突進する。


 それをジャックは左に転がって避け、スラクスに向かってS&W M500を放った。


 それをスラクスはギリギリで避け、ジャックに向かって石片を投げる。


 投げられた石片は散弾銃の如くジャックに飛んできた。しかしジャックはそれを全て目視で避けた。


 ジャックは天井に向かってワイヤーを伸ばし、天井に張り付いた。

 スラクスはとんでもない力で飛び、ジャックに向かって拳を放とうとした。


「ふふ、引っかかったね」


 ジャックの腰からは先ほど地面に刺さったはずのナイフが二本飛び出して来た。


 スラクスは空中で体勢を変え、ナイフ二本を避けたが、ジャックはスラクスに向かって水平五連ショットガンを放った。出て来た無数の鉛玉はスラクスの体に当たっていった。


 ジャックは反動によって地面に落ちた。スラクスもまた重力によって地面に落ちた。


 スラクスはバードストライク弾を食らい、体中から血が出ていた。


 ジャックはスラクスに向かって突進するがスラクスはギリギリまで動かない。


 ジャックはナイフを上げた瞬間、スラクスはジャックの腕を左手で掴んだ。



「それ程度か?」



 スラクスはジャックに拳を打ち付けていった。


「あぁ!!!グフッ!!!キャアァ!!!!!」


 ジャックの甲高い悲鳴が聞こえるがスラクスはやめない。


 ジャックはS&W M500を全弾放った。スラクスはジャックを放り投げ、それを避けた。

 ジャックは投げられ、地面に倒れた。


「あ…アハハ……左腕…折れちゃったか………」


 ジャックは立ち上がり、左肩を右手で支えた。ジャックの髪や顔は赤色に染まっていた。


 スラクスは体中から血を流しているが平然と立っていた。


「君、結構強いね……多分パンチを……腹に食らってたら………内臓が破裂してたよ………」

「いや、お前も俺が思っていた以上に強い。ほら、これだけダメージを食らった」


「アハハ……じゃあなんで平然と立ってるのかなぁ」


 ジャックは左肩から出した小さく細いナイフをスラクスに向かって飛ばした。スラクスはそれを指二本で挟み、受け止めた。


「もう殆ど武器が残ってないようだな。今降参すれば命は助けてやる」

「へぇ、降参すると思ってんの?」


 ジャックはスラクスに向かって突進する。スラクスは向かってくるジャックの腹を拳で殴り飛ばした。

 ジャックは飛ばされた後、力なく倒れた。


「なんとも哀れだ。たかが俺程度に殺されるとは……」

 ジャックは起き上がり、殴られた腹を押さえた。


「あれ?……まだ私は………生きてるよ?」

「もう諦めろ。お前はここで死ぬ。一人寂しくな」



「………いつから私が一人だと思っていた?」



 ジャックの目が輝いた。

「……!?」 

 スラクスは驚いた。


「サンダあぁぁぁ!!!!やれえぇぇぇ!!!!!!!!」

 スラクスはサンダーが来るであろう左方向を向いた。しかし最初に来たのはジャックが言ったのとは違った。天井から一匹の猫が降って来た。


「キシャアアアアァァァァァァ!!!!(死ねえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!)」


 リッパーの背中から六発の小型誘導ミサイルが発射された。その内の三発がスラクスにダメージを与えた。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!何だとおおお!!!!!!」


 土煙が晴れるとサンダーが右側の通路から現れ、スラクスに向かって突進した。


「なんで俺の名前がサンダーなのか教えてやる……」


 サンダーはスラクスの頭を殴り飛ばした。


 まるでサンダーの拳は機械のようだ。

 とてつもない剛腕から放たれた拳、それによりスラクスの頭からは豪快に血が噴き出した。



「………俺の放つ拳の威力はトリプルアクションサンダーと同じと言われたからだ」



 サンダーは腰から銃を取り出した。


「俺の生命力を舐めたな、テメェ!」


 サンダーはトリプルアクションサンダーをスラクスに向け、引き金を引いた。


 ドゴン!!!という凄まじい轟音が響いた。銃弾はスラクスの左肩に命中した。スラクスの左肩は弾け飛んだ。

 スラクスは黙った。


「………おら、なんか言ってみろや」

 サンダーはスラクスに近づいた。



「………………………死ね」



 スラクスは近づいてきたサンダーに向かって拳を放った。


 ジャックはそれを見て、右手に持っていたワイヤーを引いた。するとワイヤーはスラクスの首に引っかかり、そのままスラクスは後ろに倒れた。


「死ねえええぇぇぇぇ!!!!!!」


 ジャックはそう叫び、スラクスの頭に向かってナイフを振り落とした。


 ナイフはスラクスの頭を貫通した。スラクスは顔から血を盛大に吹き出し、死んだ。

 スラクスの血がジャックの顔に吹き付けた。


「ニャー!?(やったか!?)」

「バカ!!フラグ建築をするな!!」


 ジャックはスラクスの顔の上で黙っていた。


「ニャー!!(ジャック!大丈夫か!)」

「大丈夫………だといいな………」


 ジャックは血まみれになった顔を袖で拭った。

「こ…こから………抜け出さないと……」

「あぁ、今すぐにそうしたいが出口は何処にあんだ?」


「さっきこの男が……教えてくれた……ここから……左の通路を…通って……次の角を……右だ………」

「ジャック、お前大丈夫か?」

 ジャックの目は虚ろとしていた。


「大丈夫だっ………て…………言って……る……で………しょ……………」


 ジャックは地面にぶっ倒れた。コトンというジャックが地面に頭を打ち付けた音が聞こえる。


「ニャー!!!!!(ジャック!!!!!)」

「ジャック!!!!!」


 サンダーはジャックに近づき、ジャックの脈と呼吸の有無を確認した。


「大丈夫だ。普通に生きてる。ただ疲労から寝ているだけだ………よくこの状況で寝れるな………」

「ニャー………ニャー!(よかった………ってここから早く抜け出さないと!)」

「あぁ、そうだな」


 サンダーはジャックを背中に背負った。

「よし、行くぞ」


 サンダーはジャックを担いだまま出口へと向かった。


 そして出口を開けた瞬間。



「手を挙げろ!!!!!!」



 無数の武装した警官などが出口を塞いでいた。


「………………見せてやるよ、俺も元は最強のスパイ………の仲間だ」

 サンダーはジャックを脇に落とし、警官に向かって突進し、警官の一人の頭をぶん殴った。

 警官の頭は派手に血を吹き出し、吹っ飛んだ。


「あ、あぁ、ああああああぁぁぁぁ!!!!」


 サンダーは次々に警官を殴り飛ばしていく。

 若い者、老いた者、次々と関係なく殴り潰していく。


 サンダーは見える範囲の敵を殆ど排除した。


「よし、ジャック!!リッパー!!行くぞ!!」

 サンダーはジャックを片手で持って施設を出た。


 無数の警官がサンダーに向かって銃を撃つがサンダーは怯まずに走り続けた。

 時刻は午前三時、銃声の音が静かな街に響き渡った。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 サンダーは警察の追尾からなんとか逃げ切り、路地の中にあった一軒の建物に入った。周りの建物より少し大きく、中には人がいるようだった。


「あ、先生じゃないでs………どうしました!?先生!?その傷と少女は!?」

 その建物に入ると中には若い男が一人居た。


「コイツの治療を頼む!!今すぐだ!!!」

「わ、分かりました!おいお前ら!!仕事だ!!」


 サンダーが入った所、そこはジャックのような人間を匿い、治療してくれる政府非公認の隠れたの病院だった。


 サンダーはぞろぞろと出て来た人間達にジャックを預けた。


「ニャー?(コイツらは?お前の事を先生と呼んでるが)」

「俺が育てた…言わば弟子って奴だ。ここに居る奴らは全員俺が育ててやった人間だ。殆どの奴らは終戦後の世界混乱の時に生まれてしまった孤児などだ」

「ニャー(はえー)」


「おい、あの血まみれの少女は誰なんだ?」

「気にせずに治療しろ、とにかく奴の怪我の容態がまずい」


 その時ジャックが連れて行かれた方向から悲鳴が聞こえる。

 サンダーとリッパー、入り口にいた男がそちらの方向を向く。


「なんやこの女!!!元気やないか!!!」

 ガシャンという音も聞こえる。


「こ、ここは何処だ!!」


 ジャックが興奮気味の声で言う。

 ジャックはベッドの上に立っていた。

「ニャー!!!(ジャック!!落ち着け!!)」

「俺らもいる!!」

 ジャックはサンダーが居る方向を向く。


「あ、リッパー……って、ここは何処なんだ!?」

「落ち着け、まずは治療を受けてから話そう」

 ジャックは少し落ち着きを取り戻し、手に持っていたナイフをしまった。


「………けど安心できない……怪我の治療くらい自分でできる」

「ニャー(まぁそう言わずにさ、怪我の容態も酷いんやから)」


 ジャックはまたもや目を虚ろにし始めた。

「嫌だ!!私はこんなところに居たくn………」


 ジャックは突然倒れた。ベッドに立っていたため、衝撃は少なそうだ。


「ニャー!!!!!(ジャック!!!!!)」

「ジャック!!!!!」

 ジャックはベッドの上で仰向けになっており、すやすやと眠っていた。あの状況から眠れるのが不思議だ。


「と、とりあえず治療を頼む。暴れだしたら………まぁなんとかしろ」

「先生のお願いならなんでもするっすけど」


「あぁ、ありがとう………リッパー、ジャックのそばにいてくれないか?俺は少し自分の店を片付けたい」

「ニャー(そりゃジャックの所にはいるけど)」


「先生!!ダメです!!あなたも治療を受けないと!!」


 他の医者のような人間が叫んだ。

「え?俺普通に立てるけど」

「ニャー(まぁお前も怪我の容態は酷いんやから治療受けようぜ)」

「………まぁ…そうするか」


 ジャックはベッドの上ですやすや眠り、サンダーは椅子に座って治療を受け始めた。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「スラクスが殺されただと!?」


 施設の中は混乱に満ちていた。


「けどジャックザリッパーの顔が判明しました!!今すぐ指名手配を!!」

「ダメだ!!奴が何かの罠に使うかもしれん!!しかも指名手配したところでだ!!」


 施設の中には様々な人間が出入りをしていた。ジャックの証拠を集める為に。

「もっと強い………もっと強い奴が居なければ………」



「俺がやってやる…」



 後ろから憎しみの籠った声がする。

「!?」


「俺が…あの糞野郎を殺してやるよ」



 後ろには眼帯をし、血まみれになった宵津が居た。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「………うぅ……うぅん……う?」


 ジャックはバサッという音を立てて布団から飛び起きた。

「イテッ!?」

「安静にしろ、動く必要もない。ここは安全だ」


 そう隣に座っていたサンダーが言う。


「あれ?私の左腕折れてなかった?」

「あぁ、お前の左腕は折れていた。なんなら肋骨も太ももの骨も折れていた。けどな、何故かもうくっついてるんだよ」

「わーお」


「お前の傷もここに来たくらいには全て塞がっていた。殆ど治療していない。唯一したのは服を着替えさせる程度だ。お前って化け物だな」

「で、ここはどこなの?」

「ここは俺の弟子が経営している病院だ。ここで働いている奴らは全員俺の身内だ。安心しろ、お前のことは秘密にしてもらっている」

「へぇ、案外知り合い多いんだね」


 ジャックは手元にあった布団を被り、布団の中で猫のように丸くなった。

「あぁ………あったかい……」

「……なぁ、一つお前に聞きたい事がある」

「ん?なーに?」


「………何故本気で戦わなかったんだ?お前の師匠からの話だけだが、お前が話通りの本気を出せるならアイツに負ける訳が無い」

「………」

 ジャックは布団の中で黙り込んだ。


「なんならお前が本気を出せば俺とスラクスが同時に襲って来たとしても勝っただろう?」

「………まぁそうだね、けど本気は出さない」

「何故だ?」

「さぁ、なんでだろうね」


 ジャックは布団の中でまた黙り込んだ。

「まぁお前がそう言うなら俺は何も聞かないでおく」

「ありがと」

 ジャックは布団の中で目を閉じる。


「けど一つだけ教えてあげる」


「何だ?」



「………私がその最大級の『本気』を出したら自分の命が危なくなる」



「………………わかった。お前を本気にさせることは無いようにする」

「おやすみ」


「おやすm………お前十五時間も寝た後だぞ!!起きろ!!!」


 しかしその言葉はジャックには届かなかった。

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