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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十三章 勝本と弟子
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勝本

 侵入計画。それはこの三か月間ずっと計画していたことだ。実行予定は今日から二か月後。しかし、その今日、とある事件が起きた。


 軍事施設の閉鎖。情報もなかった。サンダーも閉鎖が起きることを知らなかったらしい。彼はこの閉鎖事件が起こる数日前に、都市から離れた最西端の軍事基地に行った。

 イラトスにただ一人残される。もうサンダーにも頼ることはできない。どうせ前線の戦いに行かされたのだろう。まぁ、彼なら死なないという自信があったが。


 閉鎖された軍事施設。そこの情報をどれだけ集めようとしても全く無い。まるで、歴史からパッタリ消えたように。

 実際に見に行った方が早いが、そう簡単に決断も下せない。もしも罠だったら。もしも殺されたら。そんなことが脳裏に浮かぶ。自分が死ねば日神国の国力は落ちてしまうだろう。


 ドローンを飛ばすという発想もあったが、前回はそれで失敗している。さて、どうすればいいものか。一応日神国の特殊作戦軍にこのことは伝えたが、応援は来ないようだ。入国規制が強くなっているらしい。


 もしも頼れる者が居たら。そう思いつづk……



 ────日向勝本が居る



 日神国最強のスパイと言われた男。その男がもしも生きていたら。そして、協力してくれたら。

 生きているかどうかも不明な男に、私は頼ることにした。


 彼の情報。最後に『理解した』という不可解な文を残した。何を理解したのか、そして、それによって彼の何が変わったのか。わからない。何も、わからない。


 それから一か月間、私は勝本の捜索に尽力を注いだ。

 首都近くから情報をかき集め、最後に勝本が消えた日の防犯カメラデータをできるだけ集め、彼の痕跡こんせきを探した。

 しかし、流石は日神最強のスパイ。痕跡なんか残っちゃいない。

 まず、生きているのか。途中から死んだのではないかと感じた。


 しかし、ここで事態が急速に動く。何故かって? それは────



 ────勝本本人から手紙が来たからだよ。



 心臓がはち切れるかと思った。何故だ、何故住所がバレているんだ。何故私だと分かったのか。そして、いつこの手紙を送ったのか。

 様々な疑問が湧くが、とりあえずは手紙を読もう。動揺は禁物である。


「僕は生きている。話したいことがあるんだ。キミも知っている軍事基地の地下に来てほしい。」


 明らかに勝本の字であり、日神語で書かれた手紙。それも郵送で届いたものなのか、袋はボロボロだ。

 何故彼が今、私に手紙を送ったのか。そして、これは罠なのではないか。頭の容量が足りなくなるほど考えた。考えに考えた末に出た答え。それは、行くしかない。私にとっての師匠のような人物だ。罠だとしても、罠でもいい。ただ、彼に会えるのならばそれでいい。それだけだった。



 活動服を着て、武器を整える。高速度鋼こうそくどはがねを使用した西洋風の短剣を腰に付け、『Maxim 9』というサイレンサー一体型の銃器を隠し持つ。その他、大量に武器はあるが、説明は省く。


 そして午前二時。私は家を出た。

 前とは違う道を通り、軍事基地へと向かう。


 基地に着いたのは一時間も経たない頃。まずは周辺を周り、敵が居ないことを確認する。

 その後、ドローンを飛ばして基地の建物周りを散策。罠と敵が居ないことを確認して私は身を出した。


 不自然なほど人間が居ない大きな基地。土臭い匂いを放ちながら、その存在を隠している。

 鍵の開いている扉を開け、軍事基地の内部を歩く。コンクリートでできた地面が光を反射し、空間を照らす。まるで軍事基地とは思えない洋風の装飾だ。


 道を進み、道を進み、道を進む。入り組んだ要塞のような建物。その時、一つの異変に気づく。


「……焦げ臭い」


 焦げの匂いが近くからする。その匂いに導かれてゆくのは地下の核開発研究所。そこは勝本が来いと案内した場所。嫌な予感しかしない。まぁ、薄々予想はしていたことではある。


 私の足は止まらない。ただただ道を歩いてゆく。地下に続く階段を下り、呼吸を整える。


 そして、厳重に封印された扉を開けた瞬間。そこに広がる景色。


 ────空間一帯が破壊され尽くし、黒色の世界を作る。瓦礫が散乱し、元々ここに研究施設があったとは思えない。まるでクレーターのような空間が、直径五百メートルほどに及んでいる。


 あぁ、やっぱりか。そう思った。おそらく研究中に事故が起きたのだろう。


 しかし、いくつもの疑問が残る。

 この密閉された空間で爆発を起こしたのなら、それ相応の圧力も生まれたはずだ。それならば、上に乗っている建物が吹き飛んでもおかしくはない。

 他にも、何が原因なのかもわからない。



 ────そして、何故この場所に勝本が居るのかもわからない。

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