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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第二章サンダー
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第五話 サンダー

 ジャックは東地区と南地区の丁度中間辺りにある一つの建物に着いた。建物は大きくも小さくもない。外壁は白色で周りは森に囲まれていた。


「ニャー(ここがサンダーが連れ込まれた施設だ)」

 ジャックとリッパーはその建物の入り口前の道路に立っていた。周りに人は全く居ない。


「もう一回言うけど別にサンダーが死んでもいいんだけどね」

「ニャー?ニャー(けどもしかしたら俺らに関する情報を吐くかもしれないだろ?あと師匠が悲しむ)」

「………まぁ助けてやりますか」

 ジャックはその建物の敷地内に入った。警備員は何故か居なかった。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「………人が多いね」

 ジャックは体の小ささを活かし、狭い通気口から建物の中に入った。ジャックは頭が通れば殆どどんなところにも入れる。


 ジャックは通気口の網の部分から建物の中を覗いた。

 部屋の中は目が痛くなるほど白く、全方位に道が伸びている。四隅には色々な物が置いてあった。

「ニャー(あそこ、サンダーも居るぞ。もう既に睡眠薬か何か飲まされているようだが)」

 サンダーは手錠を腕に付けられており、何処かに運ばれていた。逆に言うと手錠一つしか付けられていない。


「今飛び出てもいいけどあそこにいる人間、確かプロテクターの人間よね?」

「ニャー………ニャ(あぁ、プロテクターの中でも実力上位に………名前忘れた)」

「私たち名前忘れすぎじゃない?」

「ニャー(知らんがな)」

 気の抜けた会話をジャックとリッパーはしていた。


「けどどうしようか…時にはバカになって突進する?」

「ニャー(やめておけ、敵の実力はまだ分かっていないんだ。今のお前なら死ぬかもしれん)」

「そうだよねぇ……あ、サンダー目を覚ましたよ!流石だね、こんな速さで目を覚ますなんて。私なんて一回寝たら八時間は起きないのに」

「ニャー(アイツだって元は師匠と戦っていた人間だ。そりゃそうさ)」

「あらら?サンダー結構暴れてるね………あれ?サンダー強くない?私の出る番が無くなっちゃうよ」

 サンダーは手を使わずに周りの警官を足だけで薙ぎ倒していった。


「………ニャー(………よしジャック、馬鹿になれ)」

「わ、わかった」

 ジャックは通気口の網を外し、部屋の中へと落ちていった。


「うわあああぁぁぁ!!!」

 警官の悲鳴が鳴り響いている。サンダーを捕らえるのに苦戦しているようだ。

「おお、残殺じゃねぇか、助けに来てくれたのか?」

「その呼び方をやめてくれたら助けるよ」

「すまんすまん。で、助けてくれないか?」

「………わかった」

 ジャックは不服そうに言った。


 周りの警官や人々は天井から落ちて来たジャックを黙って見つめていた。

「わ、わああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 その言葉と共に人間達が一斉に動き始めた。

「ジャックザリッパーだ!!奴を捕らえろ!!!」

「怯むな!!!俺らはジャックザリッパー捕獲部隊だ!!!気をしっかり保て!!!」

 ジャックは震えた手で銃を構えるJCU部隊に向かって言い放った。



「………それで大丈夫?」



 サンダーを囲んでいた人間達はサンダーの事を無視し、ジャックの方向に向かって銃を構えた。

「サンダー!そこの男の気を引いててくれない?」

「あぁ、分かったが俺手錠付けられてるんだぜ?」

 ジャックはサンダーの言葉を無視し、ナイフを握った。セイバーグリップだ。

 ジャックは右手に小型の盾を装着した。盾と言っても殆ど腕回りを守る程度の面積しかない。


「さぁ、ちょっとは楽しい勝負を望むよ」

 ジャックは飛んでくる数発の弾丸をナイフや盾を使って弾いた。

 殆どの人間はジャックによる恐怖で力が入らず、引き金が引けていない。引けたとしても的外れな方向に飛んで行っている。


 そしてサンダーが人間達から離れたタイミングで左手を前に伸ばし、水平五連ショットガンの引き金となるレバーを引いた。

 放たれたのはバックショット弾だった。弾丸は次々と周りにいた人間達を貫通しいていった。


 ジャックは反動によって後ろに一回転したがすぐに立ち上がり、左の腰から銃を引き抜いた。

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「うるさい。ちょっと黙ってて」

 ジャックは何とか生き残った人間達に銃を放っていった。放たれた弾丸は正確に頭や心臓などに当たっていった。


 しばらくして立っていた者は全員倒れた。

 ジャックはサンダーの店から持ち出していた火炎瓶を放り投げ、それに向かって銃を放った。

 火炎瓶は空中で銃弾を受けて割れ、倒れていた人間達に炎の雨を降り注がせた。

 しばらくして苦しんでいた人間の声はなくなった。


「………よし、おわり……と思ってたらまだいたね」

 ジャックは後ろにこそっと近づいていた警官の首を掻っ切り、その後両目にそれぞれナイフを刺した。

「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 後ろにいた警官は倒れた。


「ふぅ、サンダー、調子は………」


 サンダーは血まみれになって地面に倒れていた。


「………まだ死んではない」

 サンダーの隣に立っていた男が言う。

 ジャックは黙り込みながら敵の武装を見た。しかし敵は武器を持っていなかった。


「………ごめん、君の名前がさっきから気になるんだ。名前教えてくれない?」

 ジャックが男に質問する。


「………仲間が死にかけているのにその様子か………まさにサイコパスという奴だな………」

「サイコパスなんて人聞きが悪いなぁ、私だってサンダーが負けていることに驚いてるよ。まぁ仲間じゃないんだけどね」

「………私の名前はスラクス……見ての通りの筋肉ダルマだ」

「へぇ、身長差すごいね、身長は190くらい?」

「………203.8だ」

「へぇ、案外スッと言ってくれるんだね」

「結局のところ殺すか殺されるかだ。隠しても無駄というのはわかっている」

「潔いね、気に入ったよ」

 ジャックは後ろにこっそりと近づいてきていた警官の頭に向けてナイフをノールックで刺した。


「あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!1」

「こんなタイミングで出てこようとする君が悪い」

「………」

 スラクスは黙ったままその様子を見ていた。

「さぁ、そろそろ始めようか」

 ジャックが陽気に言う。

「あぁ、そうだな。殺してやる」

 スラクスがそれに応えるように言う。

「アハハ!殺されそうになったら逃げるよ」


 ジャックはそう言い、後ろへと逃げた。


⬜︎⬜︎⬜︎


「………うぅ……………」


「ニャー!!(起きろ!!)」


「………う…な、なにが………起こった?」


「ニャー!!!(意識をしっかり保て!!!)」

 サンダーは顔を血で濡らしながら地面に倒れていた。周りにいたジャックとスラクスは別の場所に移動した。


「ん………リッパーじゃない…か?……リッパーじゃないか!!!」


 サンダーはゆっくりと体を起こした。

「ニャー(よかった、まだ生きてたか)」

 サンダーは自分の額に手を当て、出血量を確認した。

「ニャー?ニャー(大丈夫か?救急箱だ。そこら辺にあった奴だが)」

「あぁ、ありがとう。ジャックは?」

「ニャー(あの筋肉ダルマの気を引くために移動した。まぁ奴がこっちに来ることはないだろう)」

 サンダーは救急箱を使い、出血している部分の止血をした。


「ニャー(で、ジャックは多分あの筋肉ダルマの討伐を俺らにまかせている)」

「考えることが分かるんだな、作戦はどうするんだ?」

「ニャー…ニャー(ジャックとは九年付き合ってきた仲だ。ジャックが考える事なんて手に取るようにわかる。じゃぁ作戦を伝えよう)」

 リッパーはサンダーに作戦について話した。



「なるほどな、俺は大丈夫だがお前の体の負担は大丈夫か?」

「ニャー(そんなの気にせん。ただジャックを助ける)」

「………イケメンだな、俺の武器は?」

「ニャー(こっちにある。着いて来い)」

リッパーはそう言い、走り出した。

 治療を終えたサンダーはリッパーの後を着いていった。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


(とりあえずサンダー達から離れないと………多分サンダーは生きてるはず!!」

 ジャックは施設の中を適当に走りながら建物の構造を頭の中に入れていった。

 そのついでにジャックは施設の中に細い糸のような物を張り巡らせていった。糸はどんどん絡まり、道を塞いでいった。


(あのサンダーが瞬殺されるなんて………!!)

 ジャックは出会う人間を切り裂きながら移動した。


「……逃げるとは思っていなかった」

 前からスラクスが現れ、そう言った。

「言ったじゃん。負けそうになったら逃げるって」


 ジャックは前に居るスラクスに向かって銃を一発撃った。スラクスは放たれた弾丸を握った。弾丸はスラクスの拳の中に納まった。普通は握ったところで銃弾を防ぐことはできない。


「アハハ、どういうこと?銃弾を弾く奴が居ても銃弾を握って止める奴は居なかった。その手の平鋼鉄か何かでできてる?」

「できてない」

 スラクスが問いに対し即答した。

「あぁ、そうよね」


 ジャックは左側に伸びる道へと走った。

(あぁ!あの筋肉ダルマの手の平どうなってんのよ!!)

 ジャックは着実に施設の形を頭の中に入れていった。


「……お前、出口は右側だぞ?」

 前からまたもやスラクスが現れる。

「あぁ、そりゃどーも」


 先回りしてくるスラクスを避けながらジャックは施設を駆け回る。

 ジャックは駆け回りながら水平五連ショットガンに弾を込めた。


 ジャックの通る道には殆ど糸が張り巡らされていた。

(よし、この建物の構造は大体把握した。多分これくらいのタイミングで……)


「おい、そろそろ止まったらどうだ?」

 前からスラクスが現れた。

「やっぱりこのタイミングで来るよね」

 ジャックはそう言い、立ち止まった。

「はぁ………やっと止まったか」

 スラクスが呆れ気味に言い放った。溜息と共に。


「アハハ、そろそろ息も苦しくなってきたし止まるよ」

 そうジャックは言うがジャックの息は全く乱れていない。


「君、私と出会ったのに随分と落ち着いてるね。他のプロテクターは命乞いする人もいたくらいだけど」

 ジャックが話しかける。


「………流石に自分から逃げる相手には怯えない。まぁそれでも少しくらいは恐怖を感じている」

「へぇ、プロテクターに入った経緯は?」

「………時間稼ぎでもしているのか?」

「だいせいかーい☆」

 ジャックがナイフをくるくる回しながら陽気に言う。


「………まぁいいか、プロテクターにはスカウトされて入った」

「ところでなんで銃弾を素手で受け止めることができたの?」

「………筋肉ダルマだからな」

「……それは理由になってるの?…まぁいいや、最後の質問……」

 ジャックは右手に大きな銃、S&W M500を握った。ジャックの小さな手の中には納まりきらないサイズだ。


 ジャックはそれをスラクスに向けながら言い放った。



「……殺される覚悟はできてる?」



 ジャックはスラクスに向かってS&W M500を一発撃った。

 スラクスは顔にむかって飛んできた弾丸を頭を捻り、避けた。目視ではなく、勘で避けているようだった。


「それは避けるんだね、流石に拳だけじゃ受け止めれないか」

 ジャックはS&W M500の反動を上に逃がしていた。そのためS&W M500の銃口が上に向いただけでジャックは反動によって倒れずに立っていた。


「もうお遊びは終わりだ、ジャックザリッパー。本気で戦おう」

「そうだね、じゃぁそろそろ始めようか」

 ジャックはスラクスを睨みつけ、スラクスもまたジャックを睨みつけていた。

「ニャー!(こっちだ!)」

 サンダーは腹を揺れさせながら走っていた。


「ニャー(ここの部屋だ)」

「ここか」

「ニャー(あぁここだ)」

 サンダーは扉を蹴破り、リッパーに案内された部屋に入った。


 そこはかなり広い武器庫だった。二階まである。

 サンダー達は比較的警備が甘い裏口から入って来た。ジャックが侵入してきており、警備どころじゃないこの施設にはもう人が殆ど居ないため裏口から入る必要はあまりない。強いて言うなら扉を壊しやすいくらいだ。


 リッパーは広い武器庫を走って目当てのものを見つけた。

「ニャー(お前はこの銃を持て。そしてこれを俺の腹に巻き付けろ)」

 リッパーがそう言ったのは一つの銃と犬用の装備のような物だった。


「あぁ………………こうでいいか?」

「ニャー(もっとキツくだ。すぐに外れたら困るものだからな)」

「わかった」

 サンダーはジャックに犬用の装備のようなものを着させた。六つほど何か装置が付いている。


「よし、これで大丈夫だろう。ところでこの銃は?」

「ニャー(お前ならわかるだろ)」

「あぁ、これは『トリプルアクションサンダー』だろ?」

「ニャー(あぁ、お前の名前にピッタリだろ?)」

「まぁな、なにせこの俺のコードネームはこの銃から来てるんだから。ところでお前この施設に詳しいな」

「ニャ、ニャー(ま、まぁな。短期的記憶力はいいからな)」

「ふぅ………よし、作戦を実行するぞ」

 サンダーとリッパーはその言葉を合図に動き始めた。

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